WRC2018/11/16

波乱の最終戦、シトロエンが初日1-2態勢

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 2018年FIA世界ラリー選手権(WRC)第13戦ラリー・オーストラリアの初日は、タイトルチェイサーたちの思惑を振り切って、出走順の利を活かしたマッズ・オストベルグ(シトロエンC3WRC)が快走。2位にクレイグ・ブリーンが続き、シトロエンは1-2態勢でゴールした。

 今季のWRCサーカスは1月のラリー・モンテカルロから世界12カ国を巡って最終戦の地、オーストラリアに辿り着いた。ドライバー選手権ではセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)がティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)を3ポイント差でリードし、オジエに23ポイント差でオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が続く。マニュファクチャラー選手権はトヨタ GAZOOレーシングWRTがヒュンダイ・シェル・モービスWRTを12ポイント差でリード。さらに13ポイント差でMスポーツ・フォードWRTが続く展開だ。

 金曜日の舞台となるのは、ホストタウンとなるコフスハーバーの北に用意された3つのステージ。オーララ・イースト(8.77km)、コールドウォーター(14.12km)、シェアウッド(26.68km)を午前、午後で2回走行し、その後1.27kmのスーパーSSを2回走る構成となっている。

 スタート前の予想では木曜日の夜から雨になるとの情報もあったが、降雨量はそれほど多くなく、乾ききった路面を湿らせる程度。雨を期待していた先頭ランナーたちは、結局、路面に積もったダストの掃除役に苦しむことになった。

 ドライバー選手権を争うオジエとヌーヴィルはルースグラベルに阻まれてタイムが伸びない。オープニングSSではそれぞれトップから2.6秒、2.1秒遅れの8位、5位のタイム。オジエは「もう少し雨が降ってくれることを望んでいたが、残念ながらそうはならなかった」と浮かない表情だ。

 一方、マニュファクチャラー選手権のタイトルを狙うトヨタ勢は素晴らしいスタートを切る。SS1でエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)がベストタイムを刻み、ヤリ-マティ・ラトバラがセカンドベストで続く。さらにSS2コールドウォーターではラトバラがベストタイムを記録して同タイムでトヨタの2台がラリーをリードすることになった。

 SS3、この日もっとも長い26.68kmの距離を持つシェアウッドは道幅の広いヒルクライムから始まり、スタートから10kmほどで道幅が狭くなりトリッキーなコンディションをなる。後半部分には昨年クリス・ミークがコースアウトしたいわくつきのコーナーもある。そして、1回目のシェアウッドの走行で早くもドラマが萌芽する。

 6番目にスタートしたアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が大きくマシンをスライドさせてディッチに嵌り込み、左フロントを立ち木にヒットさせてストップ、ワークス勢最初のリタイアとなった。ヌーヴィルはバンプでマシンを大きく跳ね上げられ、あやうく横転の危機を味わい、タナクもタイトな右コーナーに進入する際にコントロールを失いそうになってバンクに乗り上げ、左タイヤをパンクしてステージをフィニッシュしている。

 金曜日の午前中のループで首位に立ったのは、このシェアウッドのステージでベストタイムを刻んだオストベルグだ。11番手でスタートした彼は、SS1、SS2こそリズムを掴むのに苦しみアンダーステアを訴えて低迷していたが、SS3では有利なポジションを味方にクリーンな路面で快心の走りをみせ、2台のトヨタを一気に抜き去った。「とても楽しめた。美しいステージで、良いリズムで走れた。スタートラインについた時、(2位に入った)フィンランドのことを思い出していた」と手応え十分の様子だ。

 このステージで同じく好調な走りをみせたのはブリーンだ。オープニングSSではカンガルーにヒットして11番手と出遅れた彼はまたも金曜日のジンクスに暗い表情をみせたが、SS2、3と連続してセカンドベストを刻み、2位のラトバラ、3位のラッピに続いて4位に浮上してきた。

 5位にはヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)、6位にタナクというオーダー。選手権リーダーのオジエは10位。ヌーヴィルは9位と苦しい展開だ。

 サービスを挟んだ午後のループ、青空が広がり、雨の心配はなくなった。23ポイント差ながらもタイトル獲得に一筋の希望を抱えるタナクは、ここからチャージを掛ける。SS4、彼はスタート直後にフェンスポストに左リヤをヒット、リヤフェンダーとエアロを吹き飛ばしながらもベストタイムを叩き出す。彼は続くSS5ではウォータースプラッシュを通過した際に水圧でフロントバンパーとフェンダーの一部を失いながらも総合3位までポジションを上げたが、前後のエアロを失ったことでハンドリングに問題を抱えたマシンでこの日の残されたステージを走らなければならない。

 このウォータースプラッシュでは彼の通過後にそれまで2位につけていたラッピもミスファイアを起こしてタイムロス、9位までポジションを下げてしまった。

 SS5でベストタイムを奪ったのは、ヌーヴィルだ。比較的路面がクリーンだったことが奏功したか。「ステージはまずまずだった。オジエとは違うタイヤ戦略が機能しているかのかもしれない。いずれこれ以上できることはないくらいやっている。様子をみてみよう」とタイトル獲得に闘志を燃やす。

 だが続くSS6、2回目のシェアウッドでヌーヴィルに悲劇が起こる。バンプで大きく跳ねた彼はオフしてバンクにヒット、その衝撃で左リヤタイヤをパンクさせてしまう。そのためにコース途中に設けられていたシケインを曲がり切れずに大きくタイムロス。1分近くを失ってしまう。

 土曜日のスタート順はここまでのリザルトに基づいたリバースオーダーとなる。そのため少しでもオジエのスタート順を有利にするためMスポーツ・フォードはチームオーダーを発令。テーム・スニネン、エルフィン・エヴァンスがゴール直前でペースを落とし、オジエを前に出す作戦を取った。

 ベストタイムを刻んだブリーンがエアロに問題を抱えたタナクを抜いて3位に浮上。首位のオストベルグもセカンドベストで、2位のラトバラとの差を6.2秒に広げる。

 金曜日を締めくくるのは、コフスハーバーの海岸線に特設されたスーパーSS。ジャンプや360度ターン、ターマックと砂地のミックス路面など、トリッキーなコースだ。1.27kmと距離が短いため大きな波乱は起きないと思われていたが、ラトバラが360度ターンでミス。わずかにタイムロスを喫して、3位に後退してしまった。

 首位はオストベルグ。7.6秒差の2位にブリーンが続き、シトロエンは1-2態勢で金曜日をゴールすることになった。3位には首位から8.3秒差でラトバラ、11.6秒差の4位にパッドン、18.6秒差の5位にタナク、28.7秒差の6位にラッピ、39.7秒差の7位にオジエと続き、ヌーヴィルはチームオーダーで順位を落としたエヴァンス、スニネンを挟んで1分12.8秒遅れの10位だ。

 日中は青空の見えたコフスハーバー周辺だが、スーパーSSがスタートする頃には空は雲に覆われた。土曜日、予報ではふたたび不安定な天候となることが予想されている。果たして、雨は降るのか。