FIAワールドモータースポーツカウンシル(WMSC)は、WRCワーキンググループが提出したWRCの将来に向けたロードマップにしたがって、WRCに新たにスプリントスタイルのイベントと耐久イベントを導入するほか、サービスパークのコンパクト化でリモートサービスを認めることなどを盛り込んだフォーマット改革案を承認した。
WRCワーキンググループはFIA会長のモハメド・ベン・スラエムの要請を受けて「ラリーの将来的な方向性を評価し、提言する」ことを任務として昨年12月に結成され、FIA副会長のロバート・レイドとモータースポーツUKの会長を務めるデビッド・リチャーズの二人の代表のもと、FIAロードスポーツ・ディレクターのアンドリュー・ウィートリーとFIAテクニカル・ディレクターのクザビエ・メステラン-ピノンをメンバーに加えてWRCの将来に関する提言をとりまとめてきた。
WMSCが承認したWRCの道しるべのなかには、2021年からWRCに導入されたハイブリッドRally1カーのレギュレーションを大幅に見直し、来季からはハイブリッドシステムを搭載しないという決定のほか、WRCのスポーティングレギュレーションの変更とともにプロモーションの改革を進めるよう目標を提示した。
すでに今季のラリー・イタリア・サルディニアが金曜午後から日曜昼過ぎまでの48時間での開催を発表したように、ロードマップは各イベントの主催者にルートを決定する際の自由度を提供している。ただし、イベントの開始日やステージの走行距離は様々であっても、すべてのラリーはパワーステージで日曜日に終了する必要がある。
これにより来年のWRCカレンダーには、既存のフォーマットに沿ったラリーに加えて、スプリントスタイルのイベントと耐久ベースの長いラリーが含まれるが、シーズン全体の走行距離は変わらない。
参戦コストを削減するためのさらなる努力として、サービスパークに関しても、マニュファクチャラーは3台体制のチームで作業することができる人数を制限され、現地で調達の建造物を作業スペースに使用するという新しいモデルに従うことになる。
これによってチームにとっては、コスト削減だけでなく、輸送やロジスティクスの必要性を減らすことになるほか、ラリー全体にとってはサービスパークをよりフレキシブルなものにし、イベント中にサービスを変更できるようにすることが可能となる。
サービスパークは過去20年間、WRCラウンドの中心的な拠点となってきたが、イベント主催者がサービスパークに必要とする総面積も削減できることになり、リエゾンセクションの距離を縮め、イベントの範囲を広げることができるようにするためリモートサービスも許可されることになる。チームは小型のサポート車両で限られたパーツを運ぶことが可能となる。これらを定めたWRCスポーティングレギュレーションの詳細は6月のWMSCのあと月末までに発表される。
また、WRCワーキンググループは、FIA内にWRCプロモーションチームを設置し、シリーズに関わるすべてのステークホルダーと緊密に協力しながら、シリーズにまつわるプロモーションのさらなる機会を活用することを提言しており、WMSCはこの目標に向けて進めることを承認した。
FIAのモハメド・ビン・スライエム会長は、次のように語った。
「WMSCのメンバーは、WRCワーキンググループの提言を慎重に検討し、策定された一連の目標を支持することで一致した。WMSCによって承認されれば、WRC委員会はWRCの将来的な方向性を決定するための提案をまとめることができる」
FIAは先日、ラリーファンに向けてWRCの将来に関する空前の規模でのアンケートを実施しており、WRC委員会の代表は、その専門知識と経験を活用するだけでなく、1万1,000人以上から回答を得たこの調査の結果も考慮することになる。
「WRCファン参加型アンケートの結果は、WRC委員会が最終案を起草する過程で慎重に検討されることも重要だ。参加されたすべての方々に感謝したい」とビン・スライエム会長は付け加えている。