ERC2024/09/01

パッドン、ERCケレディギオンを独走

(c)RedBull Content Pool

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 FIAヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第7戦のラリー・ケレディギオンのレグ1を終え、ディフェンディングチャンピオンのヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally2 )が後続に対して1分28.7秒という大差を築いてリードしている。

 パッドンは金曜夜、アベリストウィス・スーパースペシャルで2回の走行を終えて1.3秒のリードを築いてトップで終えることになったものの、土曜日に本格的な競技がスタートすると、このコースを知っている併催されている英国ラリー選手権に参戦するドライバーたちが速さをみせることになった。

 オープニングステージのSS3でベストタイムを奪ったのはウェールズ出身のジェームズ・ウィリアムズ(ヒョンデi20 N Rally2 )。ERC初の最速タイムを記録した彼は、前夜の10位からパッドンから1.4秒差の2位に躍進することになった。「危険だった。ここは僕のホームステージだ。あのスピードでそこを走れるなんて信じられない気持ちだよ。とてもうれしくて、言葉では言い表せないよ」と彼は喜びを語っていた。

 しかし、英国選手権のトップランナーはSS4の1.5km地点でクラッシュ、彼とコドライバーのロス・ウィットックはどちらも無傷だったが、大破した彼のマシンが道路を塞いでいたため、ステージは10台が走行したところでキャンセルとなっている。

 路面はドライコンディションだが、上下左右にうねるようなターマックステージは路肩からかきだされた泥でコーナーごとにグリップレベルが変化する難しさをもっている。パッドンはSS3こそ苦戦したが、続く26.55kmのSS4リン・ブリアンで後続に16.9秒差をつける圧巻のベストタイムを記録、リードを21.2秒へと広げることになったが、そのステージの難しさに圧倒されていることを認めた。「素晴らしい景色だが、難しいステージだった。あらゆるバンプで跳ね返され、どこでも底を打ってしまい、そんな状況では自信があまり持てなかった」

 ここで2位へと浮上した地元のクリス・イングラム(トヨタGRヤリスRally2)だ。2019年にERCチャンピオンに輝いた彼と昨年のERCチャンピオンであるパッドンの新旧王者のバトルが期待されたが、英国選手権のタイトルをシーズンの最優先に掲げるイングラムは、今週末初めてターマック競技で使用しているGRヤリスRally2のセットアップが柔らかすぎるとも感じていることもあり、がむしゃらに総合優勝を狙って攻めるつもりはない。

 SS5でもパッドンが連続してベストタイム、イングラムも2番手タイムで続いているが、その差は31.9秒へと広がっている。

 すでにイングラムと英国選手権のタイトルを争っているジュニアWRCチャンピオンのウィリアム・クレイトン(フォード・フィエスタRally2)はSS3のスタートから5.3kmの地点で左フロントタイヤをパンク、交換を余儀なくされたため51位までポジションを落としているだけに、イングラムとしても無理せず、着実に選手権ポイントを持ち帰ってリーダーを奪還することが重要になる。

 パッドンは午後になっても速さをキープ、午後のループの5ステージすべてにおおいてベストタイムを記録、イングラムに1分18.7秒差をつけてサービスへと戻ってきた。

「昨日の予選ではハードにプッシュしてロードポジションのアドバンテージを得た。クルマはすべてうまく機能しているので、とても良い一日だったことは間違いないが、(大きなリードを管理しなければならない)今はあまり楽しくない」とパッドンは語っている。

 2位のイングラムの8.7秒後方の3位にはパッドンと選手権を争うマティユー・フランセスキ(シュコダ・ファビアRS Rally2)が続いている。フランセスキとしては、選手権リーダーのパッドンが今週末のラリーがシーズン最終戦となる可能性があるだけに、可能な限りライバルに引き離されずにこの週末を終えることがタイトルのためにも重要となる。フランセスキはこの日の朝のループでは5位にとどまり、「いいリズムを取ろうとすると滑ってしまう。バンピーで、なかなかフィーリングがつかめなかった」と語っていたが、じょじょにポジションを上げてきた。

 とはいえ、フランセスキの2.4秒後方の4位にはミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRS Rally2)が続き、表彰台の残り1つを巡るバトルは最終日も激しくなりそうだ。

 チームMRFタイヤから初出場のシモーネ・テンペスティーニはフォルクスワーゲン・ポロGTI R5でのデビュー戦にもかかわらず、SS7まで3位につけていたが、右リアのサスペンションにダメージを負ってしまい、SS8を終えたところでマシンを止めることになった。「左コーナーのぬかるみで、少し滑り始めて草むらに入ってしまった。何が起こったのかよくわからないけど、何かにぶつかってしまったんだ・・・」

 テンペスティーニのリタイアによって史上最多となる5度目の英国選手権タイトル獲得を目指しているキース・クローニン(フォード・フィエスタRally2)が3位に浮上したが、彼は終盤のストリートステージでタイムを失って5位に落ちた。それでも彼は4位にマルツィックからわずか0.5秒遅れで続いている。

 チームMRFタイヤのアンドレア・マベリーニ(シュコダ・ファビアRS Rally2)が6位、カラム・デヴァイン(シュコダ・ファビアRS Rally2)が7位、ラリー・ケレディギオンで2度優勝しているオシアン・プライス(フォード・フィエスタRally2)が8位で続く。ジョン・アームストロング(フォード・フィエスタRally2)はスピンと右フロントタイヤのパンクから挽回し、総合9位でレグ1を終えた。

 イングラムのチームメイトであるウェールズ出身のメイリオン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally2)は一時3位につけてホームラウンドでの表彰台が期待されたが、ポップオフバルブの問題などで11位となっている。

 英国選手権のリーダーとしてイングラムとタイトルを争っているクレイトンは朝のパンクに続き、午後もさらなるパンクとスピンでディッチにマシンを落とし、32位という厳しいスタートとなってしまった。