セバスチャン・オジエは、今シーズン最終ラウンドのラリー・ジャパンに臨むにあたって、ここ10年以上経験したことのない重圧にさらされていただろう。しかし、結果を求められるなかで迎えたパワーステージで彼はベストタイムを奪って、トヨタにマニュファクチャラータイトルをもたらすことになった。
8度の世界チャンピオンであり、今年40歳となったオジエは、ここ数ヶ月のイベントで自身の賢明さに疑問を抱き始めていたかもしれない。彼の輝かしいキャリアの中で最悪の結果が続き、ミスが重なってギリシャでは14位、チリでは36位に沈んだ。またセントラル・ヨーロピアン・ラリーでも、日曜日の朝にラリーリーダーのオイット・タナクからわずか1.5秒遅れにつけていたにも関わらず、クラッシュを喫した。
「疑問を抱いたとは言えないが、もちろん本当に悔しかった」とオジエは10月のことを振り返った。「多くは不運によるものだと感じていたけれど、結局のところ、それを避けるために自分の側で何ができるかを常に分析する必要がある」。
ラリー・ジャパンにおいても、オジエの運命がすぐに変化したわけではなかった。ラリーの最初のステージでホイール交換のために停車し、ライバルに2分以上の差をつけられて優勝争いからは脱落、その後、勝田貴元とアドリアン・フールモーを追い抜いて3位に浮上したが、トヨタのマニュファクチャラーズタイトル獲得は厳しいものとなった。
しかし、近年まれに見る接戦となったタイトル争いのなかで、最後にもうひと波乱が待ち受けていた。日曜日の最初のステージで、ラリーリーダーのタナクが右コーナーで大きくスライドして激しくクラッシュしたのだ! これによりドライバーズタイトルはタナクのチームメイトのティエリー・ヌーヴィルに明け渡され、マニュファクチャラーズタイトル争いは残り3つのステージでトヨタとヒョンデのポイントが並ぶ状況となった。
「最終ステージは『昔のセブ』に戻ったようだった。今シーズンはいいステージがいくつかあったけど、間違いなく最高のステージだった。フィニッシュラインを通過してすぐに自分のタイムを見て、大丈夫だと確信した。フィーリングが正しかったことが確認できた」
オジエはヌーヴィルを1.9秒上回り、トヨタが3ポイント差でマニュファクチャラーズタイトルの栄冠に輝いた。
「最終的にクリーンな走りをすることが、この状況を打開する最善の方法だとわかっていたけれど、2つ目のステージを終えた時点では、シーズンをいい形で締めくくることは難しく思えた。しかし、少なくとも僕たちは戦い続け、今シーズン最後のステージでタイトルを獲得し、その努力が報われた。チームの喜びを目の当たりにできるのは、最高の気分だ」
パートタイム・シーズンだったはずの今シーズンを振り返り、オジエはドライバーズ選手権での結果はともかく、計画を変更したことに後悔はないと主張する。
「僕とチームのためには、あの時、このカードを切る必要があったと思う」とオジエは振り返った。「だから、僕たちはそれをやろうと決めた。たとえそれが望んでいたほど良い結果にならなかったときでも、僕たちは決してあきらめなかったし、もちろんマニュファクチャラーズ選手権で結果を出すためにチームと協力することを惜しまなかった」
「ドライバーズタイトルに関して後悔はない。シーズン序盤の6つのイベントで素晴らしい走りができたので、それはシーズン半ばの目標になった。僕はもしシーズンをやり直すとしても、またまったく同じ選択をすると思う。何度も言っていることだが、僕は今のライフワークバランスにとても満足しているし、8つのタイトルに誇りを持っている。タイトルがもう一つ増えても減っても自分の中では大きな違いはない。だから間違いなく後悔はなく、チームとともにこの目標を達成できたことをうれしく思っている」