WRC2018/05/21

ヌーヴィルがポルトガルで優勝、選手権首位へ

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 2018年世界ラリー選手権(WRC)の第6戦ラリー・デ・ポルトガルは20日に最終日を迎え、ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が初日からのリードを守り抜いて、第2戦スウェーデンに次ぐ今季2勝目を飾った。2位にはMスポーツ・フォード・ワールドラリーチームのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)が続いた。エヴァンスのチームメイト、テーム・スニネンが3位を獲得。WRカーでの参戦6戦目にして、見事、初めての表彰台を獲得した。

 ポルトガルの最終日は5つのSSで争われるが、いずれもショートステージで合計は51.53kmと、わずかな距離しか残されていない。モンティム(8.64km)、ファフェ(11.18km)、ルイアス(11.89km)と3つのステージを走った後、モンティムとファフェをリピートする。ファフェは大きなジャンプがあり、10万人を超す観客が集まるというラリー・デ・ポルトガルの中で最も有名なステージだ。ファフェの2走目が最終のパワーステージとなる。

 ヌーヴィルは39.8秒のリードを築いて、この最終日を迎えており、残された距離からすれば、大差とも言える十分なマージンだ。天候は晴れだが、にわか雨の予報も。全ドライバーがソフトタイヤ5本を選択するなか、ヌーヴィルのみがさらに手堅くソフト6本を搭載して出発した。

 この日最初のステージのSS16モンティムではエヴァンスがヌーヴィルをわずか0.8秒上回るも、ヌーヴィルはすでにパワーステージに照準を合わせている。残されたステージはいずれも短距離なことから、エヴァンスもSS17ファフェ以降は安全なドライビングに徹することになった。

 ヌーヴィルとエヴァンスの2人に大きな差がつくことはない。ヌーヴィルは最終パワーステージで2番手タイムを叩き出し、2位のエヴァンスに40秒もの差つけて今季2勝目を獲得した。ポルトガルで過去5回優勝しているセバスチャン・オジエですらデイリタイアするなど、初日からコースの餌食となってリタイアするドライバーが続出したなかで、ほとんどミスを犯すことなくスマートな走りができたことがヌーヴィルの優勝に繋がった。

 ステージを走り終えたヌーヴィルは、TVカメラの前で「僕らはスマートなアプローチができた。車は素晴らしくて、快適だった。チームが僕らをプッシュしてくれた。チームメイトもとても強かったが、不運があった。ヒュンダイにとって完璧な週末とはならなかったが、それでも僕らは今週末の成果を誇りに思うことができるだろう。パワーステージのチャンスはあるかもしれないと思ったが、タイヤの状態が悪かった。それでも2本のスペアがあったので、ミスをせず、トライしてみようと思った。それがよかった」と語った。

 2位のエヴァンスにとっては、今シーズン初めての表彰台となる。今季はなかなか運に恵まれないでいたが、終始堅実な走りを披露して、2位をもぎ取った。エヴァンスは「ありがとう。ようやくだよ。今季は良いスタートではなかったが、これが今後良いことがもっと起こる兆しであることを願う!」と喜びの声をあらわにした。

 トップの2人がマージンを築いているなか、ポディウムの残された3位の座を巡っては、スニネン、エサペッカ・ラッピ、ダニ・ソルドの3人が激しい争いを続けていた。迫り来る若手スニネンに対して、ベテランのソルドが4.7秒差をつけて2日目を終えていたが、その後、初日のSS8ポルト・スーパーSSでソルドがシケインに接触していたことが判明。10秒のタイムペナルティを科され、3位スニネン、5.3秒差の4位にソルド、さらに5.8秒差でラッピが続くかたちで最終日をスタート。

 オット・タナク、ヤリ-マティ・ラトバラの2人が初日にリタイアとなっていたため、トヨタで唯一生き残っているラッピは、最終日も激しくプッシュ。最初のSS16ではトップタイムを奪った。さらに、スニネンもその0.6秒差で2番手タイムを叩き出す。いっぽうのソルドはスリッパリーなステージに手を焼き、ラッピより6.2秒遅いタイムにとどまる。その結果、ラッピの後方5番手に順位を落としてしまった。しかし、次のステージではラッピを上回って再び4位に。しかし、差はわずか0.7秒。続くSS18、19ではラッピがソルドを上回り、4位の座を奪い返した。

 さらに、3位につけるスニネンはSS19でベストタイムを出すなど、わずか6戦目とは思えない渾身の走りで最後まで3位を守り切った。スニネンは「ありがとう!最高の気分だ。僕のWRC初表彰台だ。1年かかったが、本当にハッピーだよ!」と歓喜のコメント。

 ラッピがパワーステージでトップタイムを叩き出して4位を獲得。表彰台は逃したものの、「正直に言って、素晴らしい2日間だった。こんなに激しくプッシュしたのは初めてだ!限界ギリギリで1日半の間ドライブしたことで、多くのことを学べたよ!」と激しく争うことができ、悔いはない様子だ。

 ソルドはSS19で飛び石によりフロントガラスを破損。金曜の午前中は首位につけていたが、表彰台を逃してのフィニッシュとなった。「フロントガラスが完全に壊れていたのでいくつかのコーナーでは見づらかった。表彰台でフィニッシュできなくて残念だが、皆のためにやり切った」と語った。

 6位にはマッズ・オストベルグ、7位にはクレイグ・ブリーンが入り、2台のシトロエンC3 WRCが続くことになった。8位以下はWRC2勢となり、このラリーがいかにサバイバル戦であったことを物語っている。

 優勝したヌーヴィルは、パワーステージで4ポイントを獲得したことで、選手権に合計29ポイントを計上。選手権リーダーだったオジエはパワーステージでのポイント獲得を狙うも、走行順の早さから8番手タイムに終わり、痛恨のノーポイントとなってしまった。その結果、選手権ではオジエに19ポイント差をつけて、ヌーヴィルが首位に立つことになった。

 WRCの次戦は、6月7日〜10日に開催されるラリー・イタリア・サルディニア。地中海に浮かぶサルディニア島での開催となる。サルディニアでは大量のルーズグラベルが予想されるため、次戦で先頭出走となるヌーヴィルと、選手権2位のオジエの争いにも注目したい。