ERC2016/07/18

シルマチスがエストニア逆転優勝、今季ERC 2勝目

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権第6戦ラリー・エストニアは、2年連続勝利がほぼ確実と見られていたアレクセイ・ルクヤヌク(フォード・フィエスタR5)は終盤にリタイアする波乱のなか、22歳のラルフス・シルマチス(シュコダ・ファビアR5)が逆転優勝を飾る波乱の幕切れとなった。

 ラリー・エストニアの最終日は6SS/82.26kmという一日、圧倒的な速さで初日を制して20.1秒のマージンを築いたルクヤヌクは、2年連続勝利にむけてこの日のオープニングステージでも揺るぎのない走りでベストタイムを奪って発進した。いっぽう、2位で初日を終えたシルマチスも、「もしプッシュし続けたら優勝できるチャンスはあるはずだ」と語って最終日をスタート。しかし、SS11のジャンプの着地のあと右リヤタイヤをバンクにヒットする不安なスタートとなってしまった。

 幸い大きなダメージはなかったものの、シルマチスはサスペンションに違和感を感じてペースも上がらない。SS12では彼は小さなミスを重ね、2つのステージを終えて4.1秒をロス、さらにSS13ではクラッシュしたマシンを見たことでリズムをなくして3.7秒をロス、朝のループを終えてルクヤヌクからは27.9秒遅れとなってしまった。

 朝の3ステージで連続ベストタイムで駆け抜けたルクヤヌクは、最後のループでも揺るぎない速さを見せつける。彼はSS13、14と連続してベストタイム、リードを28.2秒へと広げ、「ラルフスはとても速いが、僕はもうリスクを負ってはいない。ここもノーミスだったよ」と優勝への自信をみせる。

 だが、わずか2つのステージを残して、それまで完璧だったルクヤヌクのラリーは突然終わることになる。SS15をスタートして9km地点で彼はクラッシュしてホイールを失い、ここでマシンを止めることになってしまった。

「ジャンプの着地でステアリングアームが耐えきれなかったので僕らはコントロールを失ってしまったんだ。僕らはインカットすることはなかったし、ラインもよかった。けれど、たぶん運が悪かったのだろう。ドライビングもふつうだった。カフェに座っているように冷静だったし、クレイジーになって攻めてなんていなかったんだ」

 思ってもみない形で首位に立ったシルマチスは、ライバルが消えた最終ステージをトップタイムで駆け抜け、アクロポリス・ラリーに続く、今季ERC2勝目を飾ることになった。

「信じられないよ。アレクセイは残念だ。しかし、僕はバトルして彼に勝ちたかったよ」とシルマチスは語った。彼は昨年のエストニアではジュニア優勝を飾っており、総合優勝を飾ったルクヤヌクが憧れの存在だと語っていた。

「僕らはこの高速ステージでこのマシンの経験は少ないし、けっして最速ではなかったが、来年はもっと速く走ることができるはずだよ!」

 シルマチスから1分34.5秒差の2位表彰台に立ったのは、選手権リーダーのカイエタン・カイエタノビッチ(フォード・フィエスタR5)。彼は初日、パワーステアリングのトラブルなどで1分30秒近い遅れを喫して優勝争いからは完全に脱落したものの、最終日はトラブルフリーの走りで貴重なポイントを手にしてリードをさらに広げることになった。

 最終ループで駆動系に問題を抱えながらも、どうにか3位でフィニッシュしたのは地元のライナー・アウス(三菱ランサーエボリューションIX)。彼はSS14で岩を巻き込んだあとでリヤの駆動を失ってしまいタイムを大きく落とすことになってしまう。後続のラウル・イェーツ(シュコダ・ファビアR5)に対して1分50秒のマージンがあったものの、アウスはみるみるこの差を縮められることになったが、どうにか18.6秒差で逃げ切ることに成功、総合3位の表彰台とともにERC2優勝を飾ることになった。

 ポーランドのヤロスラフ・カウトン(フォード・フィエスタR5)が自己ベストとなる5位でフィニッシュ、ポーランド・チャンピオンのウーカシュ・ハバイ(フォード・フィエスタR5)が初のエストニアで6位でゴールしている。

 また、トミ・マキネン・レーシングのフォード・フィエスタR5で出場していた新井大輝と勝田貴元はともに初日に横転のためリタイアとなっていたが、勝田だけが最終日にリスタートすることになった。しかし、彼は最終日のオープニングステージでまたもや横転を喫してしまい完走はならなかった。

 ERCジュニアは、2位につけていたラトビアのニコライ・グリアジン(プジョー208 R2)がSS13のクラッシュでリタイアしたあとは、地元のミコ-オヴェ・ニーンマエ(プジョー208 R2)の独走状態となり、彼が初優勝を飾ることになった。選手権リーダーのクリス・イングラム(オペル・アダムR2)はトップ10がリバースでスタートする最終日を2輪駆動マシンで一番手でスタートする不運もあって、チームメイトのマリヤン・グリーベル(オペル・アダムR2)に抜かれて2位を譲ることになってしまった。