今季の英国ラリー選手権は、まるで1990年代にトヨタのファクトリーチームが走らせたセリカGT-FOURやカローラWRCを彷彿とさせるカストロール・カラーのトヨタGRヤリスRally2が大暴れしたシーズンとなった。カストロールMEMラリーチームのGRヤリスRally2を駆ったクリス・イングラムが、英国選手権最終戦のカンブリアン・ラリーで優勝し、イギリスとヨーロッパのラリー選手権の両方のタイトルを獲得した初のドライバーとなった。
2019年にヨーロッパのタイトルを獲得した30歳のイングラムは今季、英国ラリー選手権の開幕戦ノースウェスト・ステージで優勝を飾ったとはいえ、第3戦ジム・クラーク・ラリーではサスペンションを壊してリタイアしたため苦しいシーズンとなっていた。しかし、第4戦グランピアン・フォレスト・ラリーからそれまでのVWポロGTI R5からGRヤリスRally2にマシンをスイッチ、シーズン2勝目を飾ってタイトルに臨みをつなぐことになった。
ヨーロッパ選手権と併催で行われた第5戦のラリー・ケレディギオンは、土曜日までの最初のレグで優勝を飾って最大ポイントを獲得して選手権リーダーを奪回、最終レグでふたたび最大ポイントを獲得すれば最終戦を待たずに初の栄冠を飾るチャンスもあったが、日曜日の最初のステージでクラッシュ、ウェールズで行われた最終戦カンブリアン・ラリーを昨年ジュニアWRC王者に輝いた26歳のウィリアム・クレイトンから1ポイントのビハインドで迎えていた。
カンブリアン・ラリーは、チャンピオンシップでわずかにチャンスがあったキース・クローニン(フォード・フィエスタRally2)がラリー序盤に機械的な問題でリタイアしたあとは、タイトルを争うイングラムとクレイトンによる激しい一騎打ちとなった。
SS4では二人は同タイムを奪い、イングラムとクレイトンとの差はわずか5秒にすぎなかったが、午後の3ステージでイングラムがクレイトンを突き放し、最終的に20.8秒差をつけて優勝、英国選手権のタイトルを獲得した。
世界ラリー選手権への復帰を目指しているイングラムは、素晴らしいシーズンを勝利で終えることができて安堵したと語っている。
「ほっとしたよ。ウィル(=クレイトン)はとても速かったので、僕たちも全力を尽くさなければならなかった。楽なシーズンではなかったが、それが僕たちにとって本当に物語に加わる。素晴らしい競争だった」とイングラムは語っている。
イングラムは11月21〜24日に行われるWRC最終戦のフォーラムエイト・ラリー・ジャパンにもGRヤリスRally2でエントリーしている。