2025年の世界ラリー選手権で復活すると見られていた予選システムは、WRC委員会の投票で否決されたと英オートスポーツが報じている。
予選ステージについては、すでにヨーロッパ・ラリー選手権では何年も前から導入されており、以前は予選順に好きな走行順を選べる方式だったが、2024年からターマックラリーではステージの速いドライバーから順に、グラベルラリーでは予選順のリバースにスタートすることになっている。
WRCでも予選ステージは2012年から2013年まで採用されていたが、セバスチャン・オジエの優位な状況を受けて廃止され、選手権リーダーが競技の初日にはコースオープナーの役割を果たすことが義務付けられている。これは、リーダーが有利な走行順に助けられて選手権におけるアドバンテージを拡大して逃げ切るのを防ぐことで、より拮抗した選手権タイトル争いを生み出そうという狙いから生まれたものだ。
しかしながら、選手権を争うトップドライバーたちは現在のスタートルールについて不満を述べてきており、カッレ・ロヴァンペラが今季を限定的な参戦にした原因の一つになっているとされるほか、今季も開幕戦のラリー・モンテカルロ以降、すべてのイベントを一番手でスタートしてきたティエリー・ヌーヴィルが年間を通じて何度も不満を表明したことで、この問題が検討されることになったと見られている。
FIAワールドモータースポーツカウンシル(WMSC)の下位決定部会にあたるWRC委員会に提出された提案は、フルに予選を復活させるのではなく、限定的な予選案だった。
これはチャンピオンシップのランキング上位3名のドライバーがシェイクダウンで予選走行としてカウントされる3回目の走行を行い、予選タイムの順に金曜日の1番手から3番手までの走行順を選択できることになり、ランキング4位以下のドライバーはこれまでどおりに選手権順に金曜日をスタートするというアイディアだった。
フル予選に戻すことについては、予選で勝利し、最高のポジションを選ぶのが、常に選手権でもっとも強いドライバーになるという懸念があると同時に、新たにトップカテゴリーに参戦するドライバーが常に不利なスタート順からのスタートになることを回避するために反意の声が多かったと考えられている。
FIAロードスポーツディレクターのアンドリュー・ウィートリーは以前に予選の完全復活についての考えを聞かれ、次のようにコメントしていた。「世界ラリー選手権のプロセス全体について私たちに何ができるかについて議論が行われている。完全な予選の導入といったこれまでとは根本的に異なるものには行かないだろうが、わずかに異なるものにできるかどうかを確認する作業に取り組んでいる」
今回のWRC委員会には、こうした経緯から選手権トップ3による予選という妥協案が提案されたものと見られるが、十分な指示が得られなかったため却下されたようだ。したがって2025年もスタートオーダーへの変更はないものと見られており、選手権のランキング順に金曜日をスタートするルールが踏襲される見込みとなっている。