WRC2023/12/28

【TOP10-第7位】オイット・タナク

「茨の道のような試練」

■オイット・タナク

Ott Tanak
M-Sport Ford World Rally Team

Mスポーツに復帰したオイット・タナクは、モンテカルロで5位、そしてスウェーデンで優勝を飾り、狙いどおりに二度目のワールドチャンピオンに向けて順調にシーズンのスタートを切ったようにも見えた。

しかし、選手権リーダーとして一番手スタートという不利な条件で迎えた次戦メキシコはターボ破損、トランスミッションの不具合、最終日もダンパーの破損といったトラブルが立て続けに襲いかかった。

クロアチアではブーストやパワーステアリングなどに問題が発生、2位でフィニッシュしたとはいえ、タナクの表情はけっして明るいものとはいえなかった。タナクはここでも小さな技術的な問題にじわじわとタイムを削られたことに不満をみせながらも、それよりマシンのスイートスポットを見つけだせないでいることが問題だと認めた。

タナクはポルトガルではウォーターポンプ破損もあり、あわやリタイアの危機をのりこえながらも4位でフィニッシュしたが、プーマを木馬や暴れ馬に例えるなどマシンは彼の思いどおりに走らず、マシンとの完璧な相性にはほど遠いと訴えた。

また技術面においてもライバルたちのマシンがどんどん進化するなか、プーマが1年前から何も進化していないとタナクは失望したように語っていたが、もちろんMスポーツが何もせずに手をこまねいていたわけではない。チームはこのイベントのあと唯一、専用のグラベルテストを行い、サルディニアでは新しいレイガーのダンパーを投入するも、ウォータースプラッシュのあと電気系統のシャットダウンでマシンを止めることになり、チームを失望させることになった。


なんとかタナクのドライバーズ選手権での挽回を図るために、Mスポーツは彼の母国ラウンドを前にローカルイベントに参戦して最大限の努力を行ってエストニアに臨んだが、シェイクダウンでのエンジン破損という悪夢によってスタート前に5分という重いペナルティを課せられてしまった。

タナクは次戦フィンランドでもスタート早々に路面からの衝撃によってエンジンを破損、森のなかでラリーを終えることになった。その原因は異なるだろうが、2戦続けてのエンジントラブルは、彼のチャンピオンシップへの望みを絶つ痛恨の一撃となってしまった。

チリではまったくトラブルにも見舞われずにシーズン2勝目を飾り、やっとプーマが思いどおりに仕上がったようにも見えたが、彼はその勝利の数日後、Mスポーツを離れ、新シーズンはふたたびヒョンデで走ることを発表する。

わずか一年前にヒョンデに失望して契約を残しながらもチームを離れたタナクだが、「新チームは首脳陣を一新し、以前とは別のチームになったことが移籍を決めた理由になった」と彼は説明している。

その言葉はぶっきらぼうで、ときに辛辣にチームを非難することもあったが、タナクはステアリングを握ってステージに挑むや、茨の道のような試練を何度も受けながらも一度も勝負を投げ出したりすることなく、常にベストを尽くしていた。集中力がまったくそがれてないことは、彼がミスをまったくしないことでも証明されている。彼のラリーへのひたむきさが、来季こそ幸運を呼び込むことを期待したい。

生年月日:1987年10月15日(36歳)
タイトル:WRC(2019)
選手権ランキング:4位
獲得ポイント:174点
ベストリザルト:1位
優勝回数:2回
2位の回数:1回
3位の回数:1回
表彰台回数:4回
出場回数:13回
ベストタイム回数:30回
リードしたステージの数:27SS
リタイア数:1回
ラリー2の回数:1回
パワーステージ勝利数:1回
パワーステージ獲得ポイント:18点