WRC2019/01/26

オジエがモンテをリード、ヌーヴィルが2秒差

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)開幕戦ラリー・モンテカルロのDAY2は、このラリーの特徴であるトリッキーな路面コンディションの中で、ディフェンディングチャンピオンのセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)が終始クレバーな走りを見せて首位に躍り出た。しかし、2位にはわずか2秒差でティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)がつける展開。勝利の行方はまだ見えない。

 伝統の一戦、ラリー・モンテカルロ最長の一日となるDAY2は、ドラマのラリーと呼ばれる不確実性が支配する同イベントらしい幕開けとなった。この日最初のステージ、SS3、ヴァルドローム〜シゴッティエは、フランスで絶大な人気を誇るラリーアイドル、セバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペWRC)とオジエの対決をひと目見るべくファンが大挙して詰めかけ、ステージの安全が保証できない事態となり、キャンセルされることになる。

 結果的にこのステージキャンセルは、ラリーの行方に微妙な影響を与えることになる。朝のループの中でもこのステージがもっとも凍結が多いとされていたため各クルーはスタッド付きのウインタータイヤを多めに選んでいた。ステージキャンセルによって安全策を採ったドライバーは割を食う羽目になる。たとえばオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)とオジエはスタッドタイヤ4本でこのループに臨んでいたし、ヌーヴィルもスタッドタイヤ3本を選択していた。

 この日のオープニングステージとなったSS4ルシュ〜ラボレルはほぼドライコンディション。タナクとオジエはスタッドタイヤ2本とスペアのドライタイヤ2本をクロスで装着して挑んだが、思うようにタイムを伸ばすことができずに失速。スタッドタイヤ1本をリヤに装着しドライタイヤ3本を合わせたヌーヴィルがタナクとオジエをかわして首位に浮上する。そして、すべてドライタイヤで走ったローブがステージ終盤で左リヤタイヤをパンクさせてしまうが、それでもベストタイムを刻むことになった。

 SS5、キュルバン〜ピェギュのステージは、一転して凍結路面が多く、スタッドタイヤ有利。ここではオジエが反撃の狼煙を上げてシトロエン移籍後初のベストタイム、スタッドを多めにもっていながら前ステージの無理な走行でタイヤにダメージを負っていたタナクを抜いて2位浮上を果たす。2番手タイムはヌーヴィル。「まあ、うまくいったよ」とコメントしていたが、オジエに3.4秒差まで迫られている。前ステージで浮上を果たしたローブは、インカットした前走車が掻き出した泥に阻まれ、タイムが上がらない。

 朝のループを終えて、首位はヌーヴィル。オジエが3.4秒差で続き、3位は16.9秒差でタナク。ローブは首位から50.6秒差の4位だ。5位にはアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)がローブの後方12.8秒差につける。6位は慎重にラリーを進めるヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)がその後方2.2秒差に続く。シトロエン移籍第1戦目のエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)は7位。タイヤ選択が適切ではなかったとしながらも「それは他のクルーも一緒だし、言い訳にはならないね」と自身のパフォーマンスを冷静に分析している。

 朝のループではキャンセルになったヴァルドローム〜シゴッティエのルートは、午後になって凍結区間は減ったとはいえ、カラベ峠付近の登りセクションにはアイス路面が残っており、ここに関していえば、スタッドタイヤの選択が正解。ベストタイムはオジエとともに4本ともスタッドタイヤを装着したラトバラが分け合う。首位のヌーヴィルはスタートした直後の左コーナーでアウトに膨らんでコースを外れ15秒近くをロスすることになったが、その後チャージしてベストタイムから2秒落ちのタイムを刻んで辛うじて1.4秒差で首位をキープした。

 午前のループでドライタイヤを履いてポジションアップを果たしたローブは再びドライタイヤを選択するギャンブルに出たが、ここでは策は裏目にでてしまい37秒余りを失い、4位から7位へと一気にポジションを落としてしまうが、SS7、2回目のルシュー〜ラボレルではふたたび攻勢に出る。1回目の走行よりも15秒あまり速いベストタイムを記録して気を吐いた。

 このステージでは、コーナーをインカットした際に左フロントホイールを壊したタナクが、ステージ途中7km地点で交換のためにストップ。3位から8位まで後退している。

 首位争いに目を転じれば、オジエがドライ路面で猛チャージを開始、彼より1本多めのスタッドタイヤを選んだがためにペースが上がらないヌーヴィルを尻目に、3番手タイムを刻んで14秒差をつけて首位に躍り出た。「計画通りだ。僕らはティエリーとは違うタイヤを選び、スリックを1本多く持っていた。普段ならカットするコーナーもダメージを避けるために通らずにタイヤを温存した作戦もうまくいった」とオジエは振り返る。

 ミケルセンとラトバラの4位争いも熾烈を極めた。ミケルセンは初日にステージフィニッシュのサインを間違えるという凡ミスで9位と出遅れながら、午前のループではコンスタントに好タイムを並べて復調。SS7ではアグレッシブに攻め、インカットし過ぎてマシンが煽られ、あわや転倒というシーンを切り抜け、4位へポジションを上げた。ラトバラもこの日のオープニングステージでのタイヤ選択ミスで9位までポジションを落としていたが、SS5では3番手タイム、SS6ではオジエと同タイムとなるベストタイムを奪い浮上してきた。SS7終了時点でふたりの差は7.8秒。さらにミケルセンは4.5秒差の3位ローブの背中を追う意気込みだ。

 この日の最終、SS8、2回目のキュルバン〜ピェギュは、夕方になって気温が下がってきたことから、一部区間の凍結が始まり、トリッキーなコンディションとなった。「アイス区間は慎重に走った」というオジエが首位を守ったものの、追うヌーヴィルは「(SS6の)ミスを帳消しにする走りができた」とオジエよりも12秒速いベストタイムを刻み、その差わずか2秒にまで詰めてきた。

 ミケルセンとラトバラは互いにプッシュしあって好タイムでこの日を締めくくる。ドライタイヤのギャンブルに出たローブが凍結したセクションで失速したため、それぞれ3、4位のポジションを上げてこの日を終えた。ふたりの差は7.4秒。5位に落ちたとはいえ、ローブもラトバラから0.8秒で続き、明日も3人による激しいバトルになりそうだ。

 6位にはエルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)。「タイヤ選択が少しずつズレていたんだろうね。ペースも掴み難かった」と苦悩の1日を振り返った。7位にはSS7でタイヤ交換を余儀なくされたタナクがつけている。

 ヤリスWRCとともに心機一転、新たなキャリアへと踏み出したクリス・ミークは、前日のパンクでの出遅れを挽回すべくこの日に臨んだが、SS5でラジエターグリルを落ち葉が塞ぎ、最後の5kmほどをターボブーストを失ったまま走行することになりタイムロス。さらにタナクがホイールトラブルに襲われたSS7でも彼も同じようにリムを壊してストップ。トップからは5分33秒あまりも遅れた8位でこの日を終えることになった。

 ラッピは、SS6で岩にヒットさせ、左フロントサスペンションをドライブシャフトを破損、リタイアとなった。また、同じステージではMスポーツ・フォードでのデビュー戦で堅実な走りで完走を誓っていたポントゥス・ティデマンド(フォード・フィエスタWRC)が、13.6km地点でサスペンションを壊してストップ、リタイアとなっている。

 明日、土曜日はアニェール・アン・デヴォリュイ〜コール(29.82km)、サン・レジェ・レ・メレーズ〜ラ・バティ・ヌーヴ(16.87km)の2つのステージを2回ループする構成となっている。