ERC2020/07/27

ルクヤヌクがローマ優勝、ソルベルグが3位表彰台

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権開幕戦のラリー・ディ・ローマ・カピターレは26日に最終日を迎え、サンテロック・ジュニアチームのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 R5)が初日の首位を安定したペースで守りきって今季初優勝を飾ることになった。昨年の勝者であるジャンドメニコ・バッソ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)は、日曜日に力強い走りでルクヤヌクを脅かしたが2年連続優勝には16.1秒届かなかった。また、オリヴァー・ソルベルグ(フォロクスワーゲン・ポロGTI R5)がターマックデビュー戦で3位表彰台を達成している。

 快晴の朝となったラリー・ディ・ローマ・カピターレの最終日は、バッソが34.1秒差の2位というポジションに満足していないことへの明確なアピールとともに始まることになった。

 バッソはSS7ロッカ・ディ・ケイブでベストタイムを奪ってスタート、前日、すべてのステージでベストタイムを並べてラリーをリードしているルクヤヌクの牙城を切り崩してスタートすることになった。昨年のラリー・ディ・ローマで優勝したバッソは、さらにSS8ロッカ・サント・ステファノでも連続してベストタイム、さらにSS9グアルチーノでもラリーをリードするルクヤヌクとの差を0.5秒削りとり、朝のループを終えて首位に29.3秒差へと迫ることになった。

 ルクヤヌクはラリーの主導権を握っているにもかかわらず、ステージエンドで土曜日のようには自信を持ててないと語ることになった。彼は安全のために1本余分にスペアタイヤを積んでいたことがこの遅れの原因になったと分析した。「もっと速く行けるはずだったが、タイムはそうでもなかった。上り坂が多かったので余分な重量がこのタイムの鍵になった。パッケージは悪くはないが、もっと良くなるかもしれない。しかし、ペースは限界に近づいていることは確かだ」

 いっぽう、勢いを取りかえしたバッソは、「いくつか正しいラインを見つけることができずに苦戦したが、すべて順調だ。ここまでは満足しているよ」と自信に満ちた笑顔で答えた。もちろんバッソにとってはルクヤヌクを追い上げることも大事だが、イタリア選手権はさらに重要だ。

 イタリア選手権はこの週末、ダブルヘッダー開催となる。彼は初日の第一戦こそ制しているが、日曜日の第二戦は前日にリタイアした選手権のライバルといえるアンドレア・クルニョーラ(シトロエンC3 R5)もSS9ではバッソを上回るベストタイムを刻んでおり、ERCとは別の戦いが新たにスタートしている状況にある。

 トップグループの背後では、初のフルターマックに臨みながらも、ソルベルグがミスのない走りで3位をキープしている。「おそらくいままでのラリーの中で一番難しかった、今までやったことのないよ。クリーンに行ったが、3位を守るためにハードにプッシュしている」。表彰台を守るために必要なことについて聞かれ、「勢いと流れが全て」だと彼は語っている。

 オリヴァーが警戒するのはヒュンダイのファクトリードライバーのクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20 R5)だ。ブリーンを0.1秒上回る5位で最終日を迎えたドイツ・チャンピオンのファビアン・クライム(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)がSS7の序盤でホイール破損によりマシンをストップしてしまったため、ブリーンは難なくポジションアップ、さらに朝日が斜めから射し込むSS8では、「視覚ではなく嗅覚で運転しなければならない」と語りながらも、シモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビアRally2)を抜いて4位へと浮上してきた。土曜日の終盤に発生したワイパーのトラブルが解消しており、もう視界には悩まされてないようだ。

 フィウッジでの30分のサービスを終えたあと、ラリーカーは朝と同じ3ステージへのループに向かった。朝の反省からスペアタイヤ1本に減らす戦略をとったルクヤヌクだが、SS10で2秒、SS11では4.1秒を失い、バッソに対するリードは23.2秒へとまたも縮まることになる。SS12こそルクヤヌクは2番手タイムを叩き出し、そのリードは23.9秒へとほんのわずかに広がった。フィニッシュまでは残り3ステージ、彼はここまでの流れに安心したのか、「スペア1本のため苦しんだ。簡単ではなかったが、うまく行っているよ」とリラックスした表情で語っている。

 いっぽう、2位につけるバッソはERCよりイタリア選手権の戦いのことで頭がいっぱいだっただろう。昨日のクラッシュのショックから立ち直り、速さを発揮してきたライバルのクルニョーラがSS10のベストタイムを叩き出してイタリア選手権でバッソを0.1秒抜いて首位に浮上してきたからだ。

 バッソはタイヤ数に関しても不利だった。この週末は全ドライバーに2日間で18本のタイヤが使用可能となるが、SS1でリタイアしたクルニョーラはフレッシュタイヤをほとんど残している状況だ。クルニョーラはさらにSS11、SS12と連続でベストタイム、バッソに対して6.3秒差をつけることになった。

 そしてフィウッジのサービスを挟んで迎えた最終ループ、ルクヤヌクはここでも冷静にペースをコントロール、この日一度もトップタイムを奪わず仕舞いだったが、最後まで首位を守りきり、バッソに16.1秒差をつけて開幕戦で優勝を飾ることになった。

「クリーンな走りで最後までいいペースで走ることができた。計算どおりのドライブだったよ。長く待たされたがいいシーズンの開幕になったので、とても満足している」とルクヤヌクは喜びを語っている。

 バッソはERCでは2位でフィニッシュ、イタリア選手権第2戦でもクルニョーラの勢いを止めることはできずに10.9秒差をつけられて2位となったが、昨日の第一戦の勝利とあわせて選手権でのリードをキープ、「本当に難しい週末だったが、とても満足している」と語っている。

 最後まで集中力を切らすことなくノーミスで3位表彰台に立ったのは19歳のソルベルグ。彼は2回目のループではアスファルトでのドライビングを学ぶためにスペアタイヤを2本装着して臨んだが、これが結果的には好判断となり、午後になって気温が上昇したことでペースダウンを余儀なくされたブリーンとの差を大きく広げることに成功、そのまま3位を守り切って3位表彰台、ERC1ジュニア優勝を獲得することになった。

「10位以内を狙ってここに来たので、結果は素晴らしいものだった。タイムを見るためにいくつかのステージでプッシュしようとしたが、それがうまくいった。3位は素晴らしい結果だよ」とソルベルグは満足そうに語っている。

 いっぽう、ソルベルグを追撃するはずが、SS12でテンペスティーニに抜かれて5位に後退したブリーンは「クルマの調子が悪くなるのを感じた。少しプッシュしすぎたのかもしれない」と不満そうに語った。気温が上がったあとのループの後半で新しいMRFタイヤのグリップが低下することで彼がマシンのバランスに悩んでいるのは明らかだったが、彼は朝のループのあと「いくつかのアイデアが頭の中にある」と語っていたが、残念ながらこの計画はうまくいかなかったようだ。

 それでもブリーンは最後のループでふたたびテンペスティーニを逆転、わずか1.3秒差で4位にポジションを上げてフィニッシュしている。「とてもいいラリーになった。最初から最後までとても楽しかった。タイヤもマシンもステップバイステップだ。走るたびに良くなったよ」

 テンペスティーニの計画は、もちろんソルベルグまでも抜いてERC1ジュニアでの勝利だっただろう。総合5位、ERC1ジュニア2位という結果に完全に満足しているわけではなく、彼は「自分のパフォーマンスは奇妙なものだった」と表現した。

 また、昨年のERC3ジュニア王者のエフレン・ヤレーナ(シトロエンC3 R5)はRally2マシンでの初参戦となったが総合6位、ERC1ジュニアでは3位でフィニッシュしている。

 ERC3ジュニアでは終盤までドラマが続いた。初日2位で続いていたペドロ・アントゥネス(プジョー208 Rally4)が最終ループでそれまでラリーをリードしてきたケン・トルン(フォード・フィエスタRally4)を捕らえて逆転することに成功する。だが、アントゥネス4.3秒差をつけて迎えた最終ステージでコースオフ、トルンは予期せぬ優勝を達成することになった。また、ERC2はゼリンド・メレガリ(スバルWRX STI)が43秒をリードして開幕戦勝利を飾っている。

 ERCの次戦は、8月14-16日にラトビアで行われるラリー・リエパーヤとなる。