ラリー・ニュージーランドは、ここ10年ほど世界ラリー選手権のカレンダーから離れていたが、今でもファンの脳裏に焼き付いているイベントのひとつだ。トヨタGAZOOレーシングWRTのヤリ-マティ・ラトバラもこの南半球のステージがもつ奇跡的な道路の魅力に取りつかれている一人だ。
長い間、ラリー・フィンランドは、世界で最高のラリーとみなされてきた。超高速ステージで、マシンはあと数センチずれたら木に突っ込んで終了というスレスレのところを滑空する。
しかし、多くのドライバーがフィンランドのステージを世界で最も素晴らしいドライブと評価する一方で、フィンランド人であるラトバラは、ニュージーランドの道路はさらに優れていると考えている。
「ドライバーとしては、ニュージーランドはおそらくフィンランドよりもさらに優れたステージだと思う。でも、雰囲気はフィンランドと同じではない」とラトバラは語った。
「世界ラリー選手権で最も雰囲気が良いのはフィンランドだし、ニュージーランドにはジャンプも欠けている。しかし、それ以外の路面特性は優れている。キャンバーがたくさんあって、路面に自然なキャンバーがついているから、道路上でマシンと一緒に踊っているような感じがする」
ドライバーをワクワクさせるのは、このキャンバーだ。コーナーに差し掛かると、キャンバーが「もっと速く、もっと速く」と囁く。そしてもっと速く走れるという自信がどこからか湧いてきて、ドライバーもマシンも限界に近い状態になる。
ラトバラにとってニュージーランドのステージは、まさにこの感覚を味わうためにある。
「最高の気分だよ。コーナーのキャンバーを利用することで、ギアを2段階上げることができて、身体によりGを感じることができる」
「3速で行くべきコーナーでも、キャンバーと路面がワイドならば、5速で攻めることができる。だから、とてもエキサイティングなんだ」
しかし、ドライブがエキサイティングな一方で、それが命取りにならないとは限らない。コーナーでエキサイティングな走りをすることで、問題が発生する可能性もある。
ラトバラはあっという間にディッチにはまってしまう可能性を指摘し、「そこから戻るのは大変だ」と語った。
「それに、ニュージーランドにはナローな場所がある。ワイドな道が突然ナローになって、外側に大きな土手が現れ、ワイドに走るスペースがなくなってしまう」
「昔、リチャード・バーンズがグロンホルムとチャンピオン争いをしたとき、ワイドになって土手にぶつかり、プジョーで横転したことを思い出す」