WRC2016/07/30

ミーク、波乱の高速フィンランドを首位快走

(c)Citroen

(c)VW

(c)Hyundai

 世界ラリー選手権第8戦ラリー・フィンランドは、クリス・ミーク(シトロエンDS3 WRC)がDay1の首位に立っており、フォルクスワーゲン・モータースポーツのヤリ-マティ・ラトバラ(VWポロR WRC)が18.1秒差で続く展開となっている。

 ラリー・フィンランドは木曜夜にユヴァスキラの市街地で行われたハルユ・ステージで開幕、金曜日は高速ステージとして名高いユーコヤルビをふくむ11SS/146.85kmという長い一日となり、予想外のドラマが連続することとなった。

 オープニングステージとなったSS2メッキペラは、夜露でかなり湿り気を帯びた路面となり、一番手スタートのセバスチャン・オジエ(VWポロR WRC)にとっては悪くない状況にも見えたが、ルースグラベルがかき出されたクリーンな路面で後続のマシンがタイムを伸ばし、8番手スタートのミークがいきなりベストタイムで首位に立つことになった。

 ミークから2秒遅れの2番手タイムはヤリ-マティ・ラトバラ(VWポロR WRC)。3年連続母国勝利を狙う彼は前夜のスーパーSSではリズムをつかめずに6番手タイムに沈んだが、フォレストステージになって次第にペースをアップ、SS3ではベストタイムを奪って3位へと浮上してきた。
 
 だが、ラトバラはこの日最長となる21.24kmのユーコヤルビのダウンヒルでワイドになってしまいバンクに左リヤタイヤをヒットしてしまう。この衝撃でリムが破損、最初はスローパンクだけだったが、やがてトレッドが剥離、ラバーがリヤフェンダーを破壊したため痛々しい状態で彼はステージをフィニッシュ、5位までポジションを落とすことになった。

 このSS4ユーコヤルビでトップタイムを奪って首位のミークまで0.7秒差の2位に浮上してきたのはオット・タナク(フォード・フィエスタRS WRC)。木曜日のナイトステージでアンドレアス・ミケルセン(VWポロR WRC)とトップを分け合った彼は、金曜日はハードコンパウンド3本を選択してオープニングステージをスタートしたものの、路面は思った以上に湿っており、気温が低い朝のステージでは連続して3番手タイムと苦戦することになった。しかし、路面が乾きはじめるや、SS4のベストタイムを皮切りに、前戦ポーランドの再現ともいえる快進撃が期待されることになった。

 だが、それまで快調だったタナクのラリーは突然終わってしまう。彼はSS5でブレーキを踏んだ瞬間にサスペンションのアップライトが破損、たまらずスピンして30秒をロスしてしまった。タナクは次のSS6もこの問題を修理できないまま走ることになったため、朝のループを終えて50秒遅れの10位まで後退、優勝は絶望的な状況になってしまった。

 優勝候補に挙げられたドライバーたちが次々にトラブルに見舞われたことで、SS2 から首位をキープするミークはラクな展開となるかに見えた。だが、パンクで5位まで順位を落としたラトバラも、幸いなことにサスペンションなどにダメージはなかったため、SS5で2番手タイム、SS6ではベストタイムを奪い、路面掃除でペースが上がらないオジエを抜いてふたたび2位へと浮上、ミークの18.8秒後方へと迫ってきた。

 ユヴァスキラのデイサービスを挟んだ午後のループでもラトバラはさらにペースを上げてこの差を縮めるようにも見えたが、路面にかき出された石に集中力を乱されて思ったようにタイムを伸ばせない。これに対してミークはSS8メッキペラでベストタイムを奪い、ついにその差を21秒へと広げることに成功する。

 ラトバラもSS10スルキーでこの日3度目のベストタイムを奪ってその差を18.6秒とするものの、続くSS11ホルッカではふたたびミークがベストタイムを奪い返し、まさに一進一退の攻防となり、その差は一向に縮まらない。ラトバラは金曜日の最終ステージとなるハルユ・ステージで1.4秒を縮めるものの、ミークが18.1秒をリードしてDay1を終えることになった。

 この日、ステージごとに激しく順位を入れ替え、最後まで息付く暇もないホットなバトルを演じたのは、ミケルセンとティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20 WRC)に加え、シトロエンDS3 WRCで初めてフィンランドに挑むクレイグ・ブリーンの3人だ。

 ヌーヴィルは朝のループではリヤのグリップ不足を訴えたものの、午後のループではペースをアップ、ディッチにマシンを落としたミケルセンを捕らえて3位でDay1を終えている。とはいえ、ミケルセンもわずか1.1秒遅れで続き、さらに8.4秒後方にはブリーンが続いている。ブリーンはSS7で2番手タイムを奪って二人を同時にパスするなど驚くべき速さをみせたものの、ジャンクションのミスがあって5位でこの日を終えることになった。

 6位にはヌーヴィルと同様にセットアップの問題を抱えたヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 WRC)、マッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタRS WRC)が7位で続いている。

 朝のループのサスペンショントラブルで10位という絶望的なポジションまで後退したタナクだが、SS7とSS9でベストタイムを奪って一気に7位まで浮上してみせる。7位とはいえ、この時点で4位につけるミケルセンまではわずか9秒差。これでふたたび表彰台のチャンスも生まれるかに見えたが、彼はSS10で右フロントタイヤをパンク、8位でこの日を終えることになった。

 いっぽう、朝のループで路面掃除に苦しめられて23.3秒も遅れたオジエは、午後のループでクリーンな路面を期待していたが、国内選手権のマシンが走ったことでラインは汚れ、ふたたび路面掃除に苦しむことになる。彼は午後のループでタイムを挽回して優勝争いのチャンスを掴むことに強い意志をみせたが、SS10のヘアピンで彼らしくないミスを犯してイン側のディッチにマシンを落としてスタック、16分を失い53位で初日を終えることになった。

 土曜日のDay2は、いきなりラリー・フィンランドの象徴ともいえるオウニンポウヤのステージで幕を開けることになる。今年はいつもと異なりステージを逆走で走ることになるため、ドライバーたちはいっそう目を覚まして挑む必要がある。