WRC2017/12/29

【TOP10-第4位】ヤリ-マティ・ラトバラ

ヤリ-マティ・ラトバラの新天地トヨタでの2017年は、モンテカルロで2位、スウェーデンで勝利という、彼のキャリア史上もっとも素晴らしいスタートとなったが、そのあとのシーズンはけっして思い描いた結果ではなかっただろう。ニューマシン、ヤリスのたび重なるトラブルによってドライバーズ選手権では4位に終わることになったが、18年ぶりに世界選手権に帰ってきた新チームとともに、彼はこれまでにないほどたくましく成長したように見える。

■ヤリ-マティ・ラトバラ

開幕戦からみせたヤリスの速さは幸運にも支えられたのかもしれないが、多くのトラブルのなかで消えていったライバルたちにはない信頼性があったことはたしかだ。テスト制限のなかったトヨタはわずか10カ月で3万kmを超えるテストを敢行、なかでもラトバラがチームに加入して以降、最後の1カ月にわたる集中テストでヤリスは大きくその速さを手にしたと言えるだろう。とくにこのマシンを育てたスウェーデンの高速ステージ、そしてフィンランドでは敵なしのスピードをみせた。

欧州圏外での開発テストを行わなかったことによる試練はたしかにあった。ラトバラは、メキシコの高地やアルゼンチンではエンジンやブレーキのオーバーヒートの問題に見舞われてしまったが、酷暑へのチームの対処は早く、初の3台体制で臨んだサルディニアではいずれもが上位5番手のタイムを並べるなど速さをみせて、ラトバラは2位でフィニッシュ、今季3度目となるポディウムに立っている。

しかし、このサルディニアを最後に彼がシーズン表彰台に立てず、悔しそうに両手をハンドルに叩きつけるシーンを何度も目撃することになるとは想像もできないことだった。

ポーランドでもトランスミッションの問題からポディウムを失い、フィンランドでは母国ラウンドの勝利を確信していたところでECUの故障によってエンジンを止めている。ドイツでまたもミスファイアに見舞われて表彰台争いから大きく後退。スペインでもオイル漏れからエンジンにダメージを負ってリタイアとなってしまった。

いずれもポディウムを争う速さをみせながらこれでもかと不運が続くことになったが、ラトバラは昨年のフォルクスワーゲン時代にみせたように心が砕けることは最後までなかった。体調不良により脱水症状になりながらも医師の制止をも振り切って9位で完走したポルトガルを思い起こすまでもなく、彼は走ることへの執念をけっして最後まで失わなかったように思う。

ウェットコンディションにおけるヤリスのトラクション不足に悩まされることも多かったが、ラリーGBではセッティングの改善を図りながら果敢にポディウムにチャレンジ、土曜日のナイトステージではベストタイムを奪うことになった。ラトバラは最終日にセッティングのさらなる変更を行って臨んだがミスによって5位に終っている。しかし、ヤリスのハンドリングはたしかに向上しており、彼は最終ラウンドのオーストラリアでもウェットコンディションのなかで速さをみせることになった。

 ところが、2位で迎えた最終日、彼は来シーズンにむけて力強い手応えを感じたままラリーを締めくくるはずだったが、最終ステージでクラッシュ、マシンを止めることになった。後半戦でも何度もポディウムの可能性をみせながら、それを結果に結びつけることができなかった苛立ちもあっただろうが、弱点ともされたコンディションのなかで少しずつ思うままの速さを身につけはじめたヤリスの限界を試そうとしたのかもしれない。

かつてのラトバラは攻める必要のないステージでクラッシュするなど悪い癖もあったが、それらの暗黒の時期はすでに遠い過去のことだ。学びの一年だった2017年が終わり、ラトバラはトヨタとの2年目のシーズンではマニュファクチャラーズタイトルとドライバーズタイトルも狙っていきたいと宣言している。苦難を乗り越え、いまラトバラは明るい未来と悲願の王座を狙えるマシンを手にした確信に満ちて、これまでにないほどに闘志に燃えている。

生年月日:1985年4月3日(32歳)
選手権ランキング:4位
獲得ポイント:136点
ベストリザルト:1位
優勝回数:1回
2位の回数:2回
3位の回数:0回
表彰台回数:3回
出場回数:13回
ベストタイム回数:27回
リードしたステージの数:22SS
リタイア数:2回
ラリー2の回数:2回
パワーステージ勝利数:3回
パワーステージ獲得ポイント:27点