WRC2022/05/23

ロヴァンペラが3戦連続優勝、勝田悔しい4位

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 2022年世界ラリー選手権(WRC)第4戦ラリー・デ・ポルトガルは5月22日、全行程を終了し、トヨタGAZOOレーシングWRTのカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)とエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が1-2勝利を飾った。また勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)も健闘。3位を走っていたが、最終ステージで逆転を喫し2.1秒差の4位となり、惜しくもポディウムを逃した。

 最終日に用意されたステージは5SS/48.87km。17.48kmの距離を持つフェルゲイラス、8.69kmのモンティム、そしてポルトガルを象徴するステージでもある11.18kmのファフェの3ステージを走行した後、ノーサービスでフェルゲイラスとファフェを再走する。2回目のファフェがパワーステージとなる。

 前日、雨のアマランテでチームメイトのエヴァンスを逆転して首位に立ったロヴァンペラ。その差は5.7秒とまだ微妙なところ。3位にはヨーロッパラウンドでのポディウム獲得を目指す勝田。その背後、5.7秒差にダニエル・ソルド(ヒョンデi20 N Rally1)、さらに30.1秒差の5位にティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)というオーダー。気温は14度と低く、最高気温も20度の予報。ステージでは再び雨が予想されている。

 前日順位のリバースで4分間隔のスタートとなり、セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)、ガス・グリーンスミス(フォード・プーマRally1)、アドリアン・フールモー(フォード・プーマRally1)、オイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)、ピエール-ルイ・ルーベ(フォード・プーマRally1)、クレイグ・ブリーン(フォード・プーマRally1)、ヌーヴィル、ソルド、勝田、エヴァンス、ロヴァンペラの順となる。
 
 ウエットコンディションが予想されたため、全ドライバーがソフトタイヤを中心にした選択となったが、割り当てられたソフトタイヤの本数が限られているため、ニュータイヤかユーズドを使うかも重要なポイントとなる。エヴァンスとルーベがソフト6本。ロヴァンペラはソフト5本とハード1本。勝田、ソルド、ヌーヴィル、オジエ、タナク、ブルーン、グリーンスミスは、ソフト5本を選択した。

 最終日のオープニングステージは、サンタキテリアの丘陵地隊をアップダウンする高速ステージ。序盤の3分の1ほどはターマックで路面はウエット。ここでベストタイムを刻んだのはロヴァンペラ。「トリッキーなステージだったが、プッシュした」とエヴァンスとの差を8.4秒に拡大する。激しい3位争いを展開する勝田とソルドは、「あまりいい走りではなかったが、ベストは尽くした」というソルドが、「慎重になり過ぎたかもしれない」という勝田に1.2秒差まで詰めてきた。

 小雨が降り続くモンティムのショートステージの最速はタナク。首位のロヴァンペッラもエヴァンスを0.1秒上回る3番手タイムで踏ん張る。勝田は6番手タイムでソルドとのタイム差は0.9秒になった。

 SS19はWRCを象徴するステージでもあるファフェ。フィニッシュ直前のペドラ・センタダのジャンプ台が待つスペクタクルなステージには例年数万人のギャラリーが集まる。タナクが連続ベストを刻み、ヌーヴィルがセカンドベストで続いた。エヴァンスはロヴァンペラよりも1.9秒速い3番手タイムで、その差を6.6秒に縮める。「簡単ではなかった。どんどん霧が酷くなって、雨足も強くなった。2回目の走行はどうなるかな。僕たちのポジションだと、どこでも全開でいくのは楽ではないが、それでもできるだけ速く、クレバーに走れるようにしたい」とロヴァンペラ。一方のエヴァンスは「自分たちのベストを尽くすことに集中したい。まだそこまで離れてはいないけれど、現実的には(カッレが)何かちょっとミスするという状況が必要(なタイム差)だ。プレッシャーを掛け続けるよ」と語る。

 3位争いを展開する勝田とソルドはさらに緊張関係にある。ソルドは勝田を0.1秒上回るタイムでその差0.8秒。「ティエリーにも要注意だ! 彼はかなり追い上げてきている。2台ともフィニッシュまで運ぶことが重要だと思うが、僕はタカとポジションを争うつもりだ」とソルド。勝田は「とても楽しんでいるし、このステージはすごく良かった。かなりプッシュする必要がある。でもいい感じだ。こういうことはなかなかないことだから、戦いながら楽しむことができるのはいいね」と3位死守を誓う。

 2回目のフェルゲイラスのステージでは、勝田が気を吐いた。ソルドを1.2秒上回るタイムでその差を2.2秒に戻した。首位ロヴァンペラもベストタイムを叩き出し、エヴァンスとの差は9秒だ。

 最終ステージのファフェを前に、ロヴァンペラとエヴァンス、勝田とソルドは僅差。5位のヌーヴィルは19.5秒差まで追い上げてきたが、これ以上はかなり厳しい。ブリーンがブレーキにトラブルを抱えて、その処理のためにTCに5分遅れたことで、タナクが6位、ルーベが7位にポジションを上げている。
 
 最後のパワーステージはWRC2で1分近くリードして勝利を目前にしていたテーム・スニネン(ヒョンデi20 N Rally2)を先頭にしてスタートしたが、コースオフしてしまう。この波乱のためリバースでスタートするトップグループも遅れてのスタートとなった。ステージはウェットのため後方になるほどペースダウンを余儀なくされるはずだが、ロヴァンペラがライバルたちをなぎ倒す速さをここでも見せることになり、パワーステージも制して今季3勝目を挙げる。

「今のところ、僕たちは本当に良いドライブをしていると思う。(グラベル路面の)このラリーを一番手でスタートし、優勝を争えたことは本当に素晴らしい。ヨンネとチームの皆にとても感謝している。厳しいコンディションが続いたが、マシンはいつも通り完璧だった。皆が本当に喜んでいいと思う」とロヴァンペラはコメントした。

 2位のエヴァンスは「僕たちには結果が必要だった。もちろん、今日の結果にはがっかりしているが、カッレには脱帽だ。僕としては再び表彰台に上れたことがうれしいし、ここからさらに上を目指していけるはずだ」と前を向く。

 そして注目の3位争いは、ソルドが110%のアタックを見せ、そこまでの暫定ベストタイム。「ベストを尽くした。どうなるかはわからない。タカは表彰台に値するし、僕たちもそれに値する。この週末はあまり速く走れなかったので、3位でフィニッシュできればうれしいが、すべてのラリーでもっと速くありたい」と勝田のゴールを待つ。その勝田はソルドに遅れること4.3秒。惜しくもポディウムを逃した。「ダニに大きな称賛を送りたい。チームには本当に申し訳ない。頑張ったが届かなかったし、自分の実力も足りなかった。もっと上を目指して頑張りたいが、正直言って言葉がない」と目頭を押さえながらコメントしたが、難しいコンディションとなったラリーで、秒差を争う神経戦にも物怖じすることなくパフォーマンスを発揮したことは、明らかな成長だ。

 5位には今回もドラマに呑み込まれてしまったヌーヴィル。最終日にも最初のステージからフロントのスプリッターを破損、パワーステージでは完全にフロントバンパーを失い、ダウンフォースがない状態でスピードが乗らず苦戦する。「全力を尽くしたが、エアロダイナミクスがなく、コントロールを失う瞬間が何度かあった。トヨタがこの週末に達成した素晴らしい成績とマシンの信頼性を祝福するべきだろう。また、昔のマシンやドライバーが戻ってきたことも良かった。彼らは素晴らしい仕事をしたし、すべてのラリーがこうあるべきだ」と結果はともあれ調子が上向いていることを評価した。

 6位はタナク。「前のステージでスプリッターを失い、このステージでは序盤にエアインテークに砂が入り、パワーが出なかった。目新しいことは何もない・・・」と不運のラリーを振り返った。

 25歳のルーベは、ラリー中いくつかの問題を抱えながらも、Mスポーツ・フォードのドライバーの中で最も高い順位、7位でフィニッシュしてみせた。「うれしいよ。ブレーキに問題があり、クレイグのトラブルと似ていたが、僕たちのはそれほど深刻ではなかった。チームに感謝している。マシンは素晴らしく、みんなが僕を支えてくれた。次のサルディニアは出走順が良いので、良い結果を残せると思う」。

 ブリーンは土曜日の夕方に出たブレーキのトラブルが再発。キャリパーに問題があり、修復に手間取りTCに5分遅れてペナルティが課せられ8位に後退した。

 ドライバー選手権は、ロヴァンペラが106ポイントを獲得、2位のヌーヴィルに対するリードを46ポイント差に広げ、勝田が3位へと浮上している。また、マニファクチュアラー選手権でもトヨタGAZOOレーシングWRTがヒョンデ・モータースポーツに対して59ポイント差にリードを広げてトップを維持している。

 次回WRC第5戦ラリー・イタリア・サルディニアは6月2日にスタートする。