WRC2017/10/08

ミークがスペイン首位浮上、ヒュンダイは2台失う

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 世界ラリー選手権(WRC)第11戦のラリー・デ・エスパーニャは、土曜日のステージを終えてシトロエンのクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)が首位に立っており、セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が13秒差の2位につける展開となっている。

 ラリー・デ・エスパーニャは土曜日からの残り2日間はターマックステージで争われるため、ラリーカーは昨夜グラベル仕様からターマック仕様へとセッティングを変更され、この日の朝を迎えることになった。

 トップグループが走行を開始する頃からあちこちで降り始めた小雨がドライバーたちを驚かせることになったオープニングSSでは、ラリーリーダーとして二日目を迎えたアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)とオジエが大きくタイムを落とすなか、3位で二日目を迎えたミークがベストタイムを奪ってラリーリーダーに浮上することになった。

 ミークに一気に10秒以上も突き離されて、9.1秒差の2位となったオジエは穏やかではない。路面をわずかに濡らした雨の影響だけでなく、ターマックでのフィーリングについて彼は不満を述べたが、さらに深刻な表情を浮かべて首を横に振ることになったのはミケルセンだった。雨のなかで攻めきれずにここで12.9秒を失って3位へと後退することになった彼は、SS8になってもアンダーステアに苦しみ6位まで順位を落とすことになる。

 完全に優勝争いから脱落したミケルセンに対して、チームメイトたちは速さを取り戻しつつある。ダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)は、SS7でハンドリングに問題を抱えるオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)を抜いて4位へと浮上、さらにSS8ではオジエを抜いて3位へと順位を上げることになった。

 また、7位で二日目を迎えたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)もこの日の最初のステージでオフしてタイムを落としたマッズ・オストベルグを抜いて6位へと躍進、さらにSS8で2番手タイムを奪って5位に浮上、ペースの上がらないオジエに0.9秒差まで迫り、「やっとマシンへの感触を掴みつつある」と笑顔をみせることになった。

 だが、ステージ後のロードセクションでまさかの出来事がヌーヴィルを待っていた。油圧系に問題を抱えてマシンを止めたヌーヴィルは、どうにかエンジンを始動させてステージに急ぐもブレーキを踏んだ際に突然スピン、リヤを大きく壊すことになってしまう。彼は外れかけたi20のエアロの応急処置を行って次のSS9サバッラのスタートに辿り着いたものの、3分をロスしてしまい30秒のペナルティを課せられる。

 ヌーヴィルはリヤの空力バランスがおかしくなったマシンでどうにかこのステージを走りきったものの、10番手タイムにとどまったため8位まで後退、オジエを視角に捕らえたはずが、その差は40.3秒へと大きく広がり、がっくりと肩を落とすことになった。

 朝のループを終え、ミークが引き続き首位をキープ、オジエは相変わらずペースが上がらず、SS8でソルドに抜かれたあと、ここでもタナクに抜かれしまい4位に順位を落として朝のループを終えることになったが、選手権争いのライバルであるヌーヴィルが失速したことで、戦いはオジエ有利に傾くことになった。

 ヌーヴィルはサービスのあともタイトルへの望みをつなぐべくSS10でベストタイムを奪って反撃を開始、35.9秒差まで迫ったものの、オジエもSS11でベストタイムを取り返し、ライバルに付け入る隙を与えない。

 さらに続くSS12ではヒュンダイ勢にとってはまさかの出来事が待っていた。2位につけていたソルドが7.5km地点でクラッシュ、ステアリングを壊してリタイアとなり、さらにソルドと同じコンクリートブロックにヒットしたチームメイトのミケルセンもソルドの300m先でホイールを失ってストップ、ヒュンダイは2台をまったく同じ場所で同時に失うことになる。

 マニュファクチャラー選手権でもMスポーツに追い風が吹くなか、「やっと満足のいくセットアップが得られた」と笑顔をみせたオジエはSS12でも連続してベストタイム、さらにこの日最後となるサロウのストリートSSでも気合いの入った走りでベストタイムを奪い、5位にとどまるヌーヴィルとの差を40.2秒へと広げて二日目を終えることになった。

 ラリー・デ・エスパーニャの二日目を終えて首位はミーク、オジエに13秒の差をつけた彼はラリー・メキシコの勝利以来失った多くのものを取り返すべく、今季2勝目を狙って明日の最終日に挑むことになる。

 また、トランスミッションに問題を抱えて、サービスで交換を強いられたタナクも、残念ながらターマック仕様のスペアがないためにグラベル仕様で午後のループの走行を余儀なくされていたが、ソルドのリタイアに救われる形で3位をキープしてこの日を終えることになった。

 とはいえ2位のオジエとタナクとの差はわずか1.5秒。オジエは、「オットと僕のギャップは小さいので、僕は戦わなければならない。3位も悪い結果ではないだろうが、2位のほうがもっと良いからね」と明日もチームメイトとの対決に意気込みをみせた。しかし、タナクは「明日なにが可能かこれから検討することになる」と語って、この週末にもMスポーツがマニュファクチャラーズ選手権のタイトルに決める可能性がでてきただけにチームのために余計なバトルをここで打ち切る可能性を示唆した。
 
 また、ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が二日目のラリー続行を断念したあと、トヨタ期待のユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)は朝のループでSS8、9で連続してベストタイムを奪い、7位から4位まで順位を上げて土曜日をフィニッシュしている。

 最終日に残されたのはわずか74.26km/6SSのみだが、ノーサービスで走る一日となるためまだまだ何が起きるかわからないだろう。