ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第4戦のラリー・エストニアは、ゲオルグ・リンナマエ(トヨタGRヤリスRally2)は、スリリングな最終ステージでロベルト・ヴィルヴェス(シュコダ・ファビアRS Rally2)からラリー・エストニアの勝利をもぎ取り、ERC母国ラウンドの栄光をかけた2人の壮絶な戦いに決着をつけた。
ラリー・エストニアは今季、世界ラリー選手権から離れてERCとして開催されたが、ERCの常連選手たちを引き離して優勝争いを繰り広げたのは、エストニア出身の期待のWRC2ドライバーである2人だった。
一週間前のラリー・ポーランドでは、ヴィルヴェスがリンナマエに対し僅か0.6秒差をつけてWRC2の3位表彰台を獲得していたが、2人の戦いは母国のラリー・エストニアを迎えても一向に止むことはなかった。
土曜日の朝から最速タイムを競い合っていたヴィルヴェスとリンナマエは、1日を終えてもわずか1秒差でヴィルヴェスがリードしているという白熱の戦となっていた。
逆転を狙うリンナマエは、日曜日の最初のステージであるオテパーのマディなセクションで大きくスリップし、ヴィルヴェスに3.6秒遅れをとった。彼はカンブジャの1回目の走行で追い上げたが、ヴィルヴェスはオテパーの2回目の走行で再び素晴らしい走りをみせ6.4秒の差をつける最速タイムを記録し、パワーステージを前にリードを9.3秒に広げた。
変わりやすい天候は週末を通して影響を及ぼした。残されたのは21kmの最終ステージのカンビヤだけであり、ヴィルヴェスが逃げ切るには十分なギャップに見えたが、スタートを待つ間にステージには大雨が叩きつけるように降り、勝負の行方はわからなくなった。
マディなコンディションのなかでヒヤリとした瞬間に見舞われるラリーカーが続出したが、リンナマエはソフトタイヤを最大限に活かし、パワーステージの過酷なコンディションで攻めの走りを披露し、ライバルを11.5秒も上回るタイムを記録して逆転勝利した。
リンナマエは、共に月曜日(7月8日)に誕生日を迎える友人のヴィルヴェスとフィニッシュ後に抱擁を交わした。
リンナマエは次のように語った。「全力を尽くした。とにかくクレイジーだった。ほぼすべてのコーナーで危ない瞬間があったと思う」。また彼は、週末に及んだヴィルヴェスとの戦いを「これまでラリーカーで経験したものの中で一番楽しかった」と評した。
トロフィーを手にした後、彼はこう付け加えた。「信じられない。人生で最も大胆な走りだったと思う。何もかもやり尽くした。前のステージの後、大きな仕事が待ち受けていることは分かっていたが、それと同時に、このステージでは僕たちのタイヤチョイスが効果を発揮することも分かっていた」。
一方、トラクションが不足していたヴィルベスは、タイムを失ったことに驚きは見せず、次のように語った。「全体的には満足できる。僕たちは週末を通してERCのどの選手よりも速かった。優勝したかったけれど、自分を除いて優勝してほしい選手がいるとしたらそれはゲオルグなので、(この結果は)それほど悪くない」
ニコライ・グリアジン(シトロエンC3 Rally2)は、首位争いから30秒以上遅れて表彰台を獲得した。土曜日の最後のステージでグリアジンに3位を奪われたミッコ・ヘイッキラ(トヨタGRヤリスRally2)は、日曜日、ジャンプからの着地のあとエンジンが不調となってしまい、リタイアを喫した。
WRCイベントで優勝経験を持つマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 Rally2)は4位を獲得した。またディフェンディングチャンピオンのヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally2)は、金曜日の予選の問題で不利な出走順となり、土曜日の最初のステージではノーズから激しく着地して冷却系にダメージを負ったが、順調に追い上げ、スリッパリーなパワーステージの序盤で一瞬危ない瞬間に見舞われたものの、ミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRS Rally2)を抜いて5位でフィニッシュした。
また、パッドンと並んで選手権をリードしていたマティユー・フランセスキ(シュコダ・ファビアRS Rally2)は初参戦のエストニアの高速路に苦戦して10位に終わり、パッドンが7ポイント差でフランセスキをリードしている。
ジョン・アームストロング(フォード・フィエスタRally2)は、金曜日のSS9で木に衝突してパンク、11位まで後退したが、最終日に追い上げて6位でフィニッシュした。
ラリー・ポーランドでRally1デビューを飾ったばかりのマルティンシュ・セスクス(トヨタGRヤリスRally2)は、厳しい戦いを強いられ、SS9でパンクに見舞われて6位から転落し、14位でフィニッシュした。
サポートカテゴリーの優勝はエストニア出身のドライバーが独占している。ERC3ではロメット・ユルゲンソン(フォード・フィエスタRally3)が同じくエストニア出身のパトリック・エノク(フォード・フィエスタRally3)とヨセップ・ラルフ・ノーゲン(ルノー・クリオRally3)を抑えて優勝し、またジュニアERCではジャスパー・ヴァーヘル(フォード・フィエスタRally4)がカッレ・カールベルグ(オペル・コルサRally4)を抑えて優勝した。ポイントリーダーのミッレ・ヨハンソン(オペル・コルサRally4)は3位を獲得したが、一方で注目のマックス・マクレー(プジョー208 Rally4)は土曜日のクラッシュのあと最終日にリスタート、11位に終わっている。