WRC2022/02/27

ロヴァンペラがリード、エヴァンスが8.3秒差2位

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 2022年世界ラリー選手権第2戦ラリー・スウェーデンのレグ2は、カッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)がリード、チームメイトのエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が8.3秒差で続き、トヨタGAZOOレーシングWRTが1-2体制を築いている。

 土曜日は、当初SS9/13に予定されていたエーントレスク・ステージがトナカイを放牧する農家の事情でキャンセルとなり、ブラットビー(10.49km)、ロングエード(19.44km)、金曜日の夜に行われたウーメオ・スプリントのロングバージョンであるウーメオ(10.44km)の3ステージをサービスを挟んで2回ループする6SS/83.21kmの短い一日となる。

 夜半にはマイナス6度まで冷えたウーメオ市内、朝8時の気温マイナス3度となっているが、ステージの気温はさらに低く、マイナス7度と報告されている。路面にはフレッシュスノーはなく、冷えて固まった雪とアイスが待ち受ける。

 初日を終えてヒョンデ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)が首位に立っているが、その後方には一番手スタートながらその遅れを4.3秒差にとどめたロヴァンペラが2位、7.4秒差の3位にはエヴァンス、8.8秒差の4位にはエサペッカ・ラッピと3台のトヨタGRヤリスRally1が追撃態勢を整えている。まさしくヌーヴィルがただ一人で、3台のトヨタを相手に孤軍奮闘の状態だ。

 オープニングステージのSS8ブラットビーで早くもヒョンデの牙城は破られることになる。ヌーヴィルは終盤のテクニカルでトリッキーなセクションで失速して6番手タイム、ロヴァンペラに0.7秒差で首位を譲って2位へと後退する。さらにここでベストタイムを奪ったエヴァンスもヌーヴィルの0.7秒差まで迫ってきた。

「正直、いい具合にグリップがつかめなかったんだ。でも、わかっているさ、ここはトリッキーなステージで何が起こってもおかしくない。それでもなんとかリズムを掴んで前に進みたい」とヌーヴィルは語った。

 トヨタのドライバーたちにとってもけっして満足のいったステージではないようだ。ベストタイムを奪ったエヴァンスは「ところどころまとまりがなかったり、その他は慎重になり過ぎた。こういうコンディションは常に難しいものだ」とコメント、初日のSS3以来となるリーダーをとりもどしたロヴァンペラも「みんながバンクに接触するから、ラインは雪でべちゃべちゃになっている」と自信を持って行ったわけではないと明かしている。ラッピが2番手タイムで続き、トップ4はなんと3.2秒差という大接戦となる。

 トナカイを移動させるためにSS9がキャンセルとなったあと、続くSS10は長いストレートが連続するハイスピードのロングエード・ステージだ。ここではロヴァンペラがベストタイムでライバルたちを引き離しにかかる。3.4秒差をつけられたヌーヴィルは3位に後退、0.1秒差ながらついにヌーヴィルを抜いたエヴァンスが2位へとポジションを上げるもロヴァンペラからは4秒遅れだ。さらにあっという間に8.8秒差へと遅れたラッピは、自分のタイムが「あんなに遅かったなんて」と驚いていた。

 朝のループの最後のステージはSS11ウーメオ。「ステージ前にいくつか変更を加えて、マシンのフィーリングがかなり良くなった」と語ったクレイグ・ブリーン(フォード・プーマRally1)が先頭スタートにもかかわらずベストタイム。前日にスタックでリタイアしていることから上位進出は絶望的となっているが「新しいマシンの経験を積んで行きたい」と前向きに語る。

 ここでは3位につけていたヌーヴィルが左の90度コーナーで曲がりきれずにオーバーシュート、10秒近くの遅れを喫してしまい、ラッピの後方3.1秒差の4位へと後退してしまう。

「最初のブレーキングポイントでストレートに行ってしまった。その後何かがおかしくなって、ハイブリッドによってクルマがスローダウンさせられた。正直なところスピードを得られなかったが、僕たちはまだまだここにいるし頑張っている」とヌーヴィルは説明する。「今朝のトヨタ勢は本当に速かった。正直、僕はそのスピードについていけなかったけど、僕らはまだここにいて、トライしていくよ」。ヌーヴィルの後退によって、ついにここでトヨタが1-2-3体制を築くことになった。

 ロヴァンペラはここではトップ4のなかではもっとも速い2番手タイム、エヴァンスとの差は4.8秒、3位へと浮上したラッピとの差を12秒へと広げて首位でウーメオのサービスへと戻ることになった。彼は余裕の表情で、「思っていたよりも難しかった」と語ってレポーターの笑いを誘っている。「何度も愚かなミスをしてしまったし、轍がかなりトリッキーだったからね。でも、そこまでタイムを失うことがなくて良かったよ」

 オリヴァー・ソルベルグ(ヒョンデi20 N Rally1)はトップ争いに加わっていた前日とはうって変わってリズムをつかむのに苦戦、「自信がないんだ。昨日はとても速かったのに、今日は何が起こったのかわからない」と嘆くことになり、トップ4からは36秒以上もの差をつけられてしまった。

 トヨタの次世代ドライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)はソルベルグから50.8秒遅れでスタートしたが、朝のループを通して好調なペースでじわじわと追い上げて32.1秒差まで迫ってきた。

 ウーメオのサービスを挟み、午後のループの最初のステージ、SS12ブラッドビーは、朝と同じくトリッキーなセクションで速さをみせたエヴァンスがふたたびベストタイムを奪い、ロヴァンペラの1.2秒後方へと迫ることになった。

 ロヴァンペラはチームメイトに3.6秒も縮められたことをそれほど気にしてない。「彼は午前中も速かったし、僕はこのコンディションでは良いステージだったと思う」。

 自信に満ちている彼は、ナイトステージとして行われた高速のSS14ロングエードでふたたび圧巻のベストタイム、エヴァンスとの差をふたたび5.7秒差へと広げることに成功、この日の最終ステージのウーメオでも連続してベストタイムを奪い、エヴァンスとの差を8.3秒へと広げて土曜日を終えることになった。

 ラリーを完全に支配しているように見えるロヴァンペラは、ステージエンドで何パーセントで走っているのかと聞かれ、「いつも100パーセントで行くべきだと思う。でも今日の最後のこのステージは、110パーセントだったと思う! 本当に難しいコンディションだけど、明日は大きな戦いになるだろう」と彼は満足そうに語っている。

 エヴァンスは最後まで気迫の走りをみせて波乱に満ちたゴールを迎えることになった。全開のままゴール目前の最終コーナーに進入した彼は、オーバースピードでスノーバンクを越えてコースオフしてしまう。ひやりとさせる瞬間だったがフライングフィニッシュの表示ボードをなぎ倒しながらもゴールを通過したためロスタイムはなく2番手タイムだ。「少しコースオフしてしまったが、バンクがとても柔らかかったから、そのまま越えてしまったんだ!」と、エヴァンスは何とかゴールできたことに安堵のため息をついていた。

 金曜日は一時、6人のドライバーによる壮絶な優勝争いが繰り広げられたが、それが4人に減り、土曜日の戦いを終えて候補は2人に絞られたようだ。前ステージで190km/h近い速度でバンクに接触、ハイスピードであわやオフする瞬間に見舞われながらも果敢な走りで3位を取り戻したヌーヴィルだが、最後のステージでもエヴァンスを抜くことができず3番手タイム、4位のラッピとの差は4.2秒へと広げたものの、トップからは21.7秒遅れ、2位のエヴァンスからも13.4秒遅れと、優勝争いからは一歩後退することになった。

 彼はステージエンドで勝利を諦めて3位をキープすることが重要だと語ることになった。「ロヴァンペラのペースにはついていけない。僕たちはラリーを最後まで走りきるという自分たちの目標に焦点を置く。モンテカルロの後、誰も僕たちが表彰台を狙えるとは思っていなかっただろうから、それはポジティブなことだ。明日はやり遂げることが重要で、もし表彰台で終わることができれば最高だ」

 ラッピは「回りを見るとペースがわからなくなるから自身の走りに集中したい」と語っていたが、「多くのミスを犯してしまった。本当にプッシュしようとしたんだけど、もっとプッシュしようとしたとたんにひどくなってしまったんだ。バンクにぶつかったりして、とにかく遅かったんだ」とそのパフォーマンスに苛立ちを覚えているように語っていたが、ヌーヴィルから4.2秒差の4位につけている。

 5位につけていたソルベルグは最終ステージを前にしてスロットルのトラブルで1分以上遅れ、さらにステージ前のチェックインが遅れたことで2分40秒のペナルティーを課される。これで彼は7位に後退、勝田が5位、ガス・グリーンスミス(フォード・プーマRally1)が6位となっている。「原因がわからない。スロットルの問題なのか、それとも他の何かなのか・・・」

 最終ステージでトラブルに見舞われたのはソルベルグだけではない。それまで大きなトラブルもなく7位につけていたアドリアン・フールモー(フォード・プーマRally1)は、エンジンがミスファイアを起こしており、不運なことに4分30秒あまりも遅れて15位まで後退してしまった。「エンジンに問題があるようだ。本当に残念だし、悔しいけど、こういうことは起こる。これもゲームの一部なので仕方ない」

 明日の最終日は4SS/56.84kmという短い一日。はたしてロヴァンペラが逃げ切って今季初優勝を飾ることになるのか。オープニングSSのヴィンデルンは現地時間7時(日本時間15時)のスタートとなる。