2024年世界ラリー選手権(WRC)第11戦ラリー・チリ・ビオビオは9月29日に最終日を迎え、カッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1ハイブリッド)がシーズン4勝目を飾り、チームメイトのエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1ハイブリッド)が23.4秒差の2位でフィニッシュ、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームがシーズン5回目の1-2勝利を飾って選手権でも猛反撃をみせている。
ラリー・チリの日曜日は4SS/54.80kmの短い一日となる。最終日も前日同様にビオビオ川の南が舞台に、ララケッテ(18.62km)、ビオビオ(8.78km)の2ステージをノーサービスで2ループし、ビオビオの2回目の走行がパワーステージとして行われる。
雨と濃霧によって非常にトリッキーなコンディションとなった土曜日を終えて、ロヴァンペラがチームメイトのエヴァンスに15.1秒の差をつけてリード、トヨタは1-2態勢を築いて2日間を終えており、あくまでも暫定ではあるもののマニュファクチャラーズ選手権におけるヒョンデからの遅れを35ポイントから25ポイントへと縮めることに成功している。
チリでの3度目の勝利が期待されたオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1ハイブリッド)は土曜日の午後のタイヤ選択のミスからすでにトップから33.6秒遅れとなっている。優勝争いから完全に脱落した彼は最終日のスタート前、自身の2度目のワールドチャンピオンを追い求めることより、チームの選手権を最優先にする考えを表明していた。「ドライバーズタイトルに僕らはもう届きそうにないが、マニュファクチャラーズ選手権はトヨタがいい仕事をしたので、明日はできる限りのポイントを獲得しなくてはならない。ドライバーズ選手権は今は2番目のプライオリティだ」
トヨタが最終日も席巻してマニュファクチャラー選手権でさらなる挽回を果たすか、それともヒョンデがトヨタの猛攻をしのいでポイントを奪い返すことができるか。今季グラベルの最終ラウンドの最終日は、ヒョンデとトヨタのスーパーサンデーのポイント争いに注目が集まることになった。
濃霧に包まれた土曜日に続き、日曜日のオープニングステージであるSS13ララケッテ・ステージは深い霧のなかでスタート、雨は上がっているものの一晩中降り続いた雨によってコースはフルウェットとなっており、大量のマッドが路面を覆っている。
この最悪のコンディションのなかでベストタイムを奪って発進したのはセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1ハイブリッド)だ。土曜日にサスペンションを壊してリタイアした彼はすでにドライバーズ選手権のタイトルの可能性がほぼ失われたことを認めつつ、チームの選手権のためにスーパーサンデーのポイント獲得に全力を尽くすと語っていたが、ルースグラベルが雨でひきしまったことは一番手スタートの彼にとっては幸いだったかもしれない。「サンデーポイントが重要になるが、悪いコンディションではなかった。ここは視界の面ではそう問題ないが、次のステージは(霧のために)悪夢になりそうだ」
オジエはステージを走り終えたあと、ロードセクションでこのステージのスタートを待つロヴァンペラを見つけてマシンをストップ、コンディションをチームメイトたちに伝えていた。霧は彼が走って以降、ますます濃くなっていったが、ロヴァンペラは2番手タイムで首位をキープ、エヴァンスも3番手タイムで続くが二人の差は19.3秒まで広がっている。
3位のタナクもここでは5番手タイム。4位につけるヌーヴィルも6番手で続くが、彼はあまりのコンディションの悪さに、スーパーサンデーのポイントを積極的には狙いにいっていない。「視界がとても悪いが、当然コースをしっかりキープしていく必要がある。僕らは昨日のポイントを守ることが大事で、そして今日の分も獲りたいと思っている」
SS14ビオビオは、さらに深い霧がコース全域に立ちこめており、視界も非常に悪くなっていたが、ここでもオジエが連続してベストタイム、2番手タイムでロヴァンペラが続く。
ララケッテ・ステージの2回目の走行となるSS15は、朝よりも明るくなったとはいえ、森の中はまだ濃い霧が残っている。まるでウェールズ・ラリーGBのようなステージだとの声が聞かれたほどマディで非常にスリッパリーなコンディションだ。オジエが3連続でベストタイム、トヨタがスーパーサンデーでも1-2-3を維持しており、ヒョンデを突き放しつつある。
ロヴァンペラは首位を堅持、エヴァンスに19.5秒差をつけて優勝まであと1ステージに迫った。
そして迎えたパワーステージのビオビオ。ロヴァンペラはパワーステージの勝利は0.1秒差でオジエに譲ったものの、ラリー・フィンランドの最終日の悪夢を吹き飛ばすかのような素晴らしい勝利を飾ることになった。「最高の気分だよ。金曜日はあまりいい感じではなかったし、週末の間ずっとコンディションが厳しかったので、今は最高の気分だ。チーム、マシン、すべてが完璧に機能してくれたことに、心から感謝したい」
今週末は力強い走りを見せて土曜日の昼までラリーはエヴァンスのものだったようにも見えた。だが、土曜日の悪天候に今季初勝利を阻まれ、23.4秒差の2位でフィニッシュした。「残念だが、そういうこともある。コンディションは僕たちに有利に働いたし、公平に言えば、カッレは今週末、戦略面で素晴らしい選択をし、素晴らしいラリーを展開した。称賛に値するよ」
タナクはアグレッシブな走りでパワーステージを攻めたが、フロントスプリッターを壊してアンダーステアを出してしまい3番手タイム、それでも無事に3位でフィニッシュした。「今週末から良かった点を見出すことは難しい。僕の好きなタイプの路面だったが、この週末はそれを活かせなかった」
タナクから17.2秒差の4位にはヌーヴィルが続いている。「厳しい週末になることは分かっていた。今週末はパフォーマンスパッケージが足りず、トヨタと競えないことは誰の目にも明らかだった。今年はあと2つイベントが残っているので、それらを楽しみにしている。グラベルイベントが終わって嬉しいよ」
アドリアン・フールモー(フォード・プーマRally1ハイブリッド)は果敢にスーパーサンデーのポイントを狙いに行ったが、SS15の滑りやすくなった右コーナーでスピンを喫し、2度のリバースで20秒近くを失ったが、無事に5位でフィニッシュしている。
Rally1カーでの2戦目に臨んだサミ・パヤリ(トヨタGRヤリスRally1ハイブリッド)は、ラリー・フィンランドのようなセンセーショナルなパフォーマンスは見られなかったが、非常に難しいコンディションとなった未知のイベントで大きな問題もなく堅実な走りを続け、グレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマRally1ハイブリッド)を抑えきって6位で完走している。
金曜日のダブルパンクによってリタイアとなったマルティンシュ・セスクス(フォード・プーマRally1)は、土曜日には初のコースオープナーを経験、最終日もSS15のフライングフィニッシュのジャンプの着地でリヤウイングが完全に吹き飛ぶ試練のなか、無事にフィニッシュした。
8位という不本意なポジションで最終日を迎えたエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 N Rally1ハイブリッド)はスーパーサンデーでチームに貢献するためにペースを上げたが、SS15でまたもフロントバンパーをこの週末2度目となる破損に見舞われてしまい、ステージ後にリタイアとなった。
第11戦ラリー・チリを終え、ドライバーズ選手権ではヌーヴィルが192ポイントへとポイントを伸ばしたが、2位のタナクがその差を34ポイントから29ポイント差へと縮めることに成功している。オジエは土曜日までの絶望的な状況からスーパーサンデーとパワーステージを制して日曜日の最大ポイントを獲得して3位をキープしている。しかし、ヌーヴィルとの差は41ポイントへと広がり、4位のエヴァンスも46ポイント差となっている。
また、マニュファクチャラー選手権では、ヒョンデがリードを維持しているものの、トヨタがサタデーポイント、スーパーサンデー、そしてパワーステージのいずれも最大ポイントを奪い、35ポイントもあった差をわずか17ポイントへと大きく縮めることに成功している。
次戦は10月17日から20日にかけて行われるセントラル・ヨーロッパ・ラリー。シーズンはあと残すところ2戦だ!