WRC2019/04/28

ヌーヴィル独走、追撃タナクは突然のストップ

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・アルゼンチンは27日にDAY2を迎え、トップを猛追していたトヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が波乱のマシンストップに見舞われるなか、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が首位をキープ、チームメイトのアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が45.7秒差で続き、ヒュンダイが1-2態勢で最終日に臨むことになった。

 タナクは前日、2つのベストタイムで首位に躍り出したものの、最終ステージでドライブシャフトに問題を抱えてスピン、ヌーヴィルに首位を譲るとともに13.4秒差の3位へと後退することになったが、土曜日にどこまで挽回できるかに注目が集まった。

 雨が上がって雲一つない明るい朝をむかえたアルゼンチンの二日目、オープニングステージのSS9タンティ〜マタデロス(13.92km)の路面はまだ湿っているところはあるものの、すでに前日のコンディションが嘘であったかのように路面は乾き始めている。ヌーヴィルがここではタナクを0.4秒上回りベストタイムで発進、首位をキープすることになった。

 2位でこの日をスタートしたセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)はスタート前のサービスでリヤブレーキパイプに破損が見つかったものの、素早い交換によって事なきを得たものの、前日同様にペースが上がらない。彼はタナクに抜かれて3位へとポジションを落とすことになった。

 オジエを捕らえたタナクにとって残されたのは13.8秒前を走るヌーヴィルだけだ。タナクは続くSS10マタデロス〜クチージャ・ネヴァダ(22.67km)ではヌーヴィルに2.5秒差をつけるベストタイム、11.2秒差まで近づくことに成功した。

 ステージをゴールしたヌーヴィルは、タナクにタイムを縮められたことがわかっていたかのように、「自分のベストを尽しているがここらの道はまるでトヨタのために作られているようだ。彼らの方がエアロダイナミックに優れており、こういったところでスピードを得ることができる」と冷静に頷くことになった。

 プーニヤ渓谷のパンパのステージは最高速度が190km/hを越え、平均速度も114km/hに到達したほどのハイスピードで流れるようなコーナーが続く。このステージでタナクは昨年もベストタイムを奪っており、さらに連続して平均速度100km/hを越えるラリー最長のSS11クチージャ・ネヴァダ〜チャラカト(33.65km)ではヌーヴィルに6.1秒差をつけて、一気に5.2秒差の後方へと迫ることになった。

 朝のループの最後のステージは金曜日に続いてパルケ・テマティコ・スーパーSS(6.04km)の2回目の走行だ。ここではヌーヴィルが意地をみせてタナクの猛攻をしのいで6.4秒をリードしてサービスパークへと戻ってきた。「トヨタのエアロはここでは僕らよりいいようだ。オイットは非常に速くて、彼がプッシュし始めたら、戦っていくことが難しくなることは僕たちも分かっていた。しかし、僕たちのセットアップも良かったから、ここではずっと全開でいけた」とヌーヴィルは語り、午後のループでもタナクとの戦いが厳しくなることを覚悟しているかのようだった。

 タナクに抜かれたあとのオジエには勢いがなく、じわじわと遅れ始めていた。彼はさらにSS11ではジャンクションでの判断ミスからゲートにステアリングをヒットしてパワーステアリングを失って36秒をロス、トップ3から陥落、ミークに抜かれて4位に後退することになった。

 だが、このステージではミークもウォータースプラッシュの進入のブレーキをミス、出口でアウトにふくらんだ彼はバンクにヒットしてタイヤ2本のリムを破損、スペアを1本しかもっていなかった彼はSS12に臨むも18.5秒を失い、ベストタイムを奪ったアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)に3位を譲ることになってしまった。ミケルセンはミークがヒットしたバンクに同じように当たりながらも幸いにも難を逃れている。そしてパワステを失ったオジエはここでも25.4秒をロス、ダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)にも抜かれて朝のループを6位で終えている。

 ヴィージャ・カルロスパスのサービスパークを挟んで午後のループを前にして、タナクは「今日のコンディションは昨日の経験とは非常に異なっているが、僕は自分のマシンに満足しているし、この足を楽しんでいる」と、引き続き快調なペースを確信しているかのように語っていたが、誰もが予想していなかったまさかの事態が発生することになる。

 タナクはSS13タンティ〜マタデロスでは思ったほどペースが上がらず、7.2秒を失い、ヌーヴィルとの差は11秒へと広がってしまい、なんと続くSS14マタデロス〜クチージャ・ネヴァダの10.8km地点のコーナーのイン側に突然マシンを止めることとなってしまった。タナクはステージの前に無線でチームにバッテリーの充電に問題があることを報告していたが、為す術もなくリタイアとなってしまった。

 ヌーヴィルはタナクのリタイアを知らずにゴールを迎え、大きなプレッシャーから解放されることになった。「コーナーの内側でトヨタが止まっているのを見たが、それがタナクだったことは分からなかった」。彼はこの最後のステージでは堅実な走りにペースを落とし、大きな石がかきだされているなどラフなコーナーでは慎重な走りで首位をキープしてゴールを迎えることになった。

 タナクのトラブルで2位に浮上したのはミケルセン。2回目のループで勢いを増した彼は、この日の最終ステージをベストタイムで締めくくり、首位のヌーヴィルの45.7秒後方で続き、ヒュンダイ勢が1-2態勢で明日の最終日を迎えることになった。

 いっぽう、朝のループでミケルセンに抜かれたミークは、午後のループでポジションの奪還を狙ってプッシュしたが、タナクがリタイアしたこともあり、最後のステージの荒れたコンディションでリスクを冒すことを止めざるを得ず、ミケルセンの17.5秒後方の3位でこの日を終えることになった。

 パワーステアリングをサービスで修理したオジエは、午後のループで輝きを取り戻し、2つのステージでベストタイムを奪い、ミークの2.8秒後方まで追い上げてきた。

 5位にはダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)、6位にはヤリ-マティ(トヨタ・ヤリスWRC)、7位にはテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)が続いており、6位で土曜日をスタートしたエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)はSS9でリヤをスライドさせてしまい、巨大な岩にヒットして横転、リタイアとなっている。

 最終日は、コピナ〜エル・コンドル、ジュリオ・セザレ〜ミナ・クラベーロのあと、2回目のコピナ〜エル・コンドルがパワーステージとなる。オープニングSSは現地時間9時8分(日本時間21時8分)のスタートが予定されている。