ERC2022/06/13

マルツィックが母国ポーランドでERC初優勝

(c)RedBull Content Pool

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第4戦ラリー・ポーランドは、地元のミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRally2エボ)が最終日の終盤で水温が140度近くまで上昇する波乱のドラマを乗り越えて地元ラウンドでWRC初優勝を飾ることになった。

 ラリー・ポーランド初日は、マルツィックとスペインのニル・ソランス(ヒョンデi20 N Rally2)の大接戦となったが、ソランスがステアリングを壊して戦列を去ったあと、マルツィックはラリーの主導権を握り、ソランスのチームメイトであるチーム2B レーシングのトム・クリステンソン(ヒョンデi20 R5)に20.4秒のギャップをもって最終日を迎えていた。

 マルツィックは最終日のオープニングSSでベストタイムを奪ってリードを22.9秒へと広げるも、わだちが刻まれて荒れているステージで無理をすることなくややペースをコントロールする走りに切り替える。だが、クリステンソンが16.1秒差まで迫ってきたため、マルツィックは午後のループに最初のステージ、SS12ミコワイキ・マックスではふたたびペースアップするもまさかのドラマが待っていた。

 マルツィックは残り数kmで深いわだちのなかの泥の壁にフロントをヒット、ラジエーターが泥で埋まってしまったため、水温は136度まで上昇し、エンジンがセーフティモードとなった状態でフィニッシュする。

 マルツィックのこのステージのタイムロスは1.8秒にすぎなかったが、ロードセクションでラジエーターの泥をかき出す作業を行って、問題が解決したようにも見えたが、彼は次のSS13でクリステンソンに7秒も遅れ、わずか10.5秒のリードで最後のパワーステージを迎えることになった。

 しかし、懸念されたエンジンの問題はなく、マルツィックはクリステンソンに10秒差をつけて母国ラウンドで悲願だったERC初優勝を飾ることになった。

「ラリー・ポーランドの勝者としてここにいる。信じられないようなフィーリングだよ」とマルツィックは勝利が信じられないような表情を浮かべた。

「今日は大変だった。スタートはまあまあだったが、わだちでミスをしないようにペースのコントロールを考えるようになったところ、トム(・クリステンソン)が迫ってきた。ミコワイキ・マックスのステージではフィーリングが良かったので、マシンをプッシュしてギャップを作ろうとしたが、フィニッシュラインの1km手前でラジエーターに泥がかぶったんだ。水温は140度まで上昇し、あと1kmも走れば、おそらくエンジンは完全にオーバーヒートだっただろう。だから、勝利できたことが本当に信じられないよ!」

 2020年のジュニアWRCチャンピオンのクリステンソンは、「マルツィックとの差を縮めるべく懸命にプッシュしていたがそれはかなわなかった」と語ったが、終始後続を引き離し、ERC初表彰台を獲得するとともに、ポーランド選手権ランキングでも首位に立ったことを喜んだ。「何が起こるかわからない。どうなることかと思ったが、チームも素晴らしい働きをしてくれた。このような結果を出せて、とてもうれしいし、誇りに思う。僕たちは自分たちの計画を正確に実行し続けているよ」

 3位は、ERC3タイトル争いのライバルだったケン・トルン(フォード・フィエスタRally2)とERCリーダーのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2エボ)による争いとなった。

 ヤレーナは朝のループで3位に浮上したが、2本のスパークプラグが破損したためにパワー不足からトルンにふたたび3位を譲って7.8秒差へと後退する。初日に選手権を争うソランスが荒れた路面での問題が引き金となってゼロポイントに終わっているだけに、ヤレーナは当然ながら同じ問題に遭遇しないようにペースを落として慎重な走りでフィニッシュを迎え、トルンが3位でERC初表彰台を達成している。

「この週末は最大限の力を発揮し、本当に楽しかった。素晴らしい結果をもって、次戦のラトビアに行く予定だ」とトルンは語っている。

 4位でフィニッシュしたヤレーナは、選手権のリードをがっちりとキープ、残りあと4戦で2位のソランスとの差を5ポイントから24ポイントへと広げることに成功した。「今朝はマシンに問題があった。午後はチャンピオンシップのためのポイント獲得と表彰台のためのフラットな走りの妥協点を見つけなければならなかったが、大きなわだちではラジエーターを壊してしまうので、速く走ることと、クレバーに走ることを心がけたんだ」

 シモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビアRally2エボ)はSS13でパンクに見舞われたものの、最終ステージでは道路端のフェンスに引っかかりながらも、ヤレーナを猛烈にプッシュして1.2秒差の5位、ハンガリー王者のノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が2019年ERC1ジュニアチャンピオンのフィリップ・マレシュ(シュコダ・ファビアRally2エボ)を2.3秒差で抑えて6位で続いている。

 ERC3はロベルト・ヴィルヴェス(フォード・フィエスタRally3)、ERC4はローラン・ペリエ(オペル・コルサRally4)がそれぞれ優勝を飾っている。

 ERC次戦は7月1〜3日にラトビアで行われるラリー・リエパーヤとなる。