WRC2019/12/02

Mスポーツ・フォードのシートは競争率8倍?

(c)M-Sport

 
 シトロエン・レーシングが早期の撤退を決め、トヨタGAZOOレーシングWRTがメンバー総入れ替えのチーム体制を発表した今、来季の体制について発表していないMスポーツ・フォード・ワールドラリーチームの残された1つのシートに注目が集まっている。

 Mスポーツ・フォードは、来季もテーム・スニネンの契約はあると見られているが、エルフィン・エヴァンスが抜けたあとのシートをめぐって、かつてないほどの競争率が高まっている。

 シトロエンの撤退は、エサペッカ・ラッピに衝撃を与えたが、彼への契約金は2020年までシトロエンが約束しているため、Mスポーツにとっては有力な候補になるだろう。シトロエンの決定で衝撃を受けたのは、ラッピだけでなく、シトロエンC3 R5の開発を手がけながら将来のWRカーのシートを狙っていたマッズ・オストベルグもいまやMスポーツとの話し合いを開始することになるとされている。

 ヒュンダイ・モータースポーツがオイット・タナクと契約したことで、今や経験豊富なアンドレアス・ミケルセンとクレイグ・ブリーンの将来は完全に空欄となってしまったようにも見える。ミケルセンはヒュンダイで新しいi20 R5の開発を手がける可能性もあるが、もちろんWRカーでの参戦を願っていることだろう。

 来季のチーム体制について聞かれたMスポーツのチーム代表を務めるリチャード・ミルナーは、2台のマシンを各イベントに出場させることが願いだと答えた。

「各イベントにレギュラードライバーで2台のマシンを送りたいというのがチームの考えだ。すべてはまだオープンであり、来シーズンに選手権に出場するべく、すでにロジスティクスの計画にも取り組んでいるところだ」とミルナーは語った。

 今季、フィンランドとオーストラリアの2戦でMスポーツのフィエスタWRCを駆る計画だったヘイデン・パッドンも来季のMスポーツ・ドライバーの候補かもしれないが、ファンに期待に反して彼はWRC復帰を半ば断念、母国ニュージーランドで開催されるTCRレースにヒュンダイTCRで出場する計画に方向をスイッチすることを発表している。

「ヘイデンが乗れなかったのは残念だ。彼は素晴らしく、非常に信頼できる男だし、良い連絡があれば、フィエスタで再び会えるかもしれない。我々はレギュラードライバーで2台のマシンを走らせたいので、3台目のマシンについてはヘイデンや他のドライバーも候補として交代できる」とミルナーは語っている。

 今季、フォード・フィエスタWRCで3戦に出場したガス・グリースミスは、大きなスポンサーをもっていることが彼の強みとなっていると同時に、Mスポーツで育ってきた彼が『チャンスの階段』を歩むことが、Mスポーツのビジネスモデルにとっても重要になると考えられている。おそらくそれゆえに、トヨタのシートを失ってしまったヤリ-マティ・ラトバラやクリス・ミークといったベテランにとってはMスポーツのシートを手にいれることは困難になるかもしれない。

 マネージングディレクターを務めるマルコム・ウィルソンは、チームは次のWRC世代にも目を向けていると語っている。「私たちにとっては若いドライバーの成功も重要なテーマだ。彼らと数年間一緒に仕事をし、最高のケースで世界のトップに連れて行きたい」