本日はレオーネの無線のお話を、長い前置きからはじめたいと思います。
かつてのサファリ・ラリーのことを思い出すと、どうしても遠い目になっちゃうのですが、超ハイスピードのセクション、ガレ場やマッドホールやでこぼこ道を5000km近くも走っていたのですからクルマが壊れないほうが不思議なわけで、いかにリタイアさせないようにクルマを直してゴールさせるかが勝負だった時代でした。
ワークスチームはどんなところでもすぐに飛んでいけるようにヘリを飛ばし、エアメカニックが工具と応急パーツをもってヘリから飛び降りて修理するなんて荒技をしていた時代です。
もちろんなにか起きたときのためにすぐにサポートできるよう、ラリーカー、チーム、サービス部隊との間の通信手段を確保することは不可欠でした。そして広大なサバンナで無線を中継するために、わざわざセスナを飛ばしたのです。つまり無線が付いてないサファリ・マシンなんてありえないのであります。
こちら1986年サファリ・ラリーで走ったポッサム・ボーンのレオーネ。ルーフには高く伸びたアンテナが見えます。
せっかくなのでなんとか1986年のサファリ・ラリーで使用されたものと同じ無線リグをレオーネにも車載したかったのですが、クルマの資料は見つかるのですが、無線機の写真などは見つからず・・・。
とりあえず、チームのスポンサーにケンウッドがついているので、1980年代前半に市販されていたケンウッドTM-211を手に入れてみました。
しかし、こちらの送信出力は11wと小さく、おそらくケニアでは出力を上げるためにバリバリに改造がされたものが使用されていたのだろうか、なんて想像していたところ、偶然にも当時の貴重な資料を発見しました。
それは『ラジオライフ』1986年10月号!
「盗聴器の全貌をあばく」という物騒な巻頭特集に加え、なんと「サファリ・ラリーで業務無線が大活躍!」というスペシャルな記事が。まさしく1986年に行われたサファリ・ラリーについての高岡祥郎監督のインタビューが掲載されていたのです。
しかも、無線の機種もケンウッドのTK-701Sだということが判明! ケンウッドの輸出モデルで出力50w、周波数は150-174MHzというパワフルな業務用スペックを誇り、ラリーカーが時速170km/hで移動しているときでも、高度3000フィートで飛ぶセスナのレピータを介せば、監督車のアルシオーネ号と300km以上離れていても無線で話すことができたそうです。300kmって言えば、東京から名古屋とか仙台ですよ!
アンテナは天井に穴を開けるのではなく、マグネット基盤をもつアンテン工業のAF-10をルーフに貼り付け、銀テープでケーブルごと貼り付けていたなんていう貴重な証言も! さらにはサバンナをハイスピードで移動するので、マイクはフックなどを使わずにマジックテープでバケットシートの脇にぺたりと固定していたなんてエピソードも紹介されています。さすが専門誌、すばらしい取材だっ!
さっそくこの無線機を手にいれようと思い、秋葉原に行ってみたのですが、もはやアキバでさえ中古無線機を扱っている店はほとんどないのだとか。ああ、かつての無線街もいまや昔なのでありました・・・。
そのなかでももっとも古くからがんばっている老舗の富士無線さんにTK-701Sの情報について聞いてみたところ、「この10年で、いやひょっとしたら20年で一度も見たことないですねえ・・・」とすげない返事。あとはアメリカしかないかな・・・というわけで世界的なオークションサイトのeBayで探す日々がはじまったのであります!
なかなかいいやつが見つからなくて、気が遠くなるくらい時間がかかりましたが、やっと本日、悲願のTK-701S がついに日本上陸です。さすがeBay! うれしいので箱もご紹介です。