WRC2022/09/14

オリンピック・スタジアムのSSに6万4500人が興奮

(c)Acropolis Rally

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 先週末のアクロポリス・ラリー・ギリシャの最大のニュースは、なんといってもヒョンデ・モータースポーツが参戦以来初となる1-2-3ポディウムを達成したことだろう。しかし、初日の夜に6万4500人のファンが見守ったアテネ・オリンピックスタジアムのスーパーSSの興奮は誰が忘れられないハイライトとして記憶に残るものとなっただろう。

 アテネ・オリンピックスタジアムは、2004年にギリシャで開催されたオリンピックのメイン競技場であり、収容人数は最大で7万5000人の規模を誇る巨大スタジアムだ。

 このスタジアムはギリシャ政府の所有となるが、ふだんはギリシャの2つのFCチームのホームスタジアムとなっており、天然芝のサッカーコートの周囲を5レーンの陸上トラックがレイアウトされているが、多目的ホールとしてさまざまなイベントに活用できるよう設計されていると説明されている。

 アクロポリス・ラリーではオリンピック翌年の2005年からこのスタジアムでスーパーSSが開催されているが、今年、16年ぶりにアクロポリスのルートがオリンピックスタジアムに戻ることになった。クロスオーバージャンプを含むタイトでツイスティなこのスーパーSSのコースをスタジアム内にレイアウトするのは、かなり大がかりな土木工事にも等しい手がかかる作業が必要だった。

 スタジアム全域に養生のシートを張り巡らせたあと、約 1000 立方メートルのグラベルがコースに搬入されて重機で踏み固められる。この時点ではまるでグラベルのコースを造成するかのような作業が続いていたが、このあと1万平方メートルのベニヤ板が敷き詰められ、コンクリートブロックを全長1kmにわたって設置して2台併走する1.95kmのコースを形づくったあと、最終的にコース表面には500馬力を超えるラリーカーの走行にも耐えられるように強化アスファルトが敷かれてコースは完成となる。また、クロスオーバーの橋が120トンもの頑丈な鉄骨を使用して建造されていることはあまり知られていないだろう。作業は10日間にわたって24時間体制で行われたという。

 ラリーカーを声援するオリンピックスタジアムを埋め尽くした6万4500人の歓声はそれだけでも驚くべきものがあるが、サンティアゴ・カラトラヴァ・ヴァイスが設計したスタジアムの大屋根によってまるで地響きのようにスタジアム全体に響きわたっていた。

 スタジアムでのスタートセレモニーとスーパーSSの映像は世界150カ国、約5000万人のテレビ視聴者に生中継されたが、キリアコス・ミツォタキス首相による開幕宣言とスタートフラッグ、そしてスポーツ・文化省のレフテリス・アヴゲナキス副大臣や自治体の代表、あるいは国を代表するアスリートが次々よフラッグをふり下ろす姿は、世界中のラリーファンに向けてギリシャが国を挙げて世界ラリー選手権をスポーツ行事として歓迎していることを強烈なメッセージとして伝えることになっただろう。

 アクロポリス・ラリーの主催者は、このオリンピックスタジアムでのスーパーSSを制し、最終的にラリーで勝利を飾ることになったヒョンデ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィルのコメントを紹介している。

「観客も雰囲気も最高だよ。僕たちのために、そしてここに来てくれた観客のために、このような舞台を設けてくれたオーガナイザーに感謝している。オリンピック・スタジアムでのスーパーSSは、WRCにこれほど多くの観客を集めることが可能であることを証明してくれた。他のイベントでもこうした努力をすべきだろう」