世界ラリー選手権第6戦ラリー・デ・ポルトガルは、めまぐるしく順位が入れ替わった波乱のDAY1を終えてMスポーツ・ワールドラリーチームのオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)がリードする展開となっている。
木曜日夜に行われたロウサダ・スーパーSSで開幕したラリー・デ・ポルトガルは、金曜日にグラベルに舞台を移して本格的な戦いがスタートすることになった。
オープニングステージとなったSS2ビアナ・ド・カシュテロの路面には細かい砂状のルースグラベルがたまり、トップスタートのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)は早くも6.2秒差の7位へと順位を落とすことになった。だが、その一方で、木陰などのさらに路面が柔らかいセクションでは走行によって早くも轍が生まれつつあり、前夜のスーパーSSでトップタイムを奪って首位で金曜をスタートしたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は不安定な路面のコンディションに苦しみ12.8秒も遅れて12位まで後退することになった。
このステージを制したのはヒュンダイのヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)。2番手タイムを奪ったヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)に2.4秒差を付けて首位に立つことになった。だが、パッドンは続くSS3カミニャで突然、エンジンパワーを失ってストップ、エンジンをリセットすることになったため10秒近く遅れて6位まで後退することになった。このステージでベストタイムを奪ったラトバラがラリーリーダーに浮上、クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)が5秒差の2位で続くことになった。
だが、ラトバラはSS4ポンテ・デ・リマでペースノートの問題からペースを落とすことになり、このステージで同タイムでステージウィンを分け合ったタナク、ミーク、クレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)が一気に追い上げてきた。朝のループを終えて、ラトバラは首位を守ったものの、ミークが0.5秒差の2位、タナクも首位から1.2秒差、ブリーンも1.4秒差で続いており、上位4台がわずか1.4秒差にひしめく大混戦だ。
白熱したバトルは午後のループでもさらに激しさを加速させることになった。SS5ではミークがついにラトバラを捕らえ、その差はわずか0.2秒ながら新しいラリーリーダーとなったが、彼のリードは長く続かない。続くSS6ではタナクが首位に立ち、めまぐるしく順位が入れ替わることになる。
だが、路面が荒れたSS7ポンテ・デ・リマでは波乱が続出、最前線は大きく揺れ動くことになる。2位につけていたラトバラがまさかの横転、どうにかゴールを目指すものの、4分40秒あまりをロスして10位まで後退することになった。さらにSS6でタイヤを温存するためにペースを落としたミークもSS7でペースを上げて首位の奪還を狙ったものの、サスペンションを壊してマシンを止めることになってしまう。
タナクはSS6でサスペンションに問題を抱えたためにSS7でもペースを上げられなかったものの、ライバルたちが相次いでトラブルを抱えたためにどうにか首位をキープ。SS7を終えて3.6秒差の2位にはソルドが浮上することになったが、この日を締めくくるブラガ中心街に設けられた新しいストリートステージを終えてタナクは4.6秒差へとリードを広げてマトジニョスのサービスへと帰ってくることになった。
「前のステージでマシンにダメージを負っていたので、(SS7の)ポンテ・デ・リマではドライブが非常に難しくなってしまった。だが何とかステージを終えられたし、今日は本当に満足した一日だよ」とタナクは語った。
終日にわたって路面のルースグラベルの掃除に苦しんでタイムを伸ばせなかったオジエも上位陣の脱落に助けられてソルドからわずか0.4秒遅れの3位まで順位を上げてきた。
4位で金曜日を終えたのは朝のループでリヤのグリップに苦しんでペースが上がらなかったヌーヴィルだ。彼は午後のループでは速さを取り戻してSS6でトップタイム、SS7でもさらにペースアップしたものの、マシンにダメージを負ってスロー走行するラトバラの後ろで5km以上もスローダウンを強いられることになる。彼はせっかくの上位進出のチャンスを阻まれて23秒遅れの6位にとどまることになったが、この日のゴール後にスチュワードはSS7のタイムを11.8秒救済することを決定、彼は首位から11.1秒差の4位でこの日を終えることになった。
朝のループで大健闘をみせていたブリーンはSS7でダンパーを壊したものの、幸運にもわずか10秒をロスしただけでフィニッシュ、ミークから1.8秒差の5位でDAY1を終えている。
前戦アルゼンチンでわずか0.7秒差で勝利を逃したエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)はSS4のパンクで10位まで後退したものの、ここでも速さを見せることになり、2度の2番手タイムなどで6位まで順位を戻している。
7 位にはユホ・ハンニネン、8位にはエサペッカ・ラッピのトヨタ勢が並び、WRC2を圧倒的な速さでリードするアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアR5)が9位で続いている。
DMACKタイヤにスイッチしてポルトガルに臨んだマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタWRC)は木曜日のスーパーSSでヌーヴィルと首位をわけあってスタートしたものの、セッティングが完全でないマシンでペースが上がらず、SS5のパンクによる3分30秒あまりのロスが響いて10位にとどまっている。
また、オープニングSSでトップに立ったあと、エンジンがストップする問題で6位に後退したパッドンは、午後のループの最初のステージで2度目のベストタイムを奪うなどペースを取り戻して3位まで浮上したところで、SS7でふたたびエンジンがストップ、11分をロスすることになり、2度のベストタイムを奪いながらも失意の24位で金曜日を終えている。