WRC2023/12/30

【TOP10-第4位】ティエリー・ヌーヴィル

「不屈の精神でトヨタに立ち向かった」

(c)Hyundai

Thierry Neuville
Hyundai Motorsport

ティエリー・ヌーヴィルの2023年シーズンはけっしていいスタートとは言えないものだった。モンテカルロ3位、スウェーデン3位、そしてメキシコでは2位になったが、いずれも初日からマシンへの素晴らしいフィーリングを得ていたものではなく、あとから追い上げて表彰台へと到達したものだ。

ヌーヴィルは、クロアチアでは土曜日のミスによるアクシデントが響いて33位、ポルトガルはターボトラブルのため表彰台を失って5位となったが、サルディニアではやっと素晴らしいドライブでヒョンデに今季初勝利を捧げることになった。エサペッカ・ラッピによる進言に基づき、まだテスト段階だった新しいダンパーがチームのペース向上の助けになったようだが、彼は同時に信頼性でもパフォーマンスでもトヨタにじわじわと引き離されつつあることを憂慮した。

ヌーヴィルは優勝争いが期待されたケニアではサスペンション破損でポイント圏内から脱落、パワーステージを制して辛くもランキング2位を守ったかに見えたが、ラリー後に関係者によって許可されないコースの偵察が行われていたとして失格処分となっている。これによって彼はここでノーポイント、選手権では47ポイントものビハインドとなり、ランキングは5位に後退することになった。

不運な流れのなかでヌーヴィルにとっては明るい兆しもあった。これまで高速グラベルラリーを苦手としていた彼は、エストニアとフィンランドではペースをつかんで2位でフィニッシュ、将来にとってポジティブなことだと彼は笑顔をみせている。

それでも選手権での遅れはいかんともしがたく、挽回を図るべくギリシャで猛攻を仕掛けるものの、勝利に近づいたかに見えたところでステアリングを壊してタイトル争いは万事休すとなってしまった。

ヌーヴィルは今季、これだけ波乱のドラマに彩られたシーズンながらも、不屈の精神力をもって挑み、息詰まるライバルとのポジション争いを制し、ワールドチャンピオンのロヴァンペラに並ぶ8度の表彰台を達成した。しかし、彼とチームの勝利は、サルディニアとセントラル・ヨーロッパでの2勝にとどまり、速さと鉄壁な信頼性を武器に快進撃を続けたトヨタの9勝に大きく水を開けられた。

ヌーヴィルはトヨタよりペースが足りないとシーズンの歯がゆさを表現した。「僕らはいつも表彰台に上っていたにもかかわらず、ケニアでのノーポイントの遅れを取り戻すのが難しかった。そしてギリシャでのトラブルで僕らのチャンスは完全に失われた。僕たちはシーズンを通じて本当に速く走ってきたけど、ほとんどの場合、トヨタより少しペースが足りない。だから無理をしてしまい、一貫性にも欠けたんだ」

それでもヌーヴィルは、来年の世界ラリー選手権では、ヒョンデの変革への取り組みが実を結ぶことになると信じている。チームには今季、新代表としてシリル・アビテブールが就任、WRCでの実績を誇るフランソワ-クサビエ・ドゥメゾンがチームエンジニアとして加わり、マシンは少しずつパフォーマンスを向上させている。さらに来季はオイット・タナクが新たにフル参戦のドライバーとして復帰、エサペッカ・ラッピ、ダニエル・ソルドといったメンバーに加えてアンドレアス・ミケルセンというWRCイベントで優勝した実績を持つスタードライバーが揃うことになった。

2024年はヌーヴィルにとってヒョンデにおける11年目のシーズンとなる。タイトル争いで勝てないまま、35歳を迎えたが、ヌーヴィルは悲願の王座に向けてチームがこれまで以上に強力になりつつあると自信をみせている。「僕は今のチームの体制に自信を持っている。これほど自信を持てたのは初めてかもしれない。タイトルは僕の目標だし、そのために戦うつもりだ」

■ティエリー・ヌーヴィル
生年月日:1988年6月16日(35歳)
選手権ランキング:3位
獲得ポイント:189点
ベストリザルト:1位
優勝回数:2回
2位の回数:4回
3位の回数:2回
表彰台回数:8回
出場回数:13回
ベストタイム回数:40回
リードしたステージの数:38SS
リタイア数:1回
ラリー2の回数:3回
パワーステージ勝利数:2回
パワーステージ獲得ポイント:27点