プジョー2008 DKRが2輪駆動マシンだというニュースは、まるで一つの時代の終わりを告げたほどの衝撃でした。プジョーが砂漠のライオンと言われていた80年代後半もそのマシンは4輪駆動でしたし、その後の三菱パジェロにしてもそうだったように、4輪駆動こそがダカール・ラリーを象徴する技術と信じていたからです。
プジョーのジャン‐クリストフ・パイエによれば、南米のルートがハイスピードでテクニカルな特性をもつため、その攻略のためにあらゆるソリューションを秤にかけた結果、2輪駆動のほうがメリットが大きかったと説明しています。
それでは、2駆にどんなメリットが? 僕はあまりクロスカントリーのマシンのことを知らないので今のテクニカルレギュレーションを調べてみたところ、プジョーが2輪駆動を選んだ理由がすこし見えました。
いまのT1クラスを代表するMINI オール4レーシングのタイヤ外径は790mmですが、プジョー2008DKRはそれより大きな940mmという外径のタイヤを装着すると発表しています。これは車両規則で4WDのタイヤ径は810mmに制限されているにもかかわらず、2WDは940mmまでのタイヤが装着可能になるためです。
さらに、2WDマシンのみ、タイヤの内圧を走行中に調整できるシステムを搭載することが可能であるようです。4WDもマシンを止めていればこのシステムを作動させてもいいそうですが、ハンデはありますよね
ホイールトラベルも4WDは苦しいようです。2WDについては、1999〜2000年にダカールを制覇したシュレッサー・バギーのホイールトラベルはたしか1メートル近くあったと記憶してますが、サインツが今年ドライブしたSMGバギーでは450mmと発表されているように今は不文律で450mmに規制されているようです。しかし、これに対して4WDはわずか300mmしかホイールトラベルが許されていません。しかも、それはリジットのサスの場合で、マクファーソンストラットなど他のタイプにサスでは250mmに制限されてしまいます。
また、車幅についても4WDは2000mmに制限されているため、MINI オール4レーシングの車幅は1998mmと発表されています。プジョー2008DKRはかなりコンパクトに見えますが、車幅は2200mmまで許されることになります。
車重も3リッターマシンで比較すると、4WD=1675kg/2WD=1100kgとこれまた500kg以上も2WDのほうが軽く作ることができるわけです・・・。
僕は最初、2008 DKRのベースモデルとなっている市販の都市型クロスオーバー2008が前輪駆動であるゆえにマーケティング的に4輪駆動を選べなかったのかなーと想像していたのですが、このような規則ではプジョーでなくとも2駆を選びたくなりますよねえ。