ミシェル・ナンダンが、「ヒュンダイがトップより1kmあたり0.1〜0.4秒遅い」という分析をしているという昨日のニュースについて、「どういうことなのかな?」と疑問に思われた方に、今日は、ラリーにおける速さの捉え方をすこしフォローしたいと思います。
たとえばポルトガルの13.83kmの最終ステージで、オジエはラトバラに3.3秒差をつけてこのパワーステージを制してます。このとき、二人の差は1kmあたり0.24秒差ずつ広がっている計算です。しかし、ほんの「わずかな差」と思われるそのペースで3日間300kmを超えるラリー全体を走るとどうでしょう。その差はなんと72秒という、とんでもない遅れになると計算できるのです。
実際のところ1km走って0.1秒遅れなら、「そこそこ」どころか「かなり」速いペースと言えるでしょう。これなら300kmのラリーでトップから30秒遅れですし、表彰台が戦略的にも狙える立派なスピードです(そこまでヒュンダイが迫ってきたのか〜)。しかし、優勝するためには、1kmで0.1秒遅れでは、決定的に遅いのです。
そもそも「速さ」というのは比較するものが何もなければとても曖昧なものです。したがって、ラリー関係者の多くはステージのタイムそのものではなく、「1kmあたり何秒」という尺度で速さを捉え、「ライバルに1kmあたり何秒遅れているか」「1kmを何秒で走れば追いつけるか」「1kmを何秒で走ればタイヤに優しいか」というような表現をしています。
これは昨年のアクロポリス・ラリーで初日、タイヤが取れてしまうトラブルで3分30秒遅れの9位となったオストベルグが翌日、どのようなペースで順位を上げるのかという戦略の計算書です。そして、そのペースの計算のもとになるのが、「1kmあたり何秒」という尺度なのです。
もっともマッズ・パパが作成したこのプランは、何度計算してもそのペース配分のロジックがわからなかったので、路面やいろいろな条件をくわえているのだと思われます。
さて、ヒュンダイにとって、まだまだ致命的な「1kmで0.1秒の遅れ」なのですが、あるコーナーでこの速さの違いを視覚的に捉えることはほとんど困難と言われております。
1km走って0.1秒の差なら、ある1つのコーナーではタイヤ一個程度しかその差はつかないかもしれません。しかし、人間の目は、ときに明らかにオジエがノリノリでスーパー速くて、ヌービルがなんか押さえている走りを見抜くときがあるんで、とても不思議なものですよね。
ところで、いいタイミングでヒュンダイの新エンジンのテストの噂が出ていますが、このテストカーが「明らかに速かったように見えた」との目撃情報があります。ゲゲッ、ひょっとしたらVWとの「1kmで0.1秒の遅れ」なんて、もうひっくり返しちゃった??