WRC2022/06/29

横転したグリーンスミスをマーシャルが助けず

(c)M-Sport

 FIAは、先週末に行われたサファリ・ラリー・ケニアのSS8エレメンテイタ・ステージで起きたガス・グリーンスミスのクラッシュについて、現場のマーシャルが正しい手順を踏んでいなかったと判断した。

 フォード・プーマRally1を駆ったグリーンスミスは土曜日の最初のステージで、タイトな右コーナーでのフロントタイヤを轍にとられて横転してしまった。彼とコドライバーのヨナス・アンダーソンに怪我は無かったが、マシンは横倒しになっていたためドアを明けで外に出ることができなかったため、二人はフロントガラスを蹴破って脱出することになった。

 現地にはマーシャル数人がおり、手助けすればマシンを起こすことは可能でもあったようにも見えたが、彼らはマシンにさわることもなく、二人の脱出を手助けすることもしないで、ただ傍観していたという。

 マシンから這い出たグリーンスミスはこれに激怒、マーシャルに向かって「(手助けすることは)お前の仕事だ!」と怒りを露わに叫んでおり、この映像がネット上に公開されたことから、彼自身もまた批難されることになったが、彼はソーシャルメディアへの投稿でこれらの発言について釈明を行い、「僕とヨナスは3分以上車内に閉じ込められていたが、その間、セーフティマーシャルは撮影しているのみで、僕たちがマシンから脱出する手助けはなかった」と明らかにした。

 FIAはグリーンスミスらの訴えに基づいてこのアクシデントについて調査を行った結果、現場で正しい安全手順が守られていなかったと結論づけた。

 FIAは以下の通り声明を発表している。「サファリ・ラリー・ケニアのSS8で発生したカーナンバー44の事故を受け、イベントのセーフティチームは25日土曜日に、事故との状況とともに特にクルーの救助が遅れた状況について調査を実施した」

「その結果、今回の事故では、この種の事故を扱うための正しい手順が守られていなかったという結論に達した。朝8時30分にマシンは横転し、5Gの初期衝撃を記録し、横倒しになって停止した。クルーはこの事故で怪我は負わず、すぐにトラッキングシステムのOKボタンを押したが、ドアから車外に出ることができず、マーシャルの援助の無い状態でフロントガラスを外して車外に出た」

 クラッシュによる衝撃で高電圧のハイブリッドシステムが正常な表示でなかった可能性もあるとの指摘もあったが、FIAはマシンにはグリーンのランプが点灯しており、外部からその確認はできたはずだと認定した。

「SS8でのゼッケンナンバー44の事故では、ハイブリッドシステムが正常に作動し、マシンのグリーンライトを介して安全状態が表示されていたことが確認されている」

「FIAとサファリ・ラリー・ケニアの主催者はイベントに参加するすべての人の安全を第一に考えている。イベントのセーフティチームはすべてのセーフティマーシャルと連絡を取り合い、新時代のハイブリッドカーの安全の第一ルールである『グリーンライトを探す』ことを守る必要性を強化している」

「我々はこの件から学ぶ必要があり、全員が警戒を怠らずに『グリーンライトを探す』ことをしなければならない。マシンのフロントやサイドに表示されるグリーンライトは、マシンに触れても安全であることを意味し、マーシャルがマシンに近づき、必要に応じてクルーをサポートすることが可能だ」

「FIAは、すべてのWRCイベント主催者の支援と密接な協力のもと、新しいRally1ハイブリッドカーに接触するすべての人が安全にその仕事を行なえるよう、教材、概況説明、観客への啓発に尽力してきたが、今後も理解を深まるよう引き続き努力する必要があることを認識している」

「サファリ・ラリー・ケニアの主催者が、ラリーを楽しむために訪れるすべての人に安全な環境を確保するために、この問題に迅速に対処してくれたことに感謝したい」

 グリーンスミスはクラッシュ後、フロントガラスを失ったものの走行を続けたが、その後エンジンの冷却問題でリタイアした。

 彼はメカニックがマシンを修理するのを自身も手伝い、日曜日に再出走して最終的に16位でラリーを終えたが、パワーステージで2ポイントを獲得した。彼が世界ラリー選手権の最終ステージでボーナスポイントを獲得したのはこれが初めてだ。