WRC2023/05/15

ヌーヴィル、タイムカード未提出もリタイア免れる

(c)Hyundai

 ティエリー・ヌーヴィルとマルティン・ウィダーゲは、ラリー・デ・ポルトガルの最終日にタイムコントロールでタイムカードを提出していなかったことが発覚、最終順位から除外され、10ポイントを失う可能性もあったが、スチュワードはターボトラブルによる混乱状況などいくつかの要素を考慮し、10,000ユーロ(およそ150万円)の罰金にとどめる裁定を下している。

 ヌーヴィルは3位で迎えた最終日、オープニングステージでターボの不調に見舞われてしまい5位までポジションダウン、けっきょくターボが壊れたまま日曜日の4ステージを走り切らなければならなかった。

 ウィダーゲがタイムカードを提出しないままでその場を走り去ってしまうという問題が発生したのは、ターボの問題が深刻化していたファフェ・ステージの1回目の走行となるSS17のフライングフィニッシュのあとのストップコントロールのことだ。

 通常、タイムコントロールでタイムカードを提出せずにタイムなどが記載されなかった場合、競技規則第19条3.3項に基づいてクラーク・オブ・コースはそのクルーをこのコントロールでリタイアとみなして報告することができる。しかし、クラーク・オブ・コースは、ウィダーゲがタイムカードを提出したと主張したため、この規則の適用を行わず、スチュワードに裁定を求めている。

 スチュワードはラリーのゴール後にクルーとともにヒョンデの責任者をスチュワードミーティングに召喚、ウィダーゲは聴き取り調査において、この日の朝から技術的な問題が発生していたため、続行が困難になる可能性もある重圧があったため、急いでダッシュボードの警告の状況などを写真に撮影してエンジニアに送らなければならなかったと説明、ストップエリアでヌーヴィルがすぐにインタビューを切り上げて走り去ったこともあり、「この混乱のさなかでタイムカードを提出したと勘違いしていた」と報告している。

 ウィダーゲは、イベント中に行う標準的な作業のひとつであるストップコントロールでタイムカードを提出していないことに気づかず、次のコントロールでタイムカードを提出したことは間違いないと発言したことは自身の誤りであり失態だったとスチュワードに謝罪している。

 スチュワードは、ウィダーゲの詳細な説明からクルーがおかれていた困難な状況からストップコントロールでタイムを記載する時間がなかったと判断、また近年COVID-19の注意事項でタイムカードの受け渡しの手続きが免除されてきたこと、手続きを正しく行わなかったことがラリーコントロールの正しい運営に影響を与えないことなどのいくつかの要素を考慮し、ヌーヴィルを最終順位から除外することもできたが、1万ユーロの罰金を課すことにとどめ、ヌーヴィルとウィダーゲに連帯して支払うよう求めている。

 また、チームメイトのダニエル・ソルドもラリーの表彰式で定められたキャップをかぶっていなかったとして1000ユーロの罰金を科されている。

 2位でフィニッシュしたソルドは、パワーステージ後の表彰台でWRCプロモーターが用意したピレリ・キャップの代わりに、パーソナルスポンサーであるレッドブルのキャップを着用していた。

 ソルドは総合表彰式ではなくこの暫定表彰式で自分のキャップを着用できないことを知らなかったと述べたが、FIAが定めたWRCスポーティングレギュレーションのAppendix IV-1.15条に違反したとして1000ユーロの罰金を科している。

 また、スチュワードは今回の件で、2023年シーズン終了まで続く、15,000ユーロという執行猶予付きではあるが高額な罰金をヒョンデに言い渡している。これは、2021年ラリー・デ・エスパーニャにおいて、当時ヒョンデのドライバーだったオイット・タナクが、意図的にピレリ・キャップをかぶらなかったとして1,000ユーロの罰金を科されたという前例があったためだ。