Rally1カーのハイブリッドシステムは3つの走行モードをもち、そのうち「ステージモード」については最大で3つのマップを用意できることが今週ミュンヘンで開催されたIAA Mobilityのイベントで行われたWRC 2022のプレゼンテーションで明らかになった。
Rally1カーに搭載されるコンパクトダイナミクス社の高性能P3トポロジーハイブリッドシステムは、最大12,000rpmを誇るモーター・ジェネレーター・ユニット(MGU)、コントロール・ユニット、容量3.9kWhのバッテリーパックを総重量84kgというコンパクトなカーボンセルにまとめ、加速時には100kW(134馬力)のパワーと180Nmのトルクを発揮する。このハイブリッドシステムに搭載されるバッテリーは、コンパクトダイナミクス社のパートナーであるクライゼル・エレクトリック社から供給される。
Rally1カーの走行モードの1つはフル電動走行が可能な「フル電動モード」、これはロードセクションで基本的に使用されるものであり、最大で20kmの走行が可能となる。サービスパーク周辺やその他の市街地など、フル電動モードを使用しなければならない専用通路がロードブックに記載されることになる。
2つめはシステムのパワーをフルに発揮できる「ステージスタートモード」でハイブリッドシステムのフルパワーで1000キロジュールのエネルギーを放出し、ドライバーがスロットルを離したりブレーキを踏んだりするまでの約10秒間、エンジンのパワーをサポートする。
そして最後の1つはスペシャルステージのための「ステージモード」だ。チームとドライバーは最大3つの「マップ」を作成してハイブリッドパワーをどのように展開するかを決定できる。
「ステージモード」のマップは、ドライバーの入力(スロットル・ペダルとブレーキ)のみに基づいて作成され、これにより、ドライバーのスタイルや道路状況に合わせてエネルギーを放出する量のコントロールが可能になる。
また、スロットルを踏むことで放出されるパワーの量は、ステージの長さやバッテリーの充電状態(SOC)によって決まってくる。例えば、ステージが短く、バッテリーが満充電であれば、スロットルを踏むたびに放出される電力は長持ちする。ステージが長いと、スロットルを操作するたびに使えるエネルギーは少なくなる。
電力は、スロットルを離したときや、ブレーキからの回生によって回収できる。この電力は、有効な回生が行われた後、ドライバーが次にスロットルを押すと、マップの選択によって選択されたパラメーターに応じて利用できることになり、マップに従ってハイブリッド・パワーが復帰する。
ブレーキによる回生は、ドライバーがどれだけ強くブレーキをかけても30kWに制限され、加速時に得られるパワーは100kWなので、ステージの長さに応じてバッテリーが消耗していくことになる。
FIAのテクニカルディレクターを務めるクザビエ・メステラン・ピノンは、Rally1カーにはプッシュ・トゥ・パス方式のパワーボタンを設けないと語っている。つまりステアリングなどにパワーブーストのボタンが設けられることはなく、ドライバーが好みのときに最大のパワーを発揮させることはできないことになる。
「プッシュ・トゥ・パス方式にはならない」とピノンは語った。
「各ステージのスタート時に10秒間だけハイブリッド・パワーを作動させることができるので、最大のパワーを発揮することができるが、その後、さらにパワーを発揮するためには、ドライバーは途中で十分なパワーを回復させる必要がある」
フラグインのハイブリッドシステムは、必要に応じてサービスで外部電源で充電することもできる。専用ユニットを使うことで、20%から80%までの充電はおよそ20分で完了、満充電にはおよそ30分かかることも明らかになっている。
Mスポーツのチーム代表であるマルコム・ウィルソンは、ハイブリッド技術は各チームに多くの課題を与えており、来年は追加のパワーを巧みに管理できる賢いドライバーが恩恵を受けるだろうと語った。
「それらをすべて実行し、すべてのプログラムを遂行するためには、多大な努力、思考、設計、エンジニアリングが必要だ」
「我々が想像している以上に、たくさんのことがある。賢いドライバーがトップ争いをすることになるだろう」