WRC2018/05/20

ポルトガルDAY2、ヌーヴィルがリードを39秒に拡大

(c)Hyundai

(c)M-Sport

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 FIA世界ラリー選手権(WRC)第6戦ラリー・デ・ポルトガルは、デイ2を終えてヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)ががっちりと首位をキープ、2位につけるMスポーツ・フォード・ワールドラリーチームのエルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)に対してリードを39.8秒へと広げている。

 昨日のラフなステージから一転、マラオ地域で行われるこの日のオープニングの2つのステージはスムースな路面となった。ヌーヴィルはオープニングステージのSS10ヴィエイラ・ド・ミーニョ(17.50km)では2番手タイムでエヴァンスとの差を18.6秒差へと広げてみせた。だが、続くSS11カベセイラス・デ・バスト(22.22km)ではエヴァンスがこの週末で初のベストタイムを奪って、その差を12.7秒へと縮めることに成功する。しかし、彼の背後からはダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)も2番手タイムを奪って11.6秒差に迫っている。

 エヴァンスにはポジションを守るためにはここが正念場だという気迫が漲る。「オープニングSSはかなり滑ったが、ここではいい走りだった、ドライビングを楽しめたしクルマの状態はすべて良い」

 いっぽう、ヌーヴィルはここでは慎重なペースだったことを認めたが、続くラリー最長となるSS12アマランテ(37.60km)にむけてタイヤを温存しなければならなかったと説明した。「ちょっとタイヤに慎重になり過ぎた。かなり摩耗が激しいし、次のステージのために必要だからね」

 そしてSS12ではヌーヴィルが予告どおりに驚異的な速さをみせて、エヴァンスを17.2秒も突き放す圧巻のベストタイム、リードを29.9秒へと広げてみせた。「全然トラクションを得られなかった」と首を横にふったエヴァンスの5秒後方にはソルドが迫ってきた。

 マトジニョスのデイサービスではこの日もドライバーたちはタイヤチョイスをめぐって頭を悩ませることになった。午後には通り雨が降るとの天気予報がある。ステージは2回目の走行のため荒れていることが予想されるが、ハードタイヤを選べば濡れた路面ではきびしい選択となるからだ。ヌーヴィルとソルドはソフトを主体にソフト4本とハード2本をチョイス、エヴァンスはハード3本とソフト2本というハードを中心とした組み合わせを選択してステージに向かう。

 サービスパークは気持ちの良い晴天だが、ステージエンドには黒い雲がかかり、雨がぽつぽつ降り始めているが、まだ路面を湿らせるほどではないため、ハードを選んだエヴァンスに軍配が上がることになる。ベストタイムを奪ったエヴァンスは、ヌーヴィルとの差を6.3秒縮め、二人の差は23.6秒となった。

 ソフトを選んだヌーヴィルは、「ここはかなりラフだったし、ブレーキングのときにタイヤに気をつかわなければならなかった。ハードタイヤにしたほうが良かったのかどうかはまだ分からない」と語り、エヴァンスにタイムを縮められたことへのプレッシャーを感じてないようだった。

 このまま雨が降らなければエヴァンスのさらなる逆襲は可能となるはずだったが、続くSS14カベセイラス・デ・バストではステージのあちこちが雨で湿っており、ハードには厳しいコンディションとなる。ソフトを装着して走ったヌーヴィルはここで4.4秒エヴァンスを上回り、リードを28秒に戻すことに成功、さらに強い雨が路面を湿らせたこの日最後のSS15アマランテでも温存していた新品タイヤを加えたオールソフトを装着、エヴァンスに9.8秒差をつけて一気にリードを39.8秒まで広げてこの日を終えることになった。

「僕はここではふたたび差を築くことができると分かっていた。クリーンで良い走りができたよ。ウェットなコーナーがあったので、ワイドになってしまうドライバーもいたようだが、僕は速めにブレーキをかけてタイトに曲がった」とヌーヴィルは落ち着いた表情で答えている。選手権のライバルであるセバスチャン・オジエが初日にデイリタイアとなっているだけに、彼は、明日の最終日、このポジションを守りきることに集中することになる。

 エヴァンスは湿ったステージでは2本しかもっていないソフトとハードを2本組み合わせて走ったが、あまりにもトリッキーだったと認めた。「ステージの大半でグリップが非常に低く、アイスのように滑るコーナーがいくつかあった。ソフトタイヤのほうがよかっただろうが、ドライのステージになれば難しくなっただろうからね」

 首位争いのほかにも、この日のもうひとつのハイライトとなったのは、4位をめぐるテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)とエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)の二人の若きフライングフィンによる攻防戦だ。

 11.4秒リードでこの日をスタートしたスニネンを5位で続くラッピが朝から激しく追い上げるが、スニネンも一歩も引かない状況だ。しかし、SS12で3番手タイムを出したラッピがスニネンまで4.8秒差まで迫ってデイサービスを迎えることになり、二人のバトルはこのまま一気に決着するかのようにも思われた。

 だが、午後のループを前に、金曜日のSS7でヘイデン・パッドンがコースをふさいでリタイアした際にスニネンに与えられたノーショナルタイムが変更されたため、4位のスニネンと5位ラッピとの差は11.8秒に広がり、ラッピから逃げていたはずのスニネンはいつの間にか3位ソルドの後方、9.2秒差まで迫ることとなった。

 スニネンはあまり3位を狙うことを意識せずにラッピとのバトルに集中していたが、SS5の湿った路面でソルドがスピンしたため、スニネンはポディウム圏内まで4.7秒差まで迫ることになった。

 ラッピは、スニネンどころかソルドまで攻略したいとの野心を口にしてきたが、「残念ながら僕たちは十分ではなかった。今日の午後はずっと全開で走った。これ以上なくプッシュした。しかし、彼らからタイムを奪うことはできなかった」と語り、スニネンを称賛することになった。

 マッズ・オストベルグ(シトロエンC3 WRC)はスニネンのペースについて行くことができずにじわじわと引き離されてしまい、SS14の湿ったコーナーでスピン、観客に押されてコースに戻るも1分あまりをロスすることになったが、後続のクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)との差が大きかったため順位には変わりなくそのまま6位をキープすることになった。

 ブリーンはコースオープナーとして路面掃除に苦しむことになり、オストベルグから1分40秒近く遅れた7位でこの日を終えている。

 また、クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)はSS12で激しくコースオフ、林のなかでマシンは横倒しになってストップすることになったが、幸いなことにミークとポール・ネーグルの二人に大きなケガはないとの情報だ。

 明日の最終日は51.53kmという短い一日になり、ポルトガルを象徴する大きなジャンプで有名なファフェの最終ステージで勝負が決着することになる。オープニングSSのモンティムは現地時間8時35分(日本時間16時35分)のスタートを予定している。