WRC2024/05/13

オジエがポルトガル最多記録の6勝を達成

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 2024年世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・デ・ポルトガルは5月12日に最終日を迎え、トヨタGAZOOレーシングWRTのセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)がオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)に7.9秒差をつけて前戦クロアチア・ラリーに続いて今季2勝目を飾るとともに、ポルトガルにおける史上最多勝記録となる6勝目をマークすることになった。

 ポルトガル最終日はカベセイラス・デ・バスト(19.91km)とファフェ(11.18km)というお馴染みのステージをノーサービスで2回連続して走行する4SS/62.18kmの一日となる。

 ポルトガルは土曜日までを終えてオジエがタナクに対して11.9秒差をつけてラリーをリードする展開となっている。トップ2人からは1分近く遅れた3位にティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1 )、その後方、ダニエル・ソルド(ヒョンデi20 N Rally1 )とアドリアン・フールモー(フォード・プーマRally1)は7.3秒という僅差で総合4位を争っているが、最終日はスーパーサンデーとして日曜日のみの順位に対して独立した選手権のポイントが与えられるため、ドライバーたちは総合順位を守るのか、あるいはポイントを追い求めるのか、それぞれが新しいチャレンジに挑まなければならない。

 曇り空の朝を迎えたマトジニョスのサービスパークは気温は15度と涼しく、日中の最高気温は19度程度だと天気予報は伝えている。全ドライバーがソフトコンパウンドタイヤ5本をチョイスしており、このあとタイヤ交換の機会はないため、このタイヤセットでゴールまで走らなければならない。

 SS19カベセイラス・デ・バストは、序盤の林に囲まれたナローでテクニカルな上りのセクションには濃い霧が出ており、高原に達すると明るい日射しのなか開放的で素晴らしい景色が広がるが、急激なダウンヒルを経てフィニッシュに向かうセクションはふたたび濃霧となり、小雨がフロントガラスに当たりはじめる。

 このステージで一番時計を奪ったのはラリーリーダーのオジエだ。多くのドライバーが濃霧の中でペースを落とすなか、彼はここでも勝負の手を緩めることなくこの週末7つめとなるベストタイムを刻み、2位のタナクとの差を18.1秒へと拡大することになった。「タイムはどうだった?(タイムを聞いて)良さそうだね。難しかった。ライブカメラを見ていて、霧があることを知っていた。僕の頃には少し改善すると思っていたが、前方スタートのマシンが走った時よりももっと霧が出ていた」

 3位につけるヌーヴィルは2番手タイム。2位のタナクとは56.6秒差もあるが、総合順位をひっくり返す望みはなくても、スーパーサンデーのポイントのために最後までアタックを続ける決意だ。「良いステージだったが、ステージ中盤で霧の中に入ってしまい、少しスピードを失った。リズムには満足することができる。マシンはよく動いているが、霧が大きく移動していて、簡単ではない」

 4位につけていたソルドは30秒あまりをロス、フールモーが4 位に浮上することになった。あまりに大きな遅れは不可解にも見えたが、その理由を問われたソルドは、「アンダーステアはあったが大きな問題はない」と説明、スーパーサンデーの数ポイントを得るためにリスクを冒すよりもチームの選手権のために着実に完走することを最優先のプランにしているようだ。

 前日のクラッシュのあとマシンを修復して最終日に復帰したカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)は一番手でコースイン、フロントガラスにわずかに雨粒が当たるものの、路面を湿らせるまでには至らず、彼はドライコンディションのなかでトップから1kmあたり1秒もタイムを落とし、チームのためにスーパーサンデーのポイント狙うという計画を早くも断念することになった。 

 つづくSS20ファフェには小雨が降り始め、濃霧によって流れるような高速のステージでは路肩のブッシュやバンクなどが見えにくく危険なコンディションとなっており、ペースノートの正確さが頼りとなった。

 オジエは13.6秒差をつけて首位をキープするも、このリスキーなコンディションのなかでペースを落として4.5秒遅れの3番手タイムにとどまることになった。彼はスーパーサンデーでも暫定トップを維持しているが、ベストタイムを奪ったタナクが1.7秒差、ヌーヴィルが2.8秒差で続き、戦いは白熱している。

 一方、6位で最終日を迎えたエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)は「できる限りのことをやってみる必要があるが、視界がとても悪く、グリップも予想以上に低くて簡単にいっていない」と明かし、最後までリズムをつかめない様子だ。彼はここまでスーパーサンデーでもタイトルを争うヌーヴィルからは7.8秒も引き離されてしまっている。

 SS21カベセイラス・デ・バストは2回目の走行になっても序盤のセクションにはまだ濃い霧が残っている。エヴァンスがステージ途中でマシンをストップ、エンジンを止めてどうにかEVモードでゴールするも1分30秒遅れとなってしまい、スーパーサンデーでのポイント獲得が絶望的となってしまった。

 ストップポイントで彼のマシンのフロントのリップスポイラーは大きく歪み、ダッシュボードには油温上昇の警告が表示されているが、ここではうまくエンジンを始動し、無言のまま走り去っていった。

 オジエが総合首位をがっちりとキープ。タナクがここでも連続してベストタイムを奪い、スーパーサンデーではオジエを1.8秒差で抜いて暫定リーダーとなった。

 そして迎えたパワーステージのファフェ。やっと霧が晴れて、雲間から青空が見えるなかオジエがラリーを制し、キャリア通算60勝を達成するとともにラリー・デ・ポルトガルの最多勝利記録を6勝へと更新することになった。「マルク・アレンはレジェンドなので、彼と記録が並んでいたことに不満はない。長年にわたって『いつ記録を破るのか』と聞かれてきたが、やっとそのときがきた。チーム全体としては素晴らしい週末ではなかったが、僕たちにとっては良いラリーだった」

 7.9秒差の総合2位となったのはタナクだ。彼はパワーステージのトップこそチームメイトのヌーヴィルに譲ったものの2番手タイムでフィニッシュ、スーパーサンデーを制することになった。「厳しい週末だったが、僕たちは最善を尽くした。通常、ラリーでは全力でアタックすると上手くいかないが、今週末はそれが功を奏した。僕たちはペースや他のこともすべて改善した」

 ヌーヴィルは選手権の最大のライバルであるエヴァンスがトラブルに見舞われたため、最終ステージではペースを少し抑えるかとも見えたが、パワーステージを制してフィニッシュすることになった。総合順位ではタナクから1分1秒も引き離された3位にとどまったが、金曜日を一番手でスタートするという不利な条件からは信じられない結果となったことを彼は喜んだ。「非常にクリーンな走りができた。本当に素晴らしいステージだった!信頼できるマシンを提供してくれたチームに感謝している」

 フールモーはソルドとの差を1分1秒まで引き離して総合4位でフィニッシュ、新たな自信を築くことになった。「ペースは日に日に速くなってきたし、とてもうれしいよ。マシンにもチームにも本当に満足している」

 エヴァンスは前ステージで発生した油温上昇の問題をロードセクションでどうにか解決することになったが、タイムコントロールに9分遅れのため1分30秒のペナルティを課されている。それでも後続のRally2カー勢は大きく離れているため、エヴァンスは6位を守ってフィニッシュすることになった。「今朝のコンディションではミスをしたくなかったが、僕たちは本当にペースを失っていた。完走できて良かった。次はサルディニアで会おう」

 土曜日にサスペンション破損でマシンを止めた勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)はポイント圏外の35位で最終日に再出走に回ったため、スーパーサンデーでのポイント挽回が最大の目標となった。しかし、彼は朝からハイブリッドブーストを失ってしまい、思い通りのプッシュができないスタートとなっていたが、それでもパワーステージで5番手タイムを奪って1ポイントを獲得、スーパーサンデーでも5位に食い込んで3ポイントを加えている。

 勝田は初日のリードのあと、不運な結果のためポディウムを達成できずにラリーを終えることになったが、ステージエンドで大きな覚悟と決意でこの週末をスタートしたことを告白している。「昨日はとても残念だった。月曜日に家族のとても大切な人を亡くした。集中するのはとても難しかった。家族も闘っているので、僕も戦わなければならなかった。彼のために良い結果を達成したかった。次はそうできることを願っている」

 グレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマRally1)は前日のエンジントラブルで最終日を14位でスタートしたが、SS21でコースオフを喫して完走を逃すことになった。

 第5戦ポルトガルを終えて、ドライバーズ選手権ではヌーヴィルが110ポイントでリードを維持、この週末わずか6ポイントの獲得にとどまったエヴァンスはどうにか86ポイントで2 位をキープしたものの、その差はこれまでの6ポイントから24ポイントへと大きく広がることになってしまった。この週末の最大ポイントとなる26ポイントを獲得したタナクは、フールモーを逆転して、エヴァンスから7ポイント差の選手権3位へと浮上している。

 また、マニュファクチャラー選手権では、ダブルポディウムを達成したヒョンデが219ポイントまで伸ばしてトヨタを逆転、4ポイント差ながらリードを奪っている。Mスポーツ・フォードは116ポイントで続いている。

 次戦は5月30日から6月2日にかけて行われるラリー・イタリア・サルディニアだ。