スペインの最終日、オジエとタナクのバトルをヒヤヒヤしつつ見守ったのは私だけではないかもしれません。ヌーヴィルがリタイアして、MスポーツはWタイトルに王手を掛けた状況になったにもかかわらず、コンマ数秒のタイムで二人が競うのは、いくらなんでもマルコムも心臓に悪かったのでしょう、ついにチームオーダーが出されました。しかし、それはチームオーダーというにはあまりに人間的だったというか、タナクの気持ちにうまく寄り添った言葉と絶妙なタイミングでの指令でした。
ポルトガルでオジエとタナクが優勝を争って以来、マルコムはその可能性に言及しつつ、とうとうここでチームオーダーを出したわけですが、それはそれで波風も立たず、後に語り継がれるような衝突が起きなかったことを惜しんだファンの方もいるかもしれませんね。
過去スペインでチームオーダーが事件になったことは数々あります。パニッツィとデルクールもそうでしたし、1995年のスペインでは、マクレーがサインツを優勝させるというスバル・プロドライブのチームオーダーをぶっちぎってあわやそのまま優勝しちゃいそうな悶着を起こしたことがありましたね。勝ちたい気持ちを抑えきれなかった、いかにもマクレーらしい、忘れられないチームオーダー事件でした。
そういえば、サインツのこのときの勝利以来、スペイン人の母国戦での勝者は誕生していません。2009年のスペインで、ソルドはもうすこしのところで勝利を達成しそうでしたが、シトロエンのチームオーダーでそのチャンスは失われることになりました。
ソルドは初日からラリーをリードして、たしかに勝利に近づいたけれど、土曜日の最終ステージでスローダウンし、セバスチャン・ローブにトップを譲っています。しかし、チームはあのときオーダーの存在を認めず、ソルドが自分の意志でペースを落としたとしていました。
ローブもラリー後に語っています。「選手権では僕が優勝することがとても重要であるということが彼にはわかっていたので、自分自身の考えでバトルを止めたのだ」
ソルドは今日のニュースのなかで2009年のスペインについて「あの年に起きたことは今も忘れられない」と語っています。ある意味では彼の人生を変えてしまったとも言えるオーダーだけに、本当に悔しかったのでしょう。
ミケルセンのヒュンダイ加入や、ひょっとしたらオジエまでも! なんて噂が飛び交うなかで、ひょっとしたら今回が最後のチャンスかもしれない、なんて決意もあったのかもしれませんが、2位まで浮上してひょっとしたらと期待させたところでサスペンションとステアリングが壊れて立ち往生・・・。今回も彼の勝利をある意味阻んだのはミークのシトロエンだったし・・・なかなかシトエロンの呪いは解けないですが、来年こそ!