次戦ラリー・フィンランドでの本格導入に先立ち、ラリー・ラトビアのシェイクダウン・ステージでドライバーたちはバーチャル・シケインが試す機会が与えられた。
バーチャル・シケインはステージの特定のセクションで制限された速度までスローダウンさせることをラリーカーに求めるだけで、実際にストローベイルなどの障害物が置かれたりマシンがシケインでコースを迂回することがない。そのため主催者にとっては障害物の管理の手間や物理的なオブジェクトを用意するなどのコストの削減につながり、競技者にとってもマシンのダメージが減る可能性がある。
バーチャル・シケインはサーキットレースのピットレーンの速度制限のようなものであり、ラリーにおいても安全で公平に速度を規制するためのソリューションとしての導入が以前から検討されてきたが、昨年のヨーロッパ選手権のラリー・ディ・ローマ・カピターレにおいてFIA国際イベントで初めて導入されている。
今回のラトビアのシェイクダウン・ステージに設置されたバーチャル・シケインは強制ではなく、それを初めて試す機会として設置されたものだった。そのため、それを使用するかどうかの判断はドライバーに委ねられており、このためシェイクダウンのタイムは必ずしもドライバーの速さを判定するものとはなっていない。
ラトビアでは、バーチャル・シケインはシェイクダウンステージのスタートから600m、ジャンプの直後にバーチャル・シケインのスタート地点として設置された。ラトビアではそこから200mのスローゾーンが設定され、ロードブックに記載されている指示速度60km/hに減速したあとは再びフル加速することになる。
ドライバーがバーチャル・シケインのスタート地点に到達すると、コクピットに搭載されるラリーセーフ・システム(ステージで赤旗が提示されるなどの通知をクルーに配信するシステムとして以前から搭載)にドライバーが到達すべき目標速度が標示され、その標示が切り替わることで必要な速度まで減速したことを確認できるという。
今回のラトビアではバーチャル・シケインのスタート地点には「VC Start」と記載された緑色の標示が立てられ、200m先のバーチャル・シケインの終わる地点には「VC End」と記載された赤色の標示が立てられていたが、「VC Start」ですぐにブレーキを踏まなければならないわけではなく、「VC End」までに必要な速度まで減速すればいいだけだ。
シェイクダウンで初めてバーチャル・シケインを試したドライバーの多くは、ラリーセーフ・システムの標示はダッシュボードの下にあり、ドライバーの視界には入らないため安全性に不安があるとコメントしていたが、FIAラリー・セーフティ・デレゲートのニコラ・クランジェは、安全性には問題はなく、WRCはこの新しい技術を利用しなければならないと述べている。
「FIAが計画しているシステムはうまく機能していないとの声がある。しかし、フィンランドでは、ステージで正式に導入されるのは初めてなので、バーチャル・シケインの200m手前のプレアーチ、100mのプレアーチ、大きなゲート入口、バーチャル・シケイン入口、200mの減速区間、その終了地点であるバーチャル・シケイン出口がある特定のアーチを用意する。だから、かなり目立つ。彼らは正面を見ていてもどこで減速すべきかを知ることができる」
「たとえば100km/hから指示されている60km/hや50 km/hに減速するとき、システムのスクリーンを見て確認する必要があるが、バーチャル・シケインが設けられるのは、長いストレートであるため、確認は十分に可能だ」
「私たちには技術があるのだから、それを使わなければならない。昨年、ERCローマで130台のラリーカーが走り、2つのバーチャル・シケインがテストされたが、何の問題もなかった。だから、うまくいくと思う」