2024年世界ラリー選手権(WRC)第8戦ラリー・ラトビアは21日に最終日を迎え、カッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)が今季3勝目を飾った。39.2秒差の2位にはセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)が続き、トヨタGAZOOレーシングWRTが前戦に続いて1-2フィニッシュを達成することになった。
ラリー・ラトビアの最終日はディエンヴィドクルゼメ地方のスペシャルステージへと向かい、クロッツェムジ(18.70km)、マジルマーヤ(13.34km)の2ステージをノーサービスで2回ループする4SS/64.08kmの一日となる。
WRC初開催のラトビアは土曜日を終えて、ロヴァンペラが首位、オジエが42.5秒差の2位、3位には初の表彰台に期待がかかる新星マルティンシュ・セスクス(フォード・プーマRally1)が続いている状況だ。トヨタ勢がこの週末は速さをみせてきた一方、ヒョンデ勢の最上位はセスクスから20.8秒差の4位につけるオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)となっており、マニュファクチャラー選手権のタイトル争いでは劣勢を強いられている。
ヒョンデは前戦のラリー・ポーランドを終えてトヨタに10ポイントの差をつけて選手権をリードしてきたが、ラトビアの土曜日を終えて暫定で332ポイントにとどまり、勢いに優るトヨタは334ポイントへとポイントを伸ばし、選手権トップを早くも奪回した計算だ。
それでも、二人のワールドチャンピオンを擁するトヨタはヒョンデにさらなるダメージを与えるべく、オープニングステージのSS17クロッツェムジから圧巻の速さをみせる。
ベストタイムは2位につけるオジエ、土曜日を終えて4.7秒後方に食らいついてきたセスクスを突き放し、その差を9秒へと広げることになった。2番手タイムにはロヴァンペラが続き、総合トップを堅持することになり、スーパーサンデーでもトヨタの2人がリードすることになった。
ロヴァンペラはすでに41秒という大きなリードを得て、勝利に向けてクルージングモードに切り換えたいところだが、チームのポイントを獲得するためにもアクセルを踏み続けるつもりだと彼は語った。「今のところトヨタの1-2なのですべて順調だ。チームを助けるためにここに来たので、日曜日のポイントを獲得する必要がある。個人的には良いリードを持っていて勝利のために戦いたいときに、その任務はあまり楽しくないが、僕たちは両方できるはずだ」
最終日を3番手タイムでスタートしたのは4位につけるタナクだ。前夜の最終ステージで見舞われたドライブシャフトのトラブルがなければ、セスクスとの差はもはやないも同然だったが、残された3ステージで18.6秒差を縮めることは困難なようにもみえる。「僕たちは選手権で(ヌーヴィルから)かなり遅れているので、残りのステージでより速く走る以外の選択肢はない。間違いなく難しいステージだが、あと3つ、どうなるか見てみよう」
タナクにとってはすでに土曜日までの順位でのポイントが確定している以上、総合順位を上げることに意味はないが、キャリア初表彰台がかかったセスクスにとっては正念場だ。3日間にわたってワールドチャンピオンを相手に奮闘してきた24 歳のルーキーは、自らを奮い立たせるように3位を守りたいと決意を露わにする。「まだ3つステージが残っているし、僕たちはここまで良いタイムを出してきたので、それを続ける必要がある」
スーパーサンデーのポイントが重要なのはタナクだけではない。ワールドチャンピオンを争うティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)とエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)はこのステージでまったく同タイムを記録、火花を散らすことになった。
総合6位につけるエヴァンスは、「簡単なところで数秒を無駄にしてしまった」と語り、より不利なポジションからスタートした8位のヌーヴィルは「フラットアウトだった」と語ったが、滑りやすくなったシケインでは苦戦しているようだ。「マシンが曲がれず、出口で加速しなかった。出走順が早いのは不利になるよ」
SS18マジルマーヤもルースグラベルが多く、ここでもストローベイルがおかれていくつものタイトなシケインが設けられている。ハイスピードからシケインに飛び込む際のブレーキングに注意が必要になることを、地元出身のセスクスも十分認識していただろう。だが、勢いにまかせてチャレンジを楽しんできたはずが、表彰台を守ろうとした瞬間に少しずつリズムも狂いだしたのだろうか、彼はジャンクションでオーバースピードのためワイドになってしまいベストタイムを奪ったタナクより5.9秒も遅れ、マージンは12.7秒へと減ってしまった。「大きなミスを犯して何秒も失った。ジャンクションでミスをしてしまい、間違いなくタイムを落としたよ・・・」
タナクはSS19クロッツェムジでも連続してベストタイム、スーパーサンデーでもオジエと並んで暫定トップに浮上するとともにセスクスとの差を4.6秒差へと縮めることになった。
そして迎えたパワーステージ、ロヴァンペラは轍が刻まれたコースでややペースを落としたものの、自身が10代のころにラリーキャリアをスタートした思い出の地で今季3勝目を飾ることになった。「素晴らしい週末だった、僕にとっての3つ目のホームラリーがあるというのは本当にクールだね。そしてここでの初勝利というのはまさにクールだ、ラトビアは僕にとって大事な場所だからね。フィンランドはチャレンジになると思う。また懸命に頑張るよ」
ロヴァンペラから39.2秒差の2位で続いたオジエはチームメイトの速さにまったく敵わなかったと悔しさをみせたが、トヨタに1-2勝利をもたらしたことを喜んだ。「いい週末になったのは確かだ。今週末はチームのためにたくさんのポイントを獲得することが目標だった。カッレには全然敵わなかったよ。このポジティブなポイントを喜びたい」
最終ステージでは、それまでセンセーショナルな走りを続けてきたセスクスが初表彰台を達成できるか世界のファンが注目することになったが、彼は最初のコーナーからデフに問題を抱えてペースが上がらず、1分45秒あまりも失って3位から7位へと後退することになった。
ポディウムの夢はかなわなかったが、彼は涙など流すこともなく、ただただ素晴らしい週末に感謝していると笑顔で語り、マシンのルーフに駆け上がって観客からの拍手と喝采に誇らしげに手を降って応えていた。「最初のコーナーでデフか何かの問題か分からなかったが、これで終わってしまった、ということだけはわかった。でも、自分たちのペースを見せられたし、みんなを喜ばせることができたと思う!」
タナクは3位でフィニッシュ、パワーステージとスーパーサンデーを制することになり、自身を本気にさせたセスクスを称えていた。「彼は道を良く知っていて、経験もあると言っても、そのドライビングはもう誰が見たって文句なしに素晴らしい。初表彰台だったなら、もちろんもっと素晴らしいだろうけど、結果はどうあれ、この週末は彼をよりハードに強く成長させた。彼は僕たちに本気でプッシュさせた、本当に良くやった」
パワーステージの前にエンジンに技術的な問題を抱えながらもアドリアン・フールモー(フォード・プーマRally1)が4位でフィニッシュ、5位にはエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)、6位には勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)が続くことになった。
前日のパワーステアリングのトラブルで表彰台のチャンスを失っていた勝田は、パワーステージではヌーヴィルを抑えるために渾身のプッシュをみせたが、100分の数秒及ばず4番手タイムに終わったことを悔しがった。「ヌーヴィルより速くなければ満足できない。これが今日の目標だったからね」
ヌーヴィルはフラストレーションのたまる週末を8位でフィニッシュ、エサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 N Rally1)も9位で最終ステージをフィニッシュしたものの、エンジンに問題があるためチームはステージ後にリタイアを判断、グレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマRally1)が9位となっている。
第8戦ラリー・ラトビアを終え、ヌーヴィルはダスティな路面でのスウィーパーとして苦しみながらも合計145ポイントでドライバーズ選手権でのリードをキープ、日曜日のフルポイントを達成したタナクが2位へと浮上、チームメイトに8ポイント差に迫ることになった。エヴァンスは3位に後退したとはいえ、リーダーとの15ポイントの差を13ポイントへと縮めることになった。
また、マニュファクチャラー選手権では、前戦に続いて1-2ポディウムを達成したトヨタがヒョンデを逆転するかにも見えたが、タナクの最終日のがんばりでヒョンデが1ポイント差ながら選手権のリードを守ることになった。
次戦は8月1日から2日にかけて行われるラリー・フィンランドだ。高速グラベル連戦でダブルポディウムを果たしたトヨタがホームでも速さを発揮することになるだろうか。