WRC2024/02/19

ラッピがスウェーデン快勝、6年半ぶり2度目の勝利

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 2024年世界ラリー選手権(WRC)第2戦ラリー・スウェーデンは2月18日に最終日を迎え、ヒョンデ・モータースポーツのエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 N Rally1)が大きなリードに支えられて快勝、2017年のラリー・フィンランドにおけるキャリア初勝利以来、実に6年半ぶり2度目の勝利を飾ることになった。2,394日ぶりというチャンピオンシップ史上最長のインターバルでの歴史的勝利だ。

 スウェーデン最終日は、ヴェステルヴィッケ(25.50km)のステージをウーメオでの15分間のサービスを挟んで2回ループ、それに続いてウーメオ(10.08km)の走行がパワーステージとして行われる3SS/61.08kmの一日となる。

 マイナス5度の朝を迎えたウーメオ。天気は晴れ、雪が降る可能性はない。ヴェステルヴィッケは最終日のフィナーレの舞台として美しいコンディションに仕上がっている。道路脇のスノーバンクは高く、ドライビングのミスを許さないものの、路面は硬く凍結したアイスが全域にわって覆っている。轍が生まれてグラベルがかきだされる心配はあまりなく、表面にはルーススノーがほとんどなくこの週末でもっともいいコンディションとなった。まるで高速のGPサーキットようだったこのステージで、最速タイムのカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)は平均速度135.14km/hというこの週末の最速記録を叩きだしている。

「結構いい感じだった。思っていたよりグリップが良かったから実際かなり楽しめたよ。幅の狭いところだけはちょっとトリッキーだった。いずれにせよ、自分ができることはすべてやった」とロヴァンペラは笑みをみせている。金曜日にクラッシュでデイリタイアを喫した彼は、総合52位というポイント圏外で最終日を迎えているため、チームのためにも今年から日曜日のデイポイントとパワーステージに掛けられているスーパーサンデーのポイントを狙っていくつもりだ。

 1分6秒あまりをリードして最終日を迎えたラッピは、オープニングステージではロヴァンペラから36.1秒も遅れた7番手タイムにとどまったが、最終日のポイントを狙わず、着実に勝利を持ち帰るためにセーフティな走りに集中している。「コンディションは本当に楽しいのは確かだ。グリップは本当に良かった。(僕たちは)とんでもなくスローだったけど、とにかくこのままゴールすることが唯一の目標になる」

 2番手タイムを奪ったエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が、スノーバンクに接触してタイムを失ったアドリアン・フールモー(フォード・プーマRally1)を抜いて2位へと浮上することになったが、トップとの差は53.2秒という大きなものだ。

 フールモーは、エヴァンスより21.7秒遅いタイムで、2ステージを残してポジションを3位に落としたが、取り乱したりはせず、むしろ冷静さをとりもどしたようだった。「今の僕たちはとにかく表彰台を確保することだ。土曜日までの順位ですでに2位のポイントを獲得できている。実際、序盤はフィーリングが良くなかったからリスクを冒すことはしなかった。大丈夫だ。僕にとって初めての表彰台がとれるかもしれない、だから絶対に獲りたいよ」

 ドライバーたちはウーメオでの15分間のサービスでフレッシュなタイヤに交換して、ヴェステルヴィッケ・ステージの2回目の走行となるSS17へと向かって行く。ここからはウーメオのパワーステージを睨んで、スタッドタイヤのマネージメントをする戦略も重要になる。

 SS17はいきなりドラマとともに始まることになった。一番手でコースンした勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)が終盤の森のなかの狭いコーナーが連続するセクションで大きなバンプであおられてスノーバンクを直撃する! 前日のクラッシュで惜しくも初優勝のチャンスを失った彼は、ここではフロントやフェンダー回りを壊しながらもスタックすることなくコースに復帰、どうにかステージを走りきっている。「ステージの最後に大きなバンプがあったんだ。よくわからないが、とにかくフロントを失ってスピンしたんだ。良くないことだよ」と勝田はふりかえっている。

 前日のショックな出来事を勝田は彼なりの思い切ったやり方で忘れようとしているのだろう。後続のオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)は、勝田がいかに大胆にコースを攻めていたか証言する。「タカはあまりラインの上を走りたくないようだ(笑)。とてもアグレッシブに、すべてのスノーバンクのギリギリを攻めている。そうしないと20秒は簡単に失ってしまう可能性があるからね」

 それでも満身創痍の勝田に対して、首位のラッピは、まるでこれからステージに向かうかのようにフロントスポイラーもどこもかしこもピカピカのニューパーツを装着したばかりのような美しいマシンで悠々とフィニッシュしてきた。彼はここでも19秒を失ったが、10kmあまりのパワーステージを残して34秒という大きなマージンを残している。2位のエヴァンスもベストタイムを刻み、フールモーとの差を14.1秒に広げて、いよいよ最終ステージを残すのみとなった。

 そして迎えたパワーステージ、ラッピはここでもペースを落として着実な走りでフィニッシュ、見事に勝利を飾ることになった。彼はフィニッシュラインを通過するやコドライバーのヤンネ・フェルムと手をにぎりあって、二人にとって6年半待ちわびた2勝目を喜び合う。そして深く、深く息を吐き、ここまで信じられないほど遠かったと言わんばかりに首を横に振った。

「本当にうれしいよ。僕はこの2度目の勝利を、かなり長い間追い求めていたからね」とラッピはやっと笑顔をみせた。「家族とシリル(・アビテブール)にとても感謝している。彼は昨シーズン後半、非常に悪い時を過ごしていた僕をこのチームとともに歩むチャンスを与えてくれた。その時と今とでは、大きな差だ・・・」

 エヴァンスは2位を守るとともに、パワーステージ最速を狙ったが、アリーナセクションでワイドになってしまってスノーバンクにヒット、最速タイムを刻んだロヴァンペラから0.1秒遅れでパワーステージ勝利はならなかった。それでも彼は、日曜日のみのスーパーサンデーでは最多ポイントの7ポイントを加え、優勝したラッピの19ポイントを上回る24ポイントを獲得して浮き沈みのある週末を最高の形で終えることになった。「最後の2つのコーナーで失ってしまったね。残念だ。いずれにせよ、金曜日に起きたことを考えると、全体としてはこの結果に比較的満足できると思う。だが、まだ取り組むべきところがある」

 フールモーは、Mスポーツでのフル参戦シートに復活後わずか2戦目にして初めてのWRC表彰台を獲得したことを喜んだ。「Rally1に戻って来て表彰台に上がれるなんて、本当に、本当にうれしい。とても苦しい2年間だったけれど、僕たちは決して諦めなかった。スウェーデンで表彰台に上がれるのは本当に特別なことだ。正直に言って、言葉が出ない。ただただとてもうれしいよ」

 ヌーヴィルは金曜日のスノースノースイーパーと燃圧の問題で一時14位まで後退しながら4位でフィニッシュした。彼はパワーステージの終盤までロヴァンペラを上回るペースを刻んだが、最終ステージのアリーナセクションで40mの激しいジャンプのあとスノーバンクに寄りかかってリヤゲートごとウイングを吹き飛ばしてしまい、ここでは0.2秒差の3番手タイムに終わることになった。「自分たちにできることをした。僕たちにとって難しい週末だったが、獲得したポイントには満足している。金曜日のコンディションにも関わらず、僕たちは良い走りができた。それが結果だ」

 第2戦スウェーデンを終えて、ドライバーズ選手権ではヌーヴィルが48ポイントでリードを維持するも、エヴァンスがわずか3ポイント差の45ポイントへと伸ばしており、フールモーが29ポイント、セバスチャン・オジエが24ポイント、タナクが21ポイント、そして殊勲のラッピが19ポイントで続いている。土曜日のクラッシュで悔しい週末となった勝田は総合では45位に終わったが、日曜日は6番手でフィニッシュ、スーパーサンデーの2ポイント、パワーステージでの1ポイントを重ねて12ポイントに伸ばしている。

 また、マニュファクチャラー選手権では、開幕から2戦連続優勝を飾ったヒョンデがトヨタと87ポイントで並び、Mスポーツ・フォードが47ポイントで続くことになった。

 次戦は3月28日〜31日に開催される第3戦サファリ・ラリー・ケニアだ。ここ2年はトヨタが連続して1-2-3-4フィニッシュを飾っているが、伝統に従ってイースターホリデーに戻っての開催となる今年は雨季にかかることから、これまでとはまた異なったドラマを呼ぶかもしれない。