WRC2022/12/24

【TOP10-第10位】クレイグ・ブリーン

「後半7戦で5回のクラッシュ」

(c)M-Sport

Craig Breen
M-Sport Ford World Rally Team

何年もパートタイムのドライバーを経て、クレイグ・ブリーンは2022年にやっとMスポーツ・フォードから世界ラリー選手権にフル参戦するというチャンスを掴むことになった。新シーズンが開幕するまでの半年近くをプーマRally1の開発に集中し、誰よりも長い時間をこの未知なるハイブリッドRally1カーのコクピットで過ごすことができたこともあり、まさしく飛躍のシーズンが彼には約束されていたかにも見えた。

ブリーンは、2022年のためにMスポーツに移籍する前からドヴェンバイ・ホールのことも、ここで生まれるラリーカーの特性も熟知していたはずだった。フィエスタR2を駆って2011年のWRCアカデミーでタイトルに輝き、そして2012年もフィエスタS2000を駆ってSWRC(現在のWRC2)のチャンピオンを獲得している。彼こそまさしくMスポーツ・フォードの申し子とも言える存在であり、チームとともにその成功を運命づけられていたかにも思われた。

開幕戦モンテカルロでは、すでに引退している二人のワールドチャンピオンに続いて3位を達成、タイトルを狙うドライバーのなかでは最上位でのフィニッシュを迎えた。悲願だった初勝利さえ、そう遠くないうちに狙えるようにも見えた素晴らしいシーズンのスタートだった。

しかし、スウェーデンではスノーバンクに何度もはまり、クロアチアでもオフとスピンで4位に終わり、ポルトガルでもパンクとコースオフで8位という振るわない結果に終わった。

サルディニア2位は、本来、得意としている高速のグラベルラウンドのエストニアとフィンランドでの巻き返しに向けていいきっかけになったかにも見えたが、いずれもクラッシュを喫してしまい、多くの実績をもっていたはずのイープルでも激しいアクシデントに見舞われてしまった。

エースドライバーとしてチームの期待に応えなければならないというプレッシャーはあっただろう。ペースを上げすぎたギリシャではパンクで5位に終わり、ニュージーランドでは、フアンガ・コーストのステージでかつてコリン・マクレーが落ちた同じコーナーで転落、最終戦のジャパンでもガードレールを突き破って崖下にマシンを落とすことになった。

もちろんこうしたトラブルのすべての責任がブリーンにあるわけではなかった。ブリーンが苦戦しているのはライバルよりもプーマの戦闘力が劣っているためではないかという疑念をもったチーム関係者もいたはずだ。だが、パートタイムのピエール-ルイ・ルーベがギリシャで一時的にせよラリーリーダーに立つことで、もはやチームとしては彼に代わるエースドライバーを探すしかなくなったのだろう。

ブリーンは来季、かつて飛躍のチャンスを掴んだ古巣のヒョンデに戻って、ふたたびハーフシーズンのプログラムで再起を誓う。

■クレイグ・ブリーン
生年月日:1990年2月2日(32歳)
選手権ランキング:7位
獲得ポイント:84点
ベストリザルト:2位
優勝回数:0回
2位の回数:1回
3位の回数:1回
表彰台回数:2回
出場回数:13回
ベストタイム回数:10回
リードしたステージの数:2SS
リタイア数:0回
リスタートの回数:8回
パワーステージ勝利数:1回
パワーステージ獲得ポイント:15点