最終ステージのゴール後、「ここまで長かった」と語って涙を抑えきれなくなったブリーン。
2012年のタルガフローリオで発生した事故をご存じのかたは、この涙の意味も、この言葉の意味もよくおわかりかと思います。
わずか10秒あまりの差にブリーン、タナク、ヌーヴィル、パッドンがひしめき、ブリーンが最終日に逃げ切る可能性は低いように僕は感じてました。かつてはほぼ同時代のライバルたちとはいえ、彼らはブリーンが暗黒の時代を過ごしているうちにレベルの違う世界を経験してきています。走行条件が味方した二日目のリードはともかく、最終日はスクラッチの同一条件です。それだけに、最終日のレンパーでブリーンが叩き出したベストタイムは本当に震えがくるほどの衝撃でした。
WRCアカデミーの時代のあの輝くような笑顔をもった少年はもうここにはいません。さまざまな苦悩のなか、彼はすでに大人の顔に変わっていました。
ブリーン、タナク、ヌーヴィル、パッドン、さらにはミケルセンも。ともに長短ありますがそれぞれにいいようがないほどの苦悩の時代を経験してきました。ほんの5〜6年前、ペーペーの若者だった彼らが、新しい時代をつくろうとしています。世界ラリー選手権にすばらしい時代がはじまっているように思いました。