WRC2017/07/30

ラトバラがストップ、ラッピが母国戦独走へ

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 2017年世界ラリー選手権(WRC)第9戦ラリー・フィンランドは、一度は首位に浮上したヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が突然マシンを止める波乱が発生、エサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)が後続に49.1秒差をつけて土曜日を終えている。

 曇り空となったラリー二日目の朝を迎えたユバスキュラ、昨夜雨が降り続いたため水たまりも残るオープニングステージ、SS14ピーラヤコスキ(14.90km)では金曜日を2位で終えたラトバラがトップタイムで発進することになった。

 ラトバラは初日、路面掃除のハンデを負ったとはいえ、若いラッピに8つのステージベストを奪われてラリーの主導権を握られることになったため心中穏やかではいられなかっただろう。初日と同様に、慎重なスタートを選んだラッピに対して彼はここでいきなり3.8秒差をつけるベストタイム、早くもラッピの0.6秒差に迫ることになった。さらにラトバラは続くSS15パイヤラ(22.68km)でも連続してベストタイム、あっという間にラッピを逆転して首位に立つことになった。

 勢いにのったラトバラはSS16オウニンポウヤ(24.38km)、SS17サーラーティ(4.21km)でもベストタイム、朝のループのすべてのステージを制して、ラッピとの差を7.8秒に広げることになった。「エサペッカがどんな走りをするか見守っていくけど、確実にいい午前中だった」とラトバラは余裕の表情だ。

 いっぽう、ラッピはリスクを負ってラトバラを追撃することはしないと宣言していたにもかかわらず、勇気と決意の大きさが試されるオウニンポウヤのステージで2.5秒を失ったと知って露骨に不機嫌な表情を見せることになった。

「ヤリ-マティがこのラリーに1度でも3度でも勝利していたとしても、それはどうでもいい、僕はただ彼より速く走りたいだけなんだ。彼は本当にいい仕事をしているのだろう。けれど、まだまだ勝負は終わってはいないよ」とラッピは午後のループを前に勝利をまったく諦めていない表情をみせることになった。
 
 また、速度制限のためSS16オウニンポウヤには5つのシケインが設置されたが、初日を3位で終えたテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)がそのうちの一つでミスしてオーバーシュート、引き返すことになったため20秒を失い4位に後退、金曜日のサスペンショントラブルで5位まで後退していたユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)が3位へと順位を上げることになり、朝のループを終えて、トヨタがホームイベントで1-2-3態勢を築くことになった。

 もしトヨタが1-2-3のまま明日の最終日にゴールを切れば、トヨタにとっては1993年のサファリ・ラリー以来の出来事となり、フィンランドでは同一マニュファクチャラーによる史上初の快挙となるはずだった。

 だが、2回目のループでまさかの事態が待っていた。朝のループとは異なる順で走る午後のループはSS18サーラーティからスタート、ここではラトバラが順調にベストタイムを刻み、そして2番手タイムのラッピとの差を8.5秒まで広げることになった。しかし、運命のオウニンポウヤの2回目となるSS19でラトバラが11km地点で突然スローダウン、前戦ラリー・ポーランドと同様に弱々しくエンジンが回るもののギヤも切り変えることができないような状態でそのままマシンストップ、怒り心頭のラトバラは両手をハンドルに叩きつけて悔しがる。

 マシンはマーシャルと観客によってコースの外へ押し出されたあと、ラトバラとミーカ・アンティラはリヤゲートを開けて必死になって問題を解決しようとするも白煙は上がるもののマシンは動こうとせず、諦めざるをえない。電気系のトラブル、あるいは燃料ポンプのトラブルとも言われているが、トヨタからの公式な発表はなされていない。
 
 ストップしたラトバラのマシンの横をすり抜けてステージをゴールしたラッピは、「止まっていたマシンのリヤウィンドウのナンバーを確認した。ラリーをリードしてこんなにガッカリした気持ちになったのは初めてだ。ヤリ-マティとチームのことを考えると、いたたまれない。僕たちはまだフィニッシュまで無事に辿りつかなければならない。プレッシャーのない状態でリズムを保つことは簡単ではないだろう」と無念の表情を浮かべることになった。
 
 ラッピはすでにこの時点で後続に54秒あまりのリードを築いていることから残り2つのステージでは大きくペースダウンして二日目も首位を守りきることになった。

 
 いっぽう、スニネンとハンニネンとの争いは3位争いから一転して2位争いとなり、SS21でベストタイムを奪ったスニネンがアンチロールバーに問題を抱えたハンニネンを逆転、2位に浮上して最終日を迎えることになった。さらに最終ステージではエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)がこのラリーで初めてベストタイムを奪ってハンニネンに襲いかかり、完全に表彰台を視界に捕らえることになる。
 
 これで首位から49.1秒遅れの2位にはスニネン、4.3秒差でハンニネン、さらに1.3秒差でエヴァンスとなり、2位グループは5.6秒に3人がひしめく大混戦で最終日を迎えることになった。
 
 初日を4位で終えて表彰台の可能性を残していたクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)は、SS15パイヤラでスピン、C3のリヤグリップに自信がもてなくなってしまい後退、エヴァンスからは22.2秒後方の5位となっている。
 
 柔らかすぎるサスペンションに不満を述べてきたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)はスリッパリーなステージではペースを上げられず、いまだ6位にとどまったままだ。

 パンクによって初日を10位で終えたオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)は土曜日、2つの2番手タイムもでているが、スピンやジャンクションのオーバーシュートも重なったために7位。クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)は、前日のステアリングトラブルが完全に直ってないマシンに苛立ちながらスタート、「まるでFRのような不安なマシンだ」と苦悩の表情を浮かべながらも耐えていたが、最後のステージで岩をヒット、右フロントを大きく壊して8位。マッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタWRC)はSS16オウニンポウヤで岩にヒットしてサスペンションとブレーキに問題を抱え、6位から11位まで後退することになった。

 歴戦のトップドライバーでさえ一瞬のミスですべてを失うスリリングなステージで、49秒というマージンを得たラッピが明日、はたして逃げ切るのか、それともさらなるドラマが起こるのか。もちろんトップ4の4人ともこれまでに表彰台の経験がないだけでなく、誰が勝ってもWRC初勝利となる。明日の最終日は4SS/33kmという短い一日となるものの、ふたたび雨となると天気予報は伝えており、まだまだどのようなドラマも起こりそうな状況だ。