WRC2018/09/19

ベルクヴィスト、ジュニアWRCタイトルを獲得

(c)M-Sport

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 スウェーデンのエミル・ベルクヴィストが先週末にラリー・トルコと併催されたFIAジュニアWRC選手権最終戦でドラマチックな優勝を飾り、選手権タイトルを獲得することになった。

 Mスポーツ製のフォード・フィエスタR2とピレリ・タイヤのワンメイクで争われる2018年のジュニアWRCは、2月の雪のラリー・スウェーデンで開幕したあと、ターマックのツール・ド・コルス、スタンダードなグラベルをもつラリー・デ・ポルトガル、高速ステージが特徴的なラリー・フィンランドを戦い、このラリー・トルコが最終ラウンドとなる。

 いつもの2倍のポイントが付与される重要な一戦となるラリー・トルコは、想像以上にラフなコンディションでエントラントたちを待ち受けており、いくつもの波乱が起きることになった。

 木曜日夜のストリートステージでラリーをリードしたのは、フランスのジャン-バティスト・フランセスキ。しかし、金曜日になって本格的なグラベルステージに舞台を移すや、ドイツのユリウス・タンナートがラリーをリード、これをスウェーデンとポルトガルの2勝を飾っているスウェーデン出身のデニス・ロドストロームが激しく追い上げる戦いとなった。

 しかし、王者本命の1人に目されていたロドストロームは38kmというラリー最長のチェティベッリでダブルパンク、6分20秒あまりを失って表彰台圏外の6位へと消えることになってしまう。フランセスキも同じステージでドライブシャフト破損のためにリタイアとなってしまった。

 初日を終えてタンナートがトップ、7.9秒差の2位にフィンランドで優勝を飾ったケン・トルンが浮上、これまでの4戦を終えて一度も勝利はなかったものの、2度の2位を含む3度の表彰台で手堅く選手権をリードしてきたベルクヴィストがここでも堅実な走りで3位につけることになった。

 トップカテゴリーでも大きな波乱が続出した土曜日、ジュニアWRCもドラマが起きることになった。それまでラリーをリードしたタンナートがSS10イチメレルで横転、3位に後退したあとさらに3度のパンクによって7位でこの日を終えることになった。

 タンナートが上位戦線から去ったあとトルンがトップに立つことになったが、この日の最終ステージで他のドライバーが巻き上げたダストによって失速、初日を3位で終えたベルクヴィストがトルンを4.7秒差でリードして最終日を迎えることになった。

 しかし、スチュワードはトルンが不可抗力によって30秒のタイムロスがあったことを認め、彼の最終ステージのタイムを救済、一転してトルンがベルクヴィストに対して25.3秒という大量リードで最終日はスタートすることになった。

 だが、4SS/34.98kmという短い日曜日にも罠が潜んでおり、圧倒的なリードを手にしたはずのトルンは、スタートして2つめのSS15オワジュックの高速右コーナーでオーバーシュートしてオフ、観客の手を借りて28分かかってやっとコースに戻ったが、彼はオイル漏れが原因となってリタイアとなってしまった。

 タイトル獲得に照準を遭わせていたベルクヴィストは、最終日も大きくペースを上げずに慎重なペースでポジションキープに集中していたが、思ってもみなかった劇的な勝利でシリーズ王者に輝くことになった。

 歓喜のポディウムに立ったベルクヴィストは、来シーズンのWRC2選手権にフィエスタR5で参戦するためのビッグチャンスを手にしたことを実感することに苦労していると明かしている。

「言葉にならない、もう興奮が収まらない。本当に信じられないくらい素晴らしいことばかりで、僕にこれを実現させてくれたみんなにありがとうと言いたい。R5が僕のものになったなんてまだちょっと現実に思えないし、今夜、こうして起こっていることを想像して受け止めていくのに少し時間がかかるかもしれない」

 同じスウェーデン出身のロドストロームは初日のダブルパンクで6位に落ちた後、首位から4分遅れの2位へと挽回してフィニッシュ、選手権でも18ポイント差の2位に入っている。

 表彰台最後一角には、そのさらに4分後方のエミリオ・フェルナンデスが上ることになった。4位にはカルム・ディヴァイン、そして5位がブグラ・バナツ、6位トム・ウィリアムズとなっている。

 過酷なグラベル道と厳しい暑さは、多くの若手ドライバーたちにダメージを与えてきたが、フランセスキも最終の1つ前のステージで横転してリタイアとなり、選手権総合3位でシーズンを終えている。

 相次ぐトラブルで勝利のチャンスを失ったタンナートは、最終日もドライブシャフトの破損によりリタイア、ルーマニアのラウル・バディウは、ジュニアWRCデビュー戦を横転で終えるという悔しい結末を迎えることとなった。