WRC2016/08/21

オジエ、ミケルセンを突き放してドイツを独走

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 世界ラリー選手権(WRC)第8戦ラリー・ドイッチュランドは20日に二日目を迎え、フォルクスワーゲン・モータースポーツのセバスチャン・オジエ(VWポロR WRC)が思わせぶりな天気に翻弄されながらも33.4秒のリードを築いている。

 ラリー・ドイッチュランド二日目はザールランド・エリアのカントリーロードでスタート、フライゼン〜ウェストリッヒとベセンベルグを走り、タイヤフィッティングゾーンでタイヤを交換したあと、バームホルダーの軍事演習場のパンツァープラッテへと舞台を移す長い一日だ。

 4.3秒をリードして二日目を迎えたミケルセンだが、ワールドチャンピオンのオジエに対してその差はなきに等しいものだ。だが、ミケルセンはこの日の朝、幸運の女神を味方につけたかのようにタイヤチョイスのギャンブルを成功させる。

 オープニングSSのフライゼン〜ウェストリッヒは、グラベルノートクルーが走行した時点では夜半の雨の影響はほとんどなく路面がほぼドライだったことから、多くのクルーがハードを主体としたタイヤをチョイス。だが、その後、ステージにはまさかの雨が降ったことから路面はほぼ全域にわたって湿っている。

 ソフトとハードを2本ずつミックスで使用したオジエは、ゴール地点で「ハードは誤りだった」とため息をもらす。それに対して、トップグループではただ一人5本のソフトを選択したミケルセンは、オジエに1.5秒差をつけるベストタイム、5.8秒差にリードを広げることに成功する。

 だが、次のベセンベルグのステージでミケルセンはソフトタイヤを味方にさらにアタックをするものの、湿った路面でブレーキをミス、ジャンクションをオーバーシュートしてしまう。ミケルセンはかろうじて首位をキープしたものの、これまでのリードすべて吐き出し、二人の差は0.2秒に縮まることになった。

 クルーたちはザンクト・ヴェンデルのタイヤフィッティングゾーンでチームのウェザースタッフに電話で相談して、バウムホルダーにむけたタイヤをチョイスする。雨の気配が強まっており、ドライバーたちはソフトを組み入れたタイヤをチョイスする。だが、最初の短いアリーナ・パンツァープラッテこそウェットとなったが、すでに雨は上がっており、40kmというラリー最長のパンツァープラッテ・ロングは完全なドライとなる。

 オジエは朝に続いてここでもまたもやタイヤチョイスを外したことを嘆きながらも、ロングステージでミケルセンに13.5秒差をつける圧巻のベストタイムを叩きだし、ついにミケルセンを完全に捕らえることに成功しただけでなく、13.2秒差のリードを築くことになる。

 このステージではそれまで6位につけていたステファン・ルフェーブル(シトロエンDS3 WRC)が大きなクラッシュに見舞われ、彼とコドライバーのギャバン・モローが病院に搬送されている。そのために以降のドライバーはステージキャンセルとなり、ノーショナルタイムが与えられることになった。

 メッセパークのサービスを挟んで午後のループはウェットコンディションのなかでスタート、SS11フライゼン〜ウェストリッヒではソフトタイヤを4本装着したオジエがベストタイムを奪い、19.9秒のリードへと拡大した。

 このままでの逆転は不可能と判断したからか、ミケルセンは2回目のバウムホルダーのステージにむけてハードタイヤをチョイス、40kmのパンツァープラッテ・ロングでの一発逆転に賭ける。彼の予想通りに雨は上がり太陽がかなりの路面をドライにしていたが、木陰はウェットのまま。ミケルセンのギャンブルは失敗に終わり、オジエから13.1秒遅れのタイムに沈むことになる。けっきょくオジエは、ミケルセンを33.4秒もの彼方へと突き放して二日目をフィニッシュ、半年ぶりの勝利の王手を掛けることになった。

 いっぽう、「追いつくためにはハードを選ぶしかなかった」と語ったミケルセンだが、パンツァープラッテでの遅れによって、彼は2位を死守するために最終日にヒュンダイの二人と戦わなければならなくなった。最終ステージの2番手タイムで3位に浮上してきたダニエル・ソルド(ヒュンダイi20 WRC)が3.6秒差の背後につけ、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20 WRC)もソルドから0.4秒差の後方に迫っている。

 初日を3位で終えたヌーヴィルは、オープニングステージから果敢に攻めたものの草むらにオフ、さらにパワーステアリングを失ってしまったことから優勝争いからは大きく遅れることになった。さらに最終ステージでアンダーステアに見舞われて4位に後退したとはいえ、2位のミケルセンまでわずか4秒しか離れてない。SS12、SS13と連続してベストタイムを奪っている自信からか、ヌーヴィルは不敵な笑みをみせて「差は小さい」と言い放った。

 ヌーヴィルから3分近く遅れた5位にはチームメイトのヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 WRC)がさまざまな走り方を試しながらも経験を積むためにクリーンな走りで続いている。トラブルだらけの初日を終えて大きく遅れたマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタRS WRC)は最終ステージで今度はブレーキのオーバーヒートに見舞われてしまい、パッドンに抜かれることになってしまった。

 また、DMACKワールドラリーチームのオット・タナク(フォード・フィエスタRS WRC)は5位につけていたものの、SS12に向かうロードセクションでオルタネータ・トラブルによってリタイアとなっている。

 最終日は、14.79kmのドロンタルとベルギーとルクセンブルク国境に近い14.84kmのサウエルタルのステージをノーサービスで2回ループするわずか59.26kmの一日。大きなマージンを得たオジエにもはや死角はないようにも見えるが、今夜から明日にかけてふたたび雨の予報となっており、波乱のドラマが待っているかもしれない。