やっぱりラリーが好きなのだっ!〜編集代表のラリーな日々ブログ〜

さよならプロダクションカーの時代。

2017年から新しい技術規定によるWRカーが走り始めます。すでにご存じだとは思いますが、 FIAはこのコンパクトなベース車両に380馬力のパワーを与え、それによる安全性を高めることを目的として、ついにドア・アウターパネルの規定に変更を加えることにしました。このセグメントのマシンでは室内にクラッシャブルストラクチュアをこれ以上設けるスペースはなく、これまでよりはるかに速い速度でマシンが立ち木に激突したときの危険性を排除するために、やむをえず外観を変えることを許したのです。
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世界ラリー選手権が1973年に開催されるようになってから44年が過ぎました。その間、グループ4、グループB、グループAへとトップカテゴリーの車両規定は移り変わり、1997年からはグループAに分類されながらもWRカーによって争われる時代が到来したわけですが、これまでの歴史においてたった一つだけフロントのドアに関する基本的な技術規定だけは一度も変わらなかったように記憶しています。しかし、その規定もとうとう来年から変わるのです。

基本的には、世界ラリー選手権のラリーカーのドアについては、そのアウターパネルの材質と形状はベース車両と同じであることが技術規定で定められていました。1980年代のグループBのケブラー製のドアだって、200台のベース車両が樹脂でできたドアをもっていたわけですから、この規定に沿っていたわけです。どれほどのワイドボディとパワーを与えられようと、ドア形状には技術的には触ることができず、どのマシンも、そこだけはプロダクションカーだったのです。

1990年代にチームアストラのファクトリーでアバルトで製造されたグループAのランチア・デルタのドアを持たせてもらったことがありますが、ガラスにはメーカーの刻印も入っていながら、それは小指一本で軽々と持ち上がることに驚いたことがありました。市販車と同一とはいえ、実態は推して知るべしなのでしょう。それでも自動車メーカーもFIAもドア・アウターパネルの形状をかたくなに維持してきたのは、このラリーカーが市販車から生まれたものであるという思想を守ろうとしてきたように私には思えるのです。

昨年末に380馬力の新しい車両規定の骨子が固まった時から、僕はその規定に盛り込まれていなかったドア規定の変更をすべきと主張してきたので、この夏に新しいドア規定が固まったときには、心底胸をなで下ろしたと告白しなければなりません。しかし、こうやってセーフティを目的としてドアに厚みをもたせた新しいマシンを見ると、はたしてこれでよかったのだろうかという疑念がわき起こってくるのです。

大きなウィングとスポイラーで武装したマシンは、たしかに世界選手権のトップカテゴリーにふさわしい外観になったことを認めなくてはなりません。安全になったグループ Bマシンと言えるかもしれませんが、もはや市販車とまったく形の異なるドアになったクルマからは、あたりまえなのですが、ノーズのバッジ以外には市販車の面影をまったく見ることができなくなっています。

インプレッサやランサーエボリューションに熱くなった人たちなら、ラリーカーがどこから生まれたものなのか、きっとよくわかってくださると思います。ラリーカーが世界のどこの街角で見かけるプロダクションカーによって争われた時代は終わり、まるでシルエットフォーミュラのようなWRカーが走り始めます。

Mスポーツへのが移籍が決まったセバスチャン・オジエがスウェーデン・テストで始動し、トヨタ入りの会見から一夜明けて早くもヤリ-マティ・ラトバラがヤリスWRCのテストを始めています。新しい時代の幕明けです。抑えられないほどの興奮を感じつつも、熱かったプロダクションカーの時代の記憶を大切にポケットにしまっておきたいと思います。


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