WRC2024/04/01

ロヴァンペラがサファリ2勝目、勝田が2位表彰台

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 2024年世界ラリー選手権(WRC)第3戦サファリ・ラリー・ケニアは3月31日に最終日を迎え、カッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)が今季初優勝、チームメイトの勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)が2位でフィニッシュ、トヨタGAZOOレーシングWRTが1-2でWポディウムを達成することになった。また、アドリアン・フールモー(フォード・プーマRally1)が前戦スウェーデンに続き2戦連続3位表彰台に立っている。

 最終日はふたたびナイバシャ湖の周辺のルートに戻り、この週末もっとも荒れて危険なステージだと称されるマレワ(8.33km)、オズレンゴーニ・ワイルドライフ自然保護区を走るオズレンゴーニ(18.33km)、サファリのコースでもっとも壮大な景色をもつヘルズゲート公園を駆け抜けるヘルズゲート(10.53km)の3ステージをミッドデイサービスを挟んで、2回ループする6SS/74.38kmのタフな最終日となる。
 
 雨上がりの朝を迎えたナイバシャのサービスパーク、天気は曇り、7時の気温は17度であり、日中には24度まで上昇すると天気予報は伝えている。

 土曜日までを終えて、トップはロヴァンペラ、2位の勝田に2分8.9秒差という大きなアドバンテージを築いている。3位のフールモーも勝田とは1分以上離れており、その後方も2分22秒も開いて4位のエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)、さらに5位のティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)は前日の燃料ポンプのトラブルで選手権を争うライバルから6分もの遅れとなっており、上位陣の総合順位はほぼかたまっている状況だ。

 オープニングステージのSS14マレワはこの週末でもっとも困難なステージの一つだ。路面は前夜の雨で湿っており、ダスティではなくなっているも、おびただしい数の石が転がり、巨大なベッドロックがたくさん埋まる危険なセクションが待ち受けている。

 ラリーリーダーのロヴァンペラはここでは24.4秒も遅れた7番手タイム、セーフティなペースでトップを堅持するのは楽しくないと語るが、ステージは思った以上に荒れている。「あまり良いフィーリングではない。慎重なペースでステージを通過するのは、あまり楽しくない! ステージは昨年よりさらにラフで、おまけに岩だらけだった」

 勝田は左フロントタイヤをスローパンク、ロヴァンペラから1.4秒遅れの8番手タイムでステージをフィニッシュすることになったが、後続のフールモーもペースを押さえており、二人の差は56.3秒という大差のままだ。「このステージは運試しのようなものだ。マシンが通過するたびに岩が移動するので、どこに岩があるかわからない」と勝田はコメントした。

 総合でのポジション争いがほぼ決しているとはいえ、2024年からの新しいポイントシステムのもと、最終日にスーパーサンデーのポイントがかかっているため、けっしてアクセルを抜けるわけではない。とくにヒョンデにとってはエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 N Rally1)とオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)が金曜日にリタイア、それぞれ総合10位と総合15位と出おくれているため、選手権争うためにもスーパーサンデーのポイントで挽回を狙う必要がある。

 このステージではヌーヴィルがベストタイム、2番手タイムにはタナク、3番手にはラッピが続き、ヒョンデが上位を占めることになった。タナクとラッピはこのループではスペア1本しか搭載しないギャンブルで臨んでいるが、ラッピは好タイムにもかかわらずリヤをパンクしてしまっており、早くもスペアを使い果たしてしまう。

 ヌーヴィルもステージ中盤でワイドになって大きく姿勢を乱してオフしかかったが幸いにもパンクを避けている。「コントロールを失ってパンクしたのかと思ったが、すぐにそうではないことに気付いたので、プッシュを継続した。岩だらけでクレイジーだ。うまく走り抜ける必要があるよ」

 エヴァンスは、ここではヌーヴィルから10.8秒遅れ、ヒョンデ勢のスピードに意表を突かれたようだ。「僕自身はもう少し速いかと思っていたが、明らかに他のドライバーたちはマシンやタイヤのことをあまり気に掛けていないようだ!」

 ドライバーズ選手権にとってもマニュファクチャラー選手権にとってもスーパーサンデーのポイントは重要になる。エヴァンスは次のSS15オズレンゴーニではベストタイムを奪って反撃を開始、スーパーサンデーの順位ではここまではヌーヴィルがトップ、エヴァンスが5.3秒差の2位で続いており、選手権を争う2人がふたたび激しバトルを開始した。

 SS16ヘルズ・ゲートにはまたもドラマが待っていた。流れるように連続するコーナーが続く森のなかのセクションにはサッカーボールのような大きさの石が二つ転がり出ており、左コーナーのラインをふさぐように落ちていた石をサイドウェイになって攻めていたヌーヴィルが避けきれずにヒット、右のリヤサスペンションを壊してしまう。

 ヌーヴィルのヒョンデは、上空のヘリコプターの映像でもタイヤがぐらついていることがはっきりとわかるほどのダメージを抱えていたが、どうにかステージをフィニッシュする。「信じられないほど大きな石がたくさんあったんだ! 避けるのは不可能だった。どこから出てきたのか分からない。サービスにはスピードを落として戻るよ」

 スーパーサンデーのトップにはタナクが浮上、連続してベストタイムを奪ったエヴァンスが0.3秒差で続いている。タイムをロスしたヌーヴィルはエヴァンスから12秒も遅れた3位へと後退してしまった。それでもエヴァンスはこの週末これまでに5本をパンクしており、けっして良いコンディションのソフトタイヤが残っているわけではないだろう。

 また、ラッピは金曜日に続いてまたもトランスミッションが故障し、ゴールまで惰性で走ることになった。「トランスミッションが終わった。昨日のようなゆっくりのドライブが正解だったようだ・・・」

 タナクは金曜日のクラッシュで土曜日までを総合10位で終えていたが、朝のループを終えて8位にポジションを上げている。しかし、2024年に導入された新しいポイント制度では、この順位をいくら上げても総合順位でのポイントが加算されるわけではなく、選手権で挽回するためには日曜日のスーパーサンデーのポイントでライバルを引き離すしかない。ここではスピンしてリバースギヤを使ってコースに戻らなければならなかったが、0.3秒差でかろうじてリードしている状況だ。

 総合トップのロヴァンペラは大きくペースを落としながらも1分53.5秒をリードして朝のループを終えたが、けっして勝利に向けたクルージングではないと強調する。「簡単なループではなかった。慎重にドライブするということは、ときにより多くのミスに繋がることがあるんだ。ここはトリッキーで非常にソフトでルーズな石もたくさんあった」

 2位につける勝田も朝のステージではパンクを経験しており、ラフなコンディションでも集中していかなければならないと語っている。「実際かなりひどく、特にライン上は大きな石だらけだ。僕たちはこの走りを継続して、ペースとマシンを守るつもりだ」

 ナイバシャでのミッドデイサービスはわずか15分間しか認められてなかったが、サスペンションを壊したヌーヴィルはこのサービスに救われた。無事に修理を終えた彼は拍手に見送られてステージへと向かって行った。しかし一方で、トランスミッションに問題を抱えたラッピは、ギヤボックスとプロペラシャフトを交換、5分遅れでサービスを後にしており、50秒のペナルティが課されてしまった。

 かき出された無数の石で朝よりもいっそう困難となったSS17マレワでのベストタイムはヌーヴィル、スーパーサンデーの順位ではタナクがトップを維持、8秒差でエヴァンス、さらに3.2秒差でヌーヴィルが続く。

 ロヴァンペラは首位をキープ、そのタイムは2位の勝田よりも20秒も遅く、彼のリードは1分33.5秒となったが、すべてが計画どおりに進んでいるようだ。「問題はない。今までに見たこともないようなひどいコンディションだったから、ゆっくり走りたかっただけだ」と彼は笑顔でジョークをとばしている。

 ロヴァンペラはSS18オズレンゴーニでも完全なセフティモードで28秒も遅れたが、がっちりと首位をキープしている。勝田も1分27.3秒差の2位、フールモーも52.4秒差で3位をキープしている。

しかし、安全にゴールを目指す彼らと対照的に後方はスーパーサンデーのポイントをめぐる必死な攻防が続いている。ベストタイムはタナク、スーパーサンデーの順位でもリードを15.5秒に拡大、エヴァンスに10.4秒差をつけてヌーヴィルが2番手へと浮上しているが、タイヤの問題かエヴァンスはペースを落として25秒遅れとなってしまった。

 そして迎えた、パワーステージのSS19ヘルズ・ゲート。コーナーのいたるところでラインに深い轍が刻まれており、姿勢を乱されるマシンが続出することになった。チャンピオンシップを争ってないロヴァンペラはここでもリスクのない鉄壁の走りでフィニッシュ、今季初優勝をトヨタにもたらした。トヨタにとっては4年連続のサファリ・ラリーの勝利であり、彼にとっては2022年に続く2度目の勝利だ。「このイベントはいつも特別だ。トヨタにとって伝説的なイベントで、僕たちはいつもここでいい成績を残してきた。アフリカでよく言われるように、前にいるクルマはいつもトヨタだ!クレバーな走りでいい仕事ができた、そして支えてくれるチームのみんなには本当に感謝している」

 勝田は道路にかきだされた石を避けようとしてマシンの姿勢を乱してディッチに片輪を落としかけたが落ち着いて立て直して2位でフィニッシュ、サファリでは3度目、昨年のフィンランド以来となる通算5回目の表彰台を達成した。「(表彰台でフィニッシュできて)すごく嬉しい。とてもタフな週末だっただけにね。でも、クルマは本当に強かった。このマシンをドライブできることを誇りに思う。チームのみんなに本当に感謝している、彼らはクルマのことを本当によくやってくれて、ただただ信頼していたよ」

 フールモーが3位、前戦スウェーデンに続き、キャリア2度目のポディウムフィニッシュを果たした。「本当に本当に嬉しい。この週末を通して、クルマに全然問題もなかったからチームを祝福しないとね。しっかりと走ってくれて本当に感謝している、この表彰台は彼らに捧げるよ」

 3日間で5回のパンクに見舞われたエヴァンスは4位に沈み、表彰台へ挑戦はならなかった。スーパーサンデーで5ポイント、パワーステージで2ポイントを獲得したが、最終日に勢いを増したヌーヴィルがスーパーサンデーで6ポイント、パワーステージでも4ポイントを獲得して、総合順位では1つ及ばなかったが週末の獲得ポイントでは選手権のライバルを上回ることに成功している。「このモチベーションはどこからくるかって? それは分からないが、とにかくハードにプッシュしたよ」とヌーヴィルは語った。「今週は運に恵まれなかったけど、チームは懸命にクルマを修理してくれたし、僕たちもサービスにたどりつけるよう懸命に頑張った」

 第3戦サファリを終えて、ドライバーズ選手権では最終日に気迫の走りをみせたヌーヴィルが67ポイントでトップを死守、エヴァンスは61ポイントで2位にとどまり、連続表彰台のフールモーが46ポイントで3位をキープしている。また、総合8位にとどまったもののスーパーサンデーを制すとともにパワーステージでも2番手となったタナクが最終日に起死回生の11ポイントを獲得、33ポイントで4位へと浮上してきた。ロヴァンペラが31ポイントで5位、勝田は30ポイントで6位で続いている。

 また、マニュファクチャラー選手権では、今季初優勝を1-2で飾ったトヨタが131ポイントでふたたび単独でリード、ヒョンデが4ポイント差の127ポイント、Mスポーツ・フォードが72ポイントで続くことになった。

 WRCはこのあとヨーロッパへと戻り、2週間のインターバルのあとターマックでの新しいチャレンジのラリーウィークが幕を開ける。次戦の第4戦クロアチア・ラリーは4月18日〜21日に開催される。