WRC2023/12/29

【TOP10-第5位】勝田貴元

「進化は第二段階へ」

(c)Toyota

Katsuta Takamoto
Toyota GAZOO Racing WRT

勝田貴元は一年前、その信頼性の高い走りから、「ミスター・コンシスタンシー(安定性の男)」と称賛されることになった。しかし、いまや彼の進化は第二段階を迎え、トップレベルで十分に戦える領域へのスピードへと自らを高めた。

どちらかといえば、勝田の2023年は不安定なスタートだった。スウェーデンは横転して冷却系にダメージを負ってエンジン破損、初挑戦となったメキシコでは徐々にペースを上げていたが、グリップが低いセクションでコースオフしている。

ポルトガルではオルタネーターの故障で2ステージを走ったところでリタイア。サルディニアではそれを吹き飛ばす速さをみせて3位につけたが、難所モンテレルノの滑りやすい終盤でオーバーシュート、土曜日にはウォータスプラッシュで冷却系を壊してリタイアになっている。

勝田は得意のサファリでは4位、しっくりこなかった高速戦エストニアでの7位のあとフィンランドで何かをつかむことになった。

カッレ・ロヴァンペラを含め多くのライバルたちがリタイアとなったほど、フィンランドは雨でてごわいコンディションとなったが、勝田は3回のベストタイムでヨーロッパ・ラウンドでは初となる表彰台を達成することになった。

シーズン序盤のクロアチアとモンテは6位に終わっていただけに、6カ月ぶりのターマックラリーとなったセントラル・ヨーロッパは、ジャパンに向けて重要となった。雨と泥の悪夢のような路面に翻弄されながらも、ドライになり始めた土曜日には3番手タイムを刻み、母国戦に向けていいペースを掴んで5位でフィニッシュすることになった。

そして迎えたジャパン。勝田は一年前より明らかに落ち着き、そして自信に満ちていたが、激しい雨が打ち付ける金曜日の朝、アクアプレーンに見舞われてスピン、フロントを大破して31位まで後退してしまう。

それにしても、この問題が発生したオープニングステージの勝田は凄まじい速さだった。9.31kmのスプリットタイムの時点ではエルフィン・エヴァンスに対して13秒のリード、カッレ・ロヴァンペラには実に18.8秒もリード、これは1kmあたり2秒以上も速いペースだったのだ。

あの土砂降りでの異常な速さは、ただの無謀だったのか。しかし、サービスへと戻ってきた勝田は、ペースノートになかったあの水たまりを除けば、難しいグリップレベルの変化にきわめて自信を持てていた明かし、「まだラリーに残っているし、まだまだ先は長いので、最後まで攻めるつもりです」と目を輝かせた。

がっかりなスタートになったが、彼はそのショックをまったく引きずらず、10回のベストタイムを刻み、5位までポジションを上げてフィニッシュすることになった。

むろん、勝田にとっては勝利への手応えがあっただけに悔しさもひとしおだろうが、2015年に渡欧して、2016年のフィンランドWRCデビューを果たし、気がつけばもう65戦目のWRCとなったジャパンでついに勝利が見えるラリーを戦った。

2024年、勝田はトヨタのワークスチームからフル参戦を果たす。表彰台争いの繰りかえしのなかで、優勝はきっと遠くない日に達成できるはずだ。毎戦ドキドキさせてほしい!

■勝田貴元
生年月日:1993年3月17日(30歳)
選手権ランキング:7位
獲得ポイント:101点
ベストリザルト:3位
優勝回数:0回
2位の回数:0回
3位の回数:1回
表彰台回数:1回
出場回数:13回
ベストタイム回数:19回
リードしたステージの数:0SS
リタイア数:1回
リスタートの回数:3回
パワーステージ勝利数:0回
パワーステージ獲得ポイント:14点