ERC2022/03/13

嵐のERC開幕戦ファフェをソランスがリード

(c)ERC

(c)ERC

(c)ERC

 2022年ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)の開幕戦ラリー・セーハス・ダ・ファフェ・エ・フェルゲイラスの土曜日は、嵐のような雨と濃霧による視界不良、さらには泥の海という最悪のコンディションのなか、ラリー・チーム・スペインのニル・ソランス(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)がトップに立っている。

 春先のポルトガルの大西洋沿岸エリアは不安定な天気で有名であり、前夜に行われたスタートオーダーセレクションでも土曜日が雨になるのかドライになるのか、ステージをどのポジションで走るべきかドライバーたちを悩ませることになった。予選トップとして真っ先に土曜日の走行順を選ぶ権利を手にしたゲオルグ・リンナマエ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)は迷いながらも5番手からのスタートをチョイス、予選4番手タイムのソランスが一番手のポジションでの走行を選んだのはギャンブルでもあった。

 だが、ソランスのこの賭けは見事に的中する。激しい雨となったこの日の朝のオープニングステージでソランスは後続に大きく差をつけるベストタイムで発進、金曜日のナイトステージでラリーリーダーに躍り出したエリック・ツアイス(フォード・フィエスタRally2)に対して14.3秒差をつけて首位を奪う。
「今のところ、この路面を最初に走るのは正しい選択だったと思う。グリップはかなりいい。湿ったグラベルがかき出されると滑りやすくなるのは分かっているからね、どうなるだろうか、様子を見よう」

 ツアイスから5.9秒差でアルミンド・アラウージョ(シュコダ・ファビアRally2エボ)、予選トップのリンナマエはアラウージョから2.7秒遅れ、首位からは22.9秒遅れとなってしまった。それでもリンナマエは、ALMモータースポーツと考えた走行戦略がうまくいくと信じており、ソランスとの差はミスのせいだと指摘した。「(走行順は)正しい選択だったと思う。間違ったエンジン・マップでステージで臨んだことがここで遅れた原因だよ」

 リンナマエは続くSS3カベセイハス・デ・バストでは自らの言葉が正しいことをベストタイムで証明、ツアイスとアラウージョを抜いて首位から22.5秒遅れの2位へと浮上してみせる。だが、けっしてコンディションがよくなったわけではなく、雨は強まり、むしろ悪化の傾向にある。「速いステージだったが、本当に滑りやすく、人生でもっともクレイジーだった」と彼は訴えた。

 この最悪とも言えるコンディションのなかで2位につけていたツアイスにドラマが起こる。彼は道路脇の石にヒットさせてしまい、ステアリングを痛めるとともに右の前後のタイヤを2本ともパンクさせてしまい4位へと後退、スペアを失ったためにロードセクションでリタイアを決意することになっだ。

「フィニッシュの2.5km手前のダウンヒルに入る小さな右コーナーで、おそらく何かにぶつかったんだ。そのせいで右側のタイヤが破損し、パワーステアリングの問題が発生した。がっかりだが、このようなグラベルのコンディションでも、ドライビングには満足しているし、タイムも悪くなかった。僕たちは進歩していると前向きに思いたい」

 続くSS4ヴィエイラ・ド・ミーニョのステージは激しい雨と濃い霧に覆われ、救急車の進入が不可能と判断されたためにキャンセルとなり、クルーたちはSS5ルイジャスへと向かうことになる。ここではフロントガラスの曇りに悩まされながらもベストタイムを刻んだソランスが2位のリンナマエとの差を28.8秒差へと拡大して朝のループを終えることになる。首位から34.6秒遅れの3位にはアラウージョというオーダーだが、彼は、ポルトガル選手権でのポイント獲得を優先していると語り、リスキーなコンディションでトップ2台とバトルすることは意味のないことだったと認めている。

 マディコンディションとなった朝のループで圧倒的な強さを見せて首位に立ったソランスだが、午後からの2回目の走行では、深く刻まれたわだちの中に水たまりが生まれ、彼はアクアプレーニングに苦しむことになる。

 SS7ボティカスは悪コンディションのためにキャンセル、SS8カベセイハス・デ・バストでは朝のループで速さをみせたリンナマエが2つめのベストタイムを奪って、「ラインがまったく見えなかった」というソランスの13.5秒差まで迫ってみせる。

 しかし、一番手で走るソランスにとっては続くSS8ヴィエイラ・ド・ミーニョのステージが朝のループでキャンセルとなっていたことは幸いだっただろう。彼はここで2番手タイムのアラウージョを35.7秒も引き離す素晴らしいベストタイムで圧倒、背後に迫ってきたかに見えたリンナマエとの差をいきなり54.2秒まで広げてみせる。

 リンナマエはさらに不運なことに、この日最後のステージとなるSS9ルイジアスでフロントガラスが曇るトラブルでソランスに50.4秒差をつけられてしまい、2位をキープしたものの、その差は1分44.4秒という大きなものとなってしまった。

 首位で初日を終えたソランスは、「本当に難しいコンディションだったので、とても満足している。最初のループは良かったのですが、2輪駆動車の後の2回目のループでコースオープナーを務めることは本当に大変だった。特にわだちの中に水が溜まっていて、他のドライバーのために道路をきれいにしなければならなかっただけに大変だったよ」と語っている。

 一方、リンナマエは、自分がどこを走っているのかさえわからなかったと首を横に振る。「何も見えないんだ。ウィンドスクリーンが完全に曇っていたので、レッキより遅いペースで行くしかなかったよ」

 リンナマエから15.3秒差の3位につけるのはアラウージョ。彼は初日のみで争われるポルトガル選手権では地元のライバルたちに数分の差をつけて、見事に最大ポイントを獲得、ポルトガル選手権のタイトル獲得に向けて計画通りの結果を手にすることになった。

 アラウージョから58.5秒の差の4位にはERC2王者のハビエル・パルド(シュコダ・ファビアRally2エボ)が続いており、ERCミシュラン・タレント・ファクトリーのリーダーとなっている。18秒差の5位には視界の悪いステージに苦戦したシモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビアRally2エボ)、さらに36.6秒差でアルベルト・バティストーリ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が続いている。

 3台体制でシーズンに挑むチームMRFタイヤ勢にとっては苦しい開幕戦となっている。ノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)はランプポッドを持たず、暗闇のSS9でタイムをロスしてしまいトップから4分40秒も遅れた7位にとどまっており、木曜日のナイトステージで2位につけた地元のミゲル・コレイア(シュコダ・ファビアRally2)が1分23秒9差で続いている。

 カーナンバー1をつけて開幕戦に臨んだチームメイトのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2)は、ファフェのスーパースペシャルでハンドブレーキのトラブルでタイムを落としたあと、土曜日の朝、深いわだちのなかでラジエーターを破損、どうにか自力で修理を行ったあとラリーを続行しているが、12分遅れの20位という悲惨な初日となっている。


 ヤレーナのチームメイト、シモーネ・カンペデッリ(シュコダ・ファビアRally2)もSS7でリアサスペンションを損傷しリタイアしており、日曜日には再スタートする予定だ。また、ERCジュニアチャンピオンのケン・トルン(フォード・フィエスタRally2)は、エンジンのオーバーヒートで早期にマシンを止めている。

 ERC3はドミトリー・フェオファノフ(フォード・フィエスタRally3)がカスパー・カサリ(フォード・フィエスタRally3)に32.6秒の差をつけてトップ。ERC4ではERCデビューしたオスカル・パロモ(プジョー208 Rally4)がアンドレア・マベリーニル(ノー・クリオRally4)に1分32秒9の差をつけてトップに立っている。