エストニアメディアの『Postimees』誌によれば、オイット・タナクは、エストニアのTV番組『Morning with Anuga』のインタビューにおいて、病いと闘う家族を支えるためにラリーキャリアを一時的に中断しようとした時期があったと明かしたという。
タナクは、一昨年、妻ヤニカ・タナクが進行性の乳がんと診断され、困難な治療が続いていたときには、最愛の家族を支えるためにラリーを棄権して家に帰ろうとしたこともあったと告白している。
タナクは、ヤニカの病いが幸いにも現在はコントロールされているが、それでも夫妻にとっては非常につらい時期があったと認めている。
「あのような瞬間を忘れるのはとても難しいと思う。そして、決して忘れることができないものなんだ。最初は、どこかに奇妙なしこりがあることを見つけたときだった」とタナクは語った。
タナクの妻は医師の検査を受け、家族のつらい時期はそこから始まったという。
「生検が行われたあと、(ヤニカは)手術を受けることになった。良い知らせが出るという希望と信念があったが、非常に悪い知らせであることが判明したんだ。とても辛い時期だった」
タナクが、妻のヤニカが進行性の乳がんだと診断されたと知ったのは、WRCの次のラウンドのためのテストに向かう途中だったという。飛行機が離陸する直前、彼はチームに、テスト走行に向かう代わりに早く家に帰る必要があることを伝えた。
タナクは、妻が最も困難な時期に彼女のそばにいるためにキャリアを中断する用意があったことを認めた。
「必要なら、ということでもなかった。むしろ、最初のころは、化学療法を受けていたときでも、私は家にいて、一番大変な数週間を幸いにも家族と過ごすことができた」
「僕は子供たちの相手をしていたし、家事全般はまだうまくいっていた。その後、ある時点で彼女の心臓に問題があり、血栓もあることがわかった。そのとき、すべてがちょっともう限界だと感じたんだ」
「フィンランドのラリーが始まるとき、僕はもう走らずに家に帰るからと彼女に言ったんだ。でも彼女は僕にラリーを続けなければならないと言った。それが彼女の願いだったんだ」
タナクは、エストニアの「小児がんの子どもを持つ親の会」が主催するダック・ラリー(Pardiralli)のヘッドコーチを務める。ダック・ラリーは、小児がんの子どもたちとその家族を支援し、この深刻な病気と闘う人々の意識を高めるために開催されており、6月7日には第11回ダック・ラリーが開催される。
「僕と僕の家族はがんとの闘いがどれだけ複雑で疲弊するかを間近で見て、経験した。しかし、小さい子が重い病気になると、その家族の戦いもまた何とも言えないほど難しくなる。 残念ながら、これは誰もがぶつかる過酷な現実であり、アドバイスとサポートの両面に役立つ支援ネットワークが重要なんだ」