WRC2018/08/19

オジエまさかのパンク、タナクがドイツ連勝に王手

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 世界ラリー選手権(WRC)第9戦ラリー・ドイッチュランドは、土曜日のレグ2で2位につけていたセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)がパンクに見舞われ、首位のトヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が43.7秒という大きなアドバンテージを得て明日の最終日に2年連続勝利を賭けて挑むことになった。

 ラリー・ドイチェランドは土曜日、バウムホルダーの軍事演習地へと戦いの舞台を移したが、12.3秒をリードしてこの日を迎えたタナクとオジエは前日に続いてまさしく一歩も引かないバトルを繰り広げることになった。

 タナクはSS8アリーナ・パンツァープラッテ(9.43km)では後方からのスタートのために路面の汚れがあるために慎重にスタート、オジエに1.7秒を縮められている。しかし、タナクはSS9パンツァープラッテ(38.57km)ではヤリスのフロントフェンダーにダメージを負いながらもオジエを2.6秒引き離し、リードを13.2秒に拡大している。

 バウムホルダーのあと、戦いはザールランド郊外のハイスピード・ステージと舞台を変えたが、タナクはSS10フライゼン(14.78km)でオジエに0.7秒縮められたが、SS11ルーマーシュトラッセ(12.28km)でふたたび1.6秒を引き離して、朝のループを終えてリードを14.1秒に広げている。

「このステージではちょっと良くなるようにトライしてフィーリングは良くなった。今日の午後のメインの目標はもっと最適なバランスを見つけて、またいいループを走れるようにすることだ」とタナクは語った。

 いっぽう、オジエは朝のループで限界の走りでタイムを削ぎ落とそうとしたにもかかわらず、タイムを縮めるどころか1.8秒を失ってしまったため、すでに戦いの運命を受け入れたかのようにも見える。「トップタイムはいつもトヨタだ! 僕は本当にプッシュしている、前のステージは完璧だった。愚かなことだけはしないように可能な限り思いきりハードにプッシュしているが、ほとんど不可能かもしれない」

 緊迫感のある戦いを続ける二人に対して、3位のティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は朝からハンドリングに不満を抱えてペースが上がらない。パンツァープラッテを終えてオジエとの差は20秒へと広がり、早くも「正直言って(追いつく)チャンスはないよ。クルマが全然思うように機能してくれない。ハードなブレーキングはできないし、デフもおかしい。何かが正しく機能してないんだ」と苦悩の表情を浮かべている。

 SS10を終えてオジエから25秒遅れとなったヌーヴィルは、SS8でベストタイムを奪って後方から激しく迫ってきたヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)に対して朝のループを終えてわずか0.1秒差ながら3位を譲ることになり、さらに、SS9でベストタイムを奪ってペースを上げてきたダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)にも1.8秒差に迫られてしまった。

 だが、ヌーヴィルはボスタールゼーのデイサービスでデフとともにギヤボックスを昨日オイル漏れがあったために念のために取り外してチェックしたものへと交換したが、ペースアップの決定打を欠くことになり、ついにSS12アリーナ・パンツァープラッテでソルドに4位を譲って5位へと後退することになった。

 ヌーヴィルの失速によって、タナクとの白熱した戦いを続けてきたオジエにとっては、選手権リーダーのヌーヴィルとのポイントを縮めるまたとないチャンスが到来したかにも見えるが、続くSS13パンツァープラッテでまさかの事態が発生する。オジエはラリー最長のこのステージをスタートした直後に石をヒットしてパンク、残りが30km以上あるため彼はタイヤを交換を余儀なくされて、1分43秒を失って9位へと後退することになってしまった。

「パンクだ。いつもと同じラインなのに、どうして起きたか分からない。だが、そこに石があるかどうかはギャンブルのようなものだとしか言えないよ」と、ステージエンドで吐き出すように語ったオジエは、選手権争いにとっても痛恨の一撃になったことを覚悟したかのように引きつったような笑みをみせた。

 このステージでふたたびベストタイムを奪ったソルドがこれで2位へと浮上することになり、首位のタナクのリードは42.8秒という大きなものとなった。オジエのニュースを知ったタナクは、「僕らも前のステージでパンクしていた」と告白、スペアを使い果たしていた彼はオジエとの勝負が決したことに安堵したことだろう。タナクはこの日残されたステージではペースを押さえて着実な走りでフィニッシュ、43.7秒という大量リードでこの日を終えることになった。

「今日のセブとの戦いは凄かった。僕たちは本当に激しくプッシュした。最初のループはあまりフィーリングが心地よくなかった。セブのトラブルは本当に残念だった」と語り、彼は2年連続のドイツ勝利を確信したかのように余裕の笑みをみせた。

 2位はソルドが守り切ったが、3位のラトバラも最終ステージでこの日2つめのベストタイムを奪ってわずか0.8秒差に迫っており、まだまだ二人のバトルは行方は見えない。

 ラトバラの8秒後方には4位のヌーヴィルが続いているが、バウムホルダーの汚れた路面では苦戦したエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)が、クリーンな路面だったSS10フライツェンのステージではベストタイムを獲得してヌーヴィルの後方6.3秒に迫っている。

 また、ラッピの後方にはSS11ルーマーシュトラッセでベストタイムを奪ったクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)が僅差で迫っていたが、彼はベストタイムを奪った2回目のルーマーシュトラッセの走行でコースオフを喫して6位から9位へと後退してしまった。

 また、SS13パンツァープラッテのパンクで9位まで後退したオジエは、意地をみせるようにSS14フライツェンでベストタイム、さらにSS15ルーマーシュトラッセでも3番手タイムを並べ、6位のアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)の0.5秒後方の7位へと順位を上げている。

 また、4位でこの日をスタートしたエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)は朝からライバルたちのスピードに追いつくことができずに苦戦、SS9で7位まで後退したあと、SS10でコースオフ、サスペンションを壊してリタイアとなっている。

 最終日はグラーフシャフト(29.07km)のブドウ畑のステージから始まる3SS/ 72.18kmという一日となる。はたしてタナクがこのまま逃げ切ることができるのか、それとも波乱のドラマが待ち受けるのか。オープニングSSは現地時間7時49分(日本時間14時49分)のスタートが予定されている。