やっぱりラリーが好きなのだっ!〜編集代表のラリーな日々ブログ〜

新世代WRカーはなぜ速くなかった?

メキシコのパワーステージ中継をライブで観ていて、うぉっ、やっぱりさすがに2017年スペックのWRカーは速いな! って思った瞬間、インカー画像が乱れてミークがコースアウト、背筋を痙りそうになってしまいました!
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そんな人は僕だけじゃなかったはず。しかし、個人的にはラリーウィークを通じて、タイムチャートからはあまり新世代WRカーの速さを感じなかったのが正直なところでした。

優勝したミークの平均速度は87.9km/h。あのオフがなければ、もう少し速かったのでしょうけど、実は昨年のラトバラの優勝したときの平均90.2km/hには届いていないのです。

もちろん初日、朝のループがキャンセルとなったため、クリーンな路面となる2回目のループではタイムアップするわけですから、ラリー全体から見れば平均速度が落ちているのも当然のことに思えます。しかし、かならずしもそれが原因で2017年マシンが昨年よりも遅かったのではないようにも思えます。

それでは各ステージのタイムをチェックしてみましょう。初日にキャンセルとなったラリー最長のエル・チョコラテと次のラス・ミナースの1回目のループの最速タイムを比較すると、いずれも2017年仕様がベラボウに速かったわけではないことがわかります。カッコ内はスタートのポジションです。

●エル・チョコラテ最速
2016年:ラトバラ=平均83.8km/h(8番手)
2017年:ミーク=平均83.9km/h(10番手)

●ラス・ミナース最速
2016年:ラトバラ=平均83.8km/h(8番手)
2017年:ヌーヴィル=平均83.1km/h(7番手)

もちろん今年は1回目の走行は午後だったため日中の気温は27度に達し、グリップが上がったぶん、ほとんどのクルマがオーバーヒートでエンジンパワーも落ちているでしょう。

それでは二日目はどうだったでしょうか。今年は昨年と異なる名前のステージがほとんどでしたが、オープニングSSのメディア・ルナは昨年のイバリッヤとほぼ同一のコースとなり、それに続くラハス・デ・オーロもスタートがアップヒルになりますが8割以上はオテーツのステージをなぞります。さらにエル・ブリンコはまったく同じコースになるので、その1回目の最速タイムを比較してみましょう。同じくカッコ内はスタートのポジションです。

●メディア・ルナ(イバリッヤ)1
2016年:ラトバラ=平均103.0km/h(7番手)
2017年:ソルド=平均96.6km/h(10番手)

●ラハス・デ・オーロ(オテーツ)1
2016年:ラトバラ=平均86.2km/h(7番手)
2017年:ソルド=平均81.2km/h(10番手)

●エル・ブリンコ1
2016年:ラトバラ=平均107.0km/h(7番手)
2017年:ヌーヴィル/ミーク=平均111.0km/h(9/12番手)

参考までに午後のクリーンになった2回目のステージの比較を。昨年のイバリッヤは1回のみの走行でしたので、2つのステージのみを紹介してみますと。

●ラハス・デ・オーロ(オテーツ)2
2016年:ラトバラ=平均87.3km/h(7番手)
2017年:ミーク=平均81.6km/h(12番手)

●エル・ブリンコ2
2016年:ラトバラ=平均108.5km/h(7番手)
2017年:タナク=平均112.7km/h(7番手)

こうしてみると、やはり2017年スペックのWRカーが決定的に速かったわけではないことがわかります。

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新世代WRカーが380馬力にパワーアップしたとはいえ、海抜2000メートル超えの地点では20%のパワーダウンになるため実質は300馬力そこそこ。しかし、空気の薄さは昨年も今年も同じなので、新しいWRカーのエンジンだけが遅くなったわけではありません。それより空気が薄い高地では巨大なダウンフォースを生むはずのエアロがあまり多くのグリップを生まなかったと言えるのかもしれません。

あるいはタイヤにも原因があるかもしれません。エアロの強化と電子制御センターデフの登場によってタイヤはさらなるストレスに晒されることになるため、ミシュランは2017年スペックへとアップデートされたソフトコンパウンドが「昨年と同等の負荷を掛けても摩耗率を20%抑えた」と豪語していますが、やや硬くなり、結果として縦横方向のトラクションが落ちているのかもしれません。

そして、なにより決定的だったのは、2017年は各マシンともオーバーヒートでエンジンのパワーが抑えられたこと。しかし、シトロエンはオーバーヒートしていましたっけ? ミークは一度だけ変な感じがしてエンストしたと言っていますが、ローレン・フレゴシはC3の冷却系はまったく問題なかったと述べています。

ミークのタイムを奪ったものがあるとすれば? この金曜日の9秒のエンストと最終日の20秒のコースオフと彼一人だけ4日間全ステージにわたってスペアタイヤを常に2本積んでいたこと!

それでも優勝しちゃうんだから、シトロエンは開幕2戦で思われていたほどダメなマシンじゃなかったということなのでしょうけど、要するにこれらから分かってくることは、本当は速いはずの新世代WRカーが、実はグラベルではまだ本来のポテンシャルを80%くらいしか発揮できてなかった、てことじゃないかな?


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