WRC2018/11/21

ニアミスのトラクターはシケインの作業車だった

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 ラリー・オーストラリアのセーフティに関していくつか問題になっており、ヒュンダイ・モータースポーツのアンドレアス・ミケルセンがステージを走行中にトラクターと接触しそうになったあとクラッシュした原因についてもFIAが調査に乗り出すなど波紋を呼んでいる。

 ミケルセンは金曜日、シェアウッドのステージを走行していていたとき、シケインとして置かれた大きなストローベイルを越えた瞬間、突然、道路の真ん中に大きなトラクターが目の前に現れたためあやうく接触事故を起こすところだった。彼はどうにか回避できたものの、動揺したためペースノートを聞き漏らしてクラッシュしたと説明している。

 当初、なぜこのトラクターがステージに迷い込んだのか、奇妙なことだとされていたが、ラリー・オーストラリアの関係者によれば、このトラクターはラリーカーの走行によって位置がずれてしまったストローベイルを元に戻すために用意されていたものだと説明した。

 イベントのスポーティングディレクター、エイドリアン・スタッフォードによれば、ヤリ-マティ・ラトバラがヒットして位置がずれたストローベイルを動かしたトラクターがステージ外に戻れずにミケルセンとニアミスしてしまったという。

「7号車が15.70km地点のシケインでストローベイルをヒットしてそれが道路を塞いでしまった。トラクターは近くの安全な駐車スペースにおかれていたが、主催者の判断を待たずにトラクターのドライバーが道路からベイルを動かし、元の位置に戻してしまった。そしてトラクターがベイルの位置を修正した直後、定位置に戻る前に4号車が到着してしまった」

「トラクターは道路の左側に寄っており、接触はなく、4号車のコースオフはその地点から1.2kmの先の高速のコーナーだった。主催者はさらなる問題を避けるためにトラクターの作業についてはコントロールしている」

 アクシデントはミケルセンにとっての100戦目のラリーが台無しになっただけでなく、マニュファクチャラー選手権を12ポイント差で追い掛けていたヒュンダイにとって最悪な出来事となったが、ミケルセンは安全性のうえでもステージをキャンセルすべきだと考えたほどだと訴えた。

「これが動物だったら仕方ないことだが、それは人間が運転するトラクターだった。僕はあまりにも危険だと思ったので、アンデルス(・ヤーゲル)にマシンを止めて、主催者にキャンセルすべきだと言ったほうがいいか聞いたが、彼はこのまま走るべきだと言った。しかし、そのあと僕は彼のペースノートが耳に入ってこなかったのでディッチに落ちてしまった。非常に重要なラリーを破壊したことについて、僕は失望しており、もちろん怒っている。なぜこのようなことが起きたのか調査が必要だ」

 当然のことながら、彼だけでなくラリー関係者の多くがこのトラクターとのニアミスに怒りの声をあげている。マニュファクチャラー選手権にとって痛恨の出来事になったヒュンダイ・チーム代表のミシェル・ナンダンは、「アンドレアスに起きたことはありえないことだ。このようなことは二度とステージでは起ってはならないことだし、世界タイトルを戦っている週末だけに起きてはならないことだった」と怒りの声を上げている。

 またドライバーたちも同様に批難の声を上げている。エサペッカ・ラッピは「これについて言い訳は許されない。あまりにも馬鹿げている。誰かが死んでいた可能性がある」と憤りの声を上げたほか、ヘイデン・パッドンも「なぜこうしたことが起こったのかを正確に調査して解決することが重要になる」と語っていた。

 このシケインはその後もラリーカーが走行するために位置が動いたが、このミケルセンのニアミスのあとはストローベイルを元にする作業ができなくなったため、シケインとしての役目を果たさなくなっていたようだ。

 FIAはこの問題を調査中だとしており、今後のシケインのあり方とともに協議されることになりそうだ。